第61話 何故か怯えるエレンさん
「ん……おはよー」
「おはよう、セシリア」
「ヴォーロス、マヘス君は?」
「うん。良く眠っているよ。きっと楽しかったんだろうねー」
昨日の夜に、突然マヘス君が一人でやって来た。
こんなに小さな子が、夜に一人というのは危ないから、これからはバステトさんと一緒に来てね……と、注意しておいたんだけど、問題はその後なのよね。
エレンさんは猫が苦手なのか、マヘス君の事を物凄く怖がって逃げるから、それをマヘス君が遊んでくれていると思って追いかけて……どちらも電池が切れたみたいに、倒れるようにして眠りについた。
「じゃあ、私は今のうちに朝ごはんを作ってくるわね」
「僕も手伝うよー」
ヴォーロスと一緒に外へ出ると、セマルグルさんに呼ばれる。
「セシリア。結界を解除してやってくれぬだろうか」
「ん? 良いけど、何かあったの?」
「いや、そこに……バステトが中に入れず、泣きそうになっておるからな」
言われて見てみると、セマルグルさんの視線の先で、バステトさんが結界で爪を研ぐようにガリガリと……あ、マヘス君が心配なのね。
急いで結界を解くと、バステトさんが一目散に家へ入り、
「マヘスー! ……って、新しい女性が居るのじゃっ! しかも抱き合うようにしてじゃとっ!? くっ……もう、結婚してしまうのか!? は、早いのじゃっ!」
中から叫び声が聞こえて来た。
抱き合うように……って、マヘス君は猫の姿のまま眠っていたんだけど。
まぁそれはそれとして、朝ごはんの準備ね。
パンをスライスして、マヨネーズでパンの上に枠を作ったら、その中へ卵を落とす。
あとはオーブンで熱して……簡単エッグトーストの出来上がりっ!
「朝ごはんが出来たけど……聞こえてます?」
昨日の再現というか、目覚めたエレンさんが逃げて、マヘス君が追いかけ、バステトさんが泣きそうな表情でオロオロしている。
どうしたものかと思っていたら、
「セシリアが呼んでいるであろうっ! 早く来ぬかっ!」
「ひゃいっ!」
「ごめんなさーい」
セマルグルさんが一喝して、エレンさんもマヘス君もピタッと止まる。
うーん。私との違いは、声の大きさ? 言い方? それとも威厳? 難しいなーと思いながら、皆で朝ごはんに。
「おねぇちゃん! おいしーっ!」
「うむ。そうなのじゃ。やはりセシリアのご飯は美味しいのじゃ。我もこの料理をマスターすれば……」
「確かに美味しい……ま、まって! 聖女様っ! これは、まさかマヨネーズ!? ど、どうしてマヨネーズばかり……ミソはダメなのですかっ!?」
マヘス君とバステトさんと一緒に美味しいと言ってくれていたエレンさんが、突然表情を硬らせる。
けど、その瞬間にヴォーロスとバステトさんが立ち上がり、
「な、何でもないですー。その、ちょーっと、ミソの事も考えてくれると嬉しいなー、なんて……」
突然エレンさんが小声になってしまった。
どうしたんだろ? 突然、二人が立ち上がったから、ビックリしちゃったのかな?
しかし、お味噌はむしろ私が使いたいくらいなんだよね。
ご飯と味噌汁と卵焼きにお漬物の朝ごはん……最高じゃない!
まぁその肝心のお米が無いんだけどさ。
「エレンさん、心配しないで。ちゃーんとお味噌を使った料理を考えてあるから」
「そ、そうなのですかっ!?」
「えぇ、もちろん。という訳で、今日のお昼ご飯はおミソづくしでーす!」
「あ、ありがとうございますっ! あ、あと、出来ればお二方は、警戒を解いていただけると……本当に、もう熱くなりませんから」
エレンさんが目に涙を浮かべる程、嬉しそうに……けど、怯えても居る?
よく分からないけど、とりあえず味噌料理を沢山作ろーっと!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます