第21話 デュークさんちのお昼ご飯
「す、凄いっ! 収穫の時期ではないというのに、小麦が一気に育って……しかも、例年の収穫時よりも遥かに収穫量が多いっ!」
「こ、こっちはコーンが凄い事になっています!」
鬼人族さんたちの村の畑を見て、大きな穀物の畑が沢山あったので、麦とコーンだけをすぐに収穫出来るようになるまで、土魔法を使って育ててあげた。
「とりあえず、この村で作っていた穀物を育てたわ。当面はこれで足りると思うの。で、獣人の村から南の方へ行った所に私の家があるから、収穫が終わって次の種撒きが終わったら呼びに来て。元の状態まで育てるから」
「あ、ありがとうございますっ! 聖女様っ!」
「二つ、約束して。一つは二度と獣人さんたちの村の人たちに迷惑を掛けない事。もう一つは、あくまでこれは村の人たちを助ける為にした事だから、この穀物を他の村へ売ったりとか、お金儲けに使わないで」
「分かりましたっ! 本当にありがとうございます!」
はぁ……デュークさんは約束を守ってくれそうだけど、問題は他の人よね。
事情を知らない人からすれば、麦やコーンが急に育ったように見えちゃうだろうし。
「この村って、獣人さんたちの村よりも大きいように思えるんだけど、どうやって私との約束を村の人たちに伝えるの?」
「ご安心ください。村の食糧問題について、村の者が集まり、毎週話し合いをしております。今日の夕方に、その集まりがありますので、そこで皆によく言い聞かせますので」
「まぁそういう事なら……じゃあ、私は帰るわね」
「お、お待ち下さい! 村を救っていただいた聖女様にそのまま帰っていただく訳には参りません! な、何かお礼の品を……」
「別に要らないわよ。見返りを求めてした訳ではないし、それにこっちは魔法を使っただけで、大した労力でもないし」
「いえ、かなり大きな魔力が動いておりましたよ!? それに、そもそも普通はそんな凄い魔法を使う事が出来る者など、居りませんから」
暫く、帰ると言う私と、お礼がしたいと言うデュークのやり取りが続いた後、
「では、丁度お昼時ですし、せめてお食事だけでも! あれだけの食糧を生み出していただいたのです。聖女様お一人分くらいのお食事で、食糧が逼迫するような事はありませんし」
「まぁ……それくらいなら」
「ありがとうございます! では、どうぞ我が家へ」
私が折れたのと、朝ごはんを食べて居ない事を思い出して、デュークさんの家に行く事に。
村の中で、少し大きめのデュークさんの家に招かれると、奥様と幼い息子さんに出迎えられる。
そこからデュークさんが、私が聖女で村の食糧問題を解決したという話をして、奥様が大急ぎで奥へと姿を消す。
うぅ……いきなり訪れてしまって、ごめんなさい。
見ず知らずの私と一緒に昼食を……って突然言われても困るわよね。
やっぱり断るべきだったと思いながらも、今更どうしようもないので、席に着く。
暫くしていると、
「おねーちゃーん! あそんでー!」
リリィちゃんより大きな……幼稚園児くらいかな? 息子くんが近寄って来た。
料理が出来るまで時間もあるし、遊ぶのは良いんだけど……男の子って何して遊ぶの?
「いいわよ。何して遊ぶ?」
「んー、まおーごっこー!」
えーっと、魔王ごっこって事かな?
残念ながら、これは私には参加出来ないわね。
魔王って言われても分からないし。
「こら、ダメだぞ。聖女様に魔王ごっこだなんて。それなら、守り神様ごっこにしておきなさい」
「えー。だって、まもりがみさまって、おとーさんたちの、おはなしでしか、しらないもん!」
「魔王だって見た事ないだろ?」
「そうだけどー、おとなりのおにーちゃんは、まおーさまのぶかだったんだー! って、いってるもん」
「いや、お隣さんの息子さんは、まだ八歳だろ。というか、魔王なんてお父さんだって知らないからな?」
その、魔王っていうのはさておき、デュークさんと息子くんのほのぼのとしたやりとりに癒され、奥様の美味しい料理をしっかりごちそうになってしまった。
うん。久々にお肉を食べた気がする。
味付けはシンプルだけど、久々のお肉に舌鼓を打ちつつ、お土産に幾つか鶏の卵とベーコンまでいただいて……あれ? こんなつもりじゃなかったんだけどなー?
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