挿話6 裏メニューに挑む第二王子ルーファス
「……わかったな!? 二度と、そのような恥を晒すな! 愚か者めっ!」
くっ。初めての酒場で酒に酔ってしまい、金を盗られ、店員から代金の代わりにとあらゆる物を剥ぎ取られ……その結果、俺が身に着けていた物から、王族だという事が証明された。
その為、俺の服や愛剣が戻って来たのだが……当然、酒の代金が王宮に請求された訳で。
その事で、兄である第一王子から、くどくどくどくど……と、延々小言を言われてしまった。
「まったく、アイツは暇なのか!? こんなにも時間を無駄にさせやがって!」
とりあえず、父にはセシリアを見つけるまで帰って来るなと言われたが、資金がなくなって王宮へ戻って来てた訳だし、開き直って自室で夜まで過ごすくらい良いだろう。
安い酒を飲み過ぎたからか、身体の調子も悪いし、暫くベッドで休んでいると……いつの間にか眠ってしまっていた。
目を覚ました時には、陽が傾き、窓から見える景色が茜色に染まっていたので、丁度良い頃合いだと、外へ。
「昨日は、あの酒場だったから、今日はこっちにしてみるか」
「いらっしゃいませー! 空いているお席へどうぞー!」
例の短剣使いを探すのと夕食を兼ねようと思ったのだが、まさか席へ案内されず、空いている所へ勝手に座れなどと言われるとは。
昨日の酒場は、店員の格好こそ、何故かウサギだったが、接客はまだ普通だったのかもしれないな。
まぁいい。とりあえず、先ずは食事だ。
腹が減っているし……って、どうして誰も注文を聞きに来ないのだっ!
「おいっ! そこの女っ!」
「はーい! あ、ご注文ですかー?」
「そうだ! ここで一番高くて旨い食事を持って来い」
「畏まりましたー! 店長ー! ポイズンリザードのステーキをお願いしまーす!」
「待てぇぇぇいっ!」
いやいやいや、ポイズンリザード……って、思いっきり魔物だろうが!
そんな物、食べられる訳が無いし、食べたいとも思わんっ!
「あの、何か?」
「俺は、一番高くて旨い物を持って来いと言ったのだ。それなのに、さっきの料理は何だ!?」
「え? 巷では美味しいと評判らしいですよ? メニュー表に載せていない、知る人ぞ知る裏メニューなんです」
「いや、ポイズンリザードって、思いっきり魔物だし、おまけに毒がありそうではないか!」
「大丈夫です。漬け合わせが毒消草のサラダですので……まぁ実は、お値段が高いのはポイズンリザードではなくて毒消草の方なんですけど、味は美味しいそうですよ?」
いや、全然ダメだろ!
というか、毒消草って高いのか? そんなもの騎士団の倉庫へ行けば、腐る程あると思うのだが。
「先程から、『らしい』と言っているが、お前は食べた事が無いのか?」
「まぁ私の事は良いじゃないですか。それより、ポイズンリザードのステーキが出来上がったみたいなので、お持ちしますね」
「おい、待てっ! だから俺様は、そんなゲテモノは……逃げるなぁぁぁっ!」
一瞬、このまま店を出てやろうかとも思ったが、また食い逃げ呼ばわりされるのは嫌……というか、兄の小言が鬱陶しいので、とりあえず待っていると、
「おっ! 兄ちゃんかい? ウチの裏メニューのポイズンリザードステーキを注文してくれたのは! さぁ食ってくれ! 旨いぞ! ただ、付け合わせのサラダを食べ忘れないようにな!」
いかついオッサンが無駄にデカいステーキとサラダを運んで来た。
「あと、こいつは俺からのサービスだ! そのステーキによく合うぜ! じゃあ、ごゆっくり!」
サービスと言いながら、ただの水じゃないか。
とりあえず、見た目は普通に見えるステーキを一口食べ、
「お? 思ったより旨いじゃないか。あと、この水が合うって言っていたが……おぉぉぉっ! の、喉が焼けるっ! こ、この水は何なんだぁぁぁっ!」
毒ではなく、少しだけ飲んだサービスの水で、苦しむ事になってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます