第36話 時間が掛かりそうなので、一旦戻って一休み

『な、何だと!? ここまで来ておいて、行き止まりだと!?』


 私たちがお昼ご飯を済ませた頃に、再び王子たちが進み始めたんだけど、ヴォーロスたちの言う通り、洞窟は地上まで続いておらず、行き止まりだったみたい。

 とりあえず、これで上陸を諦めてくれるかなと思ったんだけど、


『お前たち! 掘れ! この洞窟は緩やかに上向きになっていた。このまま引き返すよりも、上に出た方が絶対に早い! 行けっ!』

『スコップがない? そんなもの、剣の鞘でも盾でも幾らでも代用が効くだろうが! とにかく斜め上に向かって掘り進めろ!』

『つべこべ言うなっ! 俺様は第二王子だぞ!? 掘れと言ったら掘れ!』


 洞窟を自分たちで掘り進むという、予想外の行動に出てきた。


「……地上までかなり距離があるけど、大丈夫なのかな?」

「さぁ。僕なら、そんな無謀な事はしないかな」

「それだけセシリアに執心という事なのだろう。だが安心するが良い。何処から出てこようとも、我とヴォーロスが守ってみせよう」


 ヴォーロスとセマルグルさんから、改めて守ると言ってもらいつつ、暫く監視を続けていたけど……うん。やっぱり、地上まで距離があるし、かなり時間がかかりそうね。

 一先ず、よく目立つ楓の木を生やすと、


「とりあえず目印を立てたから、一旦帰りましょうか。まだまだ時間がかかりそうだし、いろんな作業と夕食の準備もあるしね」

「だねー。あ、じゃあ僕と一緒に帰ろうか」

「そうだな。我も南の方まで来た事だし、何か海の生き物でも捕らえて来よう」


 一度家へ帰る事に。

 前から作っていた物の続きを頑張り、ヴォーロスに協力してもらって色々と実験していると、


「戻ったぞ。セシリア。今日はこんなものを獲って来たんだが」

「うわ、凄いねっ! とりあえず焼いてみると良いのかな?」

「ヘル・ロブスターというエビの一種で、食べた事はないが、毒などはないはずだ。」


 セマルグルさんが物凄く大きなロブスターっぽいエビ? を運んで来た。

 これを使って何が作れるかなって少し考え……


「決めたっ! じゃあ、まず最初にこれを半分に……ヴォーロス、お願い」

「いいよー。こんな感じかな?」


 ヴォーロスにお礼を言って、半分に切ってもらったエビの身を取り出すと、軽く塩で下味を付ける。

 タマネギとを炒めて、牛乳を入れたら、小麦粉をふるいにかけながら、しっかり混ぜ合わせてホワイトソースに。

 下茹でしておいたブロッコリーやポテトにニンジンなんかを、エビの身と混ぜて殻に戻したら、パンを削って作ったパン粉をまぶしてオーブンへ。


「……という訳で、セマルグルさんが取ってきてくれた大きなエビを使って、グラタンを作ってみましたー! あ、冷ましてあるけど、少し熱いから気を付けてね」

「ほほぅ。あのヘル・ロブスターがこのような料理になるのか。うむ、旨いぞ!」

「この白いソースが美味しいね! 流石、セシリアだよ」


 大味かなと思っていたけど、意外に繊細な味で凄く美味しかった。

 海の幸は捌くのに抵抗が無いし、良いかも。

 前にヴォーロスが獲ってくれたお魚が獣人さんたちの村で人気だったし、今作っているアレが完成した暁には、魚介類と何かを交換してもらいに行くのも良いかもね。

 まぁその時には、またヴォーロスやセマルグルさんのお世話になるんだけどさ。

 そんな事を考えながら、夕食の後片づけなどを済ませ、いつものように就寝する事にした。

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