第33話 防御魔法が得意な土魔法

「出来たー! ねぇ、ヴォーロス。こんな感じでどうかな?」

「……えーっと、何だか凄い事になっているんだけど、どういう状態なの?」

「我は良いと思うぞ。外側から見ると、よく分かる。……まぁ空を飛ばぬと、外側が見えぬがな」


 昨日帰って行った男性たちが、ルーファス王子の手の者かもしれない……という事で、ヴォーロスとセマルグルさんが私を守ってくれると言ってくれた。

 だけど、そもそもこの辺りを大勢で攻めて来たりされても困るので、そもそも上陸出来ないように、いろいろと作っている最中だったりする。

 で、その第一弾という事で、西の海岸に一つ目の防御壁を作ってみた。


「えっとね、ネズミ返しっていうのかな? 登ろうとしても登れない鉄の壁を作ってみたんだー。イメージはこんな感じ」

「あー、絵に描いてくれて、ようやく分かったよ。なるほどね」

「ただ、あんまりやり過ぎると、日影になって近くの植物が育たなくなっちゃうから、めちゃくちゃ高くはしていないけどね。これを、私が最初に来た西側と、この前の男性たちが来たと思われる南側に作ろうと思うの」


 ちなみに川は鉄格子にしておいたから、ここが突破されるかもしれないけど、その時はその時で、ちゃんと次の考えがあるからね。


「ふむ。北側は元より断崖絶壁だからな。あちらは何もしなくても良いだろう」

「けど、東側はー? 向こうは遠くまで陸が伸びてるよー」

「んー、あっちは、そんなに行った事が無いし、生き物の生態とかが分からないから、勝手に壁とかを作らない方が良いと思うのよね。鬼人族さんたちみたいに住んで居る人だっているだろうから、行き来出来なくなったら困るだろうし。でも、東側は違う手を考えているから大丈夫だよー」


 とはいえ、東側には行けないんじゃないかなー?

 北側みたいに、南側も徐々に切り立っていって、崖に変わるからね。

 流石に登れないでしょ……っていう所までは、鉄の壁を作るつもりだし。

 という訳で、今日は一日ひたすら壁作り。

 特に力を入れたのは、やっぱり川の所かな。

 水を堰止める訳にも行かないし、水を止めずに王子たちを止めるような仕組みを作って……一先ず今日の作業を終える事に。


「お待たせー! 今日は野菜たっぷりのシチューだよー!」

「ほほぅ。白いスープ……なのか? 珍しいな」

「まぁスープといえばスープなのかな? ヴォーロスが獲ってくれたお魚とか、ニンジンやジャガイモなんかの根菜がたっぷりだから、食べ応えがあるわよ」


 ヴォーロスとセマルグルさんの器に、シチューを入れ、それと手作りパンも一緒に置いておく。

 シチューの良い所は、何と言っても作るのが簡単で、作り置き出来るとこよね。

 作業の合間に作っておいて、温め直すだけで食べられるもん。

 という訳で、皆で美味しくいただいて……次は久々にカレーや肉じゃがが食べたくなっちゃったけど、食材は殆どあるのに調味料がね。

 カレールーに入っていそうなスパイスやハーブなんかは生やせられると思うんだけど、それをどう混ぜたらカレーになるか分からないのと、肉じゃがは肉じゃがで、みりんや醤油の作り方が分からないのよね。

 いつかお米も作ってみたいなーと思いつつ、いつものようにヴォーロスと一緒に就寝すると、


「セシリア。遠くに大きな船が見えるぞ。あれは、この前の船か?」


 翌朝にセマルグルさんの声で起こされ……悪い予感が的中してしまったのか、再び船が向かって来てしまった。

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