第29話 ハサミの制作?

 お風呂を完成させた翌日。

 今日は、シロの羊毛を刈り取る為の、手動のバリカン? を作れないかと頑張っていた。

 というのも、今はまだ大丈夫だと思うけど、羊は毛を刈ってあげないと健康上宜しくないという話を、テレビか何かで見たなーっていうのを思い出したから。

 正直、作るのならハサミの方が簡単なのかもしれないけど、シロの毛をハサミで切るのはちょっと怖い。

 万が一にも、皮膚を傷付けたりしたら可哀想だしね。

 私が使う土魔法は、防御魔法や作物の育成は出来るけど、怪我を治したりとかは出来ないからね。


「あ……でも、シロのとは別にハサミは必要かも」


 今まで、作物を収穫する時、柔らかい物なら手でもいで、硬い物はナイフで切っていたけど、よく考えたらハサミを使えば収穫が楽よね。

 ……まぁ硬かったり重かったりする物は、何も言わなくてもヴォーロスがやってくれるんだけどね。

 今日のお昼も、大きなカボチャをヴォーロスが運んでくれたから、ポタージュスープにしていただいて……うん。あのサイズのカボチャは、ハサミでは無理ね。

 あと、そのうち髪の毛を切るのにハサミを使うかな。

 別にオシャレする訳じゃないんだけど、前髪が伸びてきたら切りそろえないといけないだろうし、ここにはシャンプーやトリートメントが無いから枝毛とかが……無いわね。

 セシリアの髪の毛はキューティクルが凄いっていうか、物凄く綺麗で、枝毛の一つもない。

 ほんと羨ましい……って、今は私がそのセシリアなんだけどさ。

 そんな事を考えながら、作るならバリカンよりハサミの方が簡単かも! と、刃の部分で試行錯誤していると、


「セシリア。流石に、その刃は危なくないかな? 多分、岩でも斬れるよ?」

「またまたー。こんなに小さな刃だよー? いくらなんでも、そんな事出来る訳ないじゃない」


 ヴォーロスが顔をしかめながら、やって来た。

 ほんと、セマルグルさんもヴォーロスも心配性なんだから。

 子供じゃないんだから、ハサミくらい……まぁ今は二本のナイフになっているけど、怪我とかしないってば。

 そんな事を思っていたら、作業台からポロっとハサミの試作品が落ちる。

 あ……っと思った時には地面に突き刺さり、柄の部分まで地面に刺さってしまった。


「えーっと……あれ? 切れ味が異様に良過ぎるわね」

「そりゃあ、そうだよ。セシリアが物凄く魔力を注ぎこんでいるもん。それ、使う人が使えば、並の魔剣とかにも勝つからね?」

「いやいや、魔剣って。流石に、このハサミで剣には……でも、遠くから投げたら勝てちゃうかな? 物凄く危ないからやらないけど」


 こういうファンタジーな世界だからか、セシリアは修行の旅に出ていた事もあって、身体は丈夫だし、運動神経も悪く無い。

 だけど、今は日本の家電販売員の私だから、運動神経は並の下って感じかな。

 ボールだって、投げてもどこへ飛んで行くか分からないから、間違ってもこのハサミを投げたりはしない。

 とりあえず、この切れすぎるハサミはボツにして、もう少し切れ味を抑えたハサミを作ろうと考えていると、


「……うぎゃぁぁぁーっ!」


 遠くで男の人の悲鳴が聞こえた気がした。


「ヴォーロス。今、誰かの声が聞こえた無かった? 向こうの方から」

「んー、聞こえたような気もするけど……よく分からないよ」

「セマルグルさんはどう?」


 美味しそうにブドウを食べていたセマルグルさんに聞いてみると、首を傾げ……


「あ、そういえば昨日、船を見た気がするな。もしかしたら他所者が上陸したのかもしれぬな」


 って、じゃあ今の悲鳴は、その人の声!?

 助けてあげなきゃ!

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