第35話 地下洞窟に入ったルーファス王子たちの見張り

「ど、どうしよう! 私の狙いは、王子たちが上陸できずにそのまま帰ってもらう事だったんだけど、このままだと上陸されちゃう!」

「ふむ……だが、大丈夫ではないか? 地下の洞窟であろう? そのような洞窟が、地上に繋がっているという話は聞いた事がないぞ?」

「僕も聞いた事がないから、心配しなくても大丈夫じゃないかな?」


 ルーファス王子たちが謎の洞窟へ入り、私たちが全く意識していない変な所から上陸してくるのを恐れたんだけど、セマルグルさんもヴォーロスも大丈夫だという。

 んー、私の気にし過ぎなのかもしれないけど、せめて王子たちの動向が分かると良いんだけど。

 ……具現化魔法で何か作ってみる?

 あ! 具現化魔法で物凄く小型のドローンを……って、流石にバッテリーなんかは作れないから、無理ね。

 それに、モーターは何とか作れたけど、カメラの類は作れる気がしないし。


「そうだ! こういう時こそ、魔法の力よね!」


 何と言っても、セシリアは土の聖女だもん。

 土に関する事なら大抵の事が出来る訳で……記憶を辿ると、今みたいな状況にピッタリの魔法を見つけた。

 本来は土の中に、どういった鉱物があるのかを調べる魔法なんだけど、地下の様子が手に取るように分かる。


『おい! 魔物が出たぞっ! お前たち! 王子である俺様を守るのだっ!』

『うげっ! 何だ、この巨大なスライムはっ!? さ、酸だ! 酸を飛ばしてきたぞっ! あぁぁぁ、俺様の服に穴がっ!』

『ま、まだ地上に出られないのか!? クソッ! どうして、俺様がこんなモグラのように、土の中の真っ暗な洞窟を進まなければならないのだっ!』


 凄いわね。

 どういう仕組みなのかは分からないけれど、声がしっかり聞こえて、白黒だけど映像で様子まで見える。

 とはいえ、今回は凄く良い使い方が出来ているけれど、普通はこんな風に使う事はないだろうけどね。

 ルーファス王子たちが居るのは、かなり長い洞窟のようで、ずっと東に向かっている。

 だけど相当疲労しているらしく、少し広い空間で倒れる様にして休憩を始めたので、私たちも少し早めのお昼ご飯とする事にした。


「む? セシリア。ここで食事を作るのか?」

「うん。家とは違って、小麦粉や卵が無いから、ちょっと簡単なメニューになっちゃうけどね」


 具現化魔法で調理台と調理器具に、食器類を生み出すと、今回のメインとなるアボカドを生やして収穫する。


「ほぉ。見た事のない木の実だな」

「アボカドっていうんだけど、森のバターって呼ばれるくらいにクリーミーなのよ。いろんな食材に合うから、また家に戻った時にいろいろ作るね」

「へぇー、それは楽しみだね」


 セマルグルさんもヴォーロスも、アボカドは昨日食べているんだけど、見るのは初めてらしく、興味津々みたい。

 まじまじと見られながらも、熟したアボカドの種に沿って包丁を一周させると、手で捻って簡単に半分に分かれ、皮もスルッと剥けるので、その身をスライスする。

 お次はトマトやブロッコリーを生やして一口大にカットしたら、ボールでアボカドと混ぜて……アボカドサラダの出来上がりっ!

 ここに茹で卵やマヨネーズなんかが欲しかったけど、それは家に戻った時かな。

 後は、リンゴにブドウ、モモやマンゴーなんかのフルーツ盛り合わせ。

 パンやお肉はないけれど、これはこれで……うん。悪く無いよねっ!


「うむ。切って混ぜただけなのに、旨いではないか」

「このアボカドっていうのが不思議だねー。木の実なのに、木の実じゃないみたいだよ」


 ジャトランへ来た直後は、食事がリンゴだけ……なんて事もあったけど、いろいろ便利に魔法が使いこなせるようになったなーって、しみじみ思いながら、私たちもルーファス王子たちが動き出すまで小休憩する事にした。

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