第12話 可愛いリリィちゃん

「聖女様! 本当にありがとうございます! ずっと身体の調子が悪くて、段々と身体が弱っていく感じだったんです」

「間に合って良かったです。この子が私の声に反応してくれて、助かりました」

「リリィ、ありがとな」


 お父さんとお母さんから抱っこしてもらい、女の子……リリィちゃんが凄く嬉しそうにしている。


「せーじょのおねーちゃん。パパとママをげんきにしてくえて、ありがとー!」


 可愛いっ! 抱きついてくれたけど、抱っこして良いかな? 良いよね? えーいっ!

 まだ幼いからか、毛が細くて柔らかくて、あと暖かくて小さくて……モフモフの可愛らしさと、愛らしさを兼ね備えたリリィちゃんは最強かも!


「しかし、リリィは無事で良かったよ」

「そういえば、どうしてリリィちゃんは元気なんですかね?」


 リリィちゃんが元気だったから、家の中へ入れてもらえて治す事が出来たんだけど、大人だけが体調を崩す毒とかなのかな?


「あー、リリィはキノコが嫌いなので。まぁ今回はそれで助かりましたが」

「リリィ、キノコいやー」


 リリィちゃんは、顔をしかめても可愛いのねー。

 とりあえず、ご両親にはキノコに気を付けてもらうように……


「って、待ってください。キノコをお裾分けした人が居るんですよね!? その人も、同じ症状で苦しんでいるのでは!?」

「ほ、本当だっ! せ、聖女様。そいつも助けてやっていただいても宜しいでしょうか?」

「もちろん! すぐに行きますので、どのお家か教えてもらっても宜しいですか?」

「いえ、それなら俺が案内します。ついて来てください」


 いや、流石に病み上がりで無理はしないで……って、元気ね。

 先程ボールに沢山作った毒消草ジュースを持って、リリィちゃんのお父さんについて行き、お隣の家に。


「マティス! 入るぞ……って、おい! 大丈夫か!? マティス、しっかりしろ!」

「……」

「早く、毒消草のジュースを飲ませましょう」


 マティスと呼ばれた青年は、顔面蒼白で口を開くものの、声になっていない。

 大急ぎで適当なコップへ注いだジュースを飲ませると、


「旨ーい! 何だこれ!? めちゃくちゃ旨い! お嬢さんが作ってくれたのかな? お嬢さん、僕の為にもう一杯……」


 ぐったりしていて、かなり危険な感じのしたマティスさんが突然立ち上がる。

 これは思いの外、毒消草のジュースが効いているみたいね。

 ……ブドウと混ぜたのが良かったのかな?


「ドサクサに紛れて抱きつこうとするなっ! こちらのお方は土の聖女様で、お前の毒キノコで死にかけて居た俺と妻を治してくださったんだ! 失礼な事をしようとするなっ!」

「土の聖女様!? そ、そうとは知らず、すみませんでしたっ!」

「あ、あはは……とりあえず、無事で良かったです」


 初対面の女性に抱きつこうとするのは、どうかと思うけど、本気で反省しているようだし、既に怒られているから、私からは何も言わずにいると、


「あっ! 待ってください。今の話だと、僕がお裾分けしたキノコが毒キノコだったって話ですよね? ……村の人、全員に配っちゃった」


 マティスさんがとんでもない事を口にする。


「ちょっ……お前、マジか!?」

「だって、本当にビックリするくらい大量に採れたし、皆で食べた方が良いと思って……」

「えっと、何か器をお借り出来ますか? とりあえず今ある分を小分けにするので、村の方々へ飲ませてあげてください。私は追加で毒消草ジュースを作るので」


 一先ずボールに残っていたジュースを全て別の容器に移し、二人がそれを持って走って行く。

 私は、家の外で毒消草とブドウを育て、大急ぎでジュースを作る事にした。

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