第10話 美味しい焼きたてピザ

 ヴォーロスとセマルグルさんを交えて朝食……という事で、今朝はピザを焼いてみる事にした。

 昨日パンを焼いたオーブンを少し変えて、ピザ窯風にしてみたんだけど……いやー、流石は異世界ね。簡単に形が変えられるなんて、魔法が便利過ぎる。

 お次は小麦粉と水で生地を作ったら、サクッと育てたピーマンとかコーンに、トマトやバジルなんかを盛り付けて、ヴォーロスの雷魔法で加熱してもらうと……出来上がりっ!


「旨いっ! な、何なのだ!? この食べ物は!?」

「うん、とっても美味しいね。あ、おかわり貰っても良いかな?」

「どうぞどうぞ。これは私の故郷の食べ物で、ピザっていうの。ただ、本当はこれにチーズを乗せるんだけどね。そうすると、アツアツのチーズが伸びて、すっごく美味しいのよ」


 植物は土魔法ですぐに作れるんだけど、チーズは流石に無理なのよね。そもそも牛乳も無いし。

 魚ならヴォーロスが捕まえてくれるっていうから、いつかはお肉とかも食べられると良いなーって思うけど……そういえば、大豆は畑の肉って呼ばれているよね。

 次は大豆を使った料理を……でも、その前に油かな。

 やっぱり調理するのに油が必要なのよね。オリーブとかゴマを育てて、搾ったら油が取れるかな?


「ま、待つのだ。この時点で十分旨いのだが、チーズとやらがあれば、更に旨くなるのか?」

「えぇ。だけど、チーズは植物から作られるものではなくて、牛乳から作るものだから、私には作れないのよね」

「ふむ……村か街で手に入れば良いのだがな」

「えっ!? 村とか街があるの!? あ……そっか。セマルグルさんは空が飛べるから、海を越えられるんだ!」

「いや、翼はあっても身体が大きいから、流石に海を越える程の距離は飛べぬのだ」


 一瞬、元々住んで居た国へ戻れるかも! と思ったけど、かなり遠いみたいで、海を越えるのは無理みたい。

 それに、元の国へ戻ったら罪人扱いされそうだし……うん。戻らなくてもいいや。

 けど、元の国へ戻らなくても良いけど、買い物はしたいなーと思っていたら、


「セシリアよ。海を越えなくとも、少し離れた所に獣人たちの村があるぞ?」


 セマルグルさんから意外な言葉が出て来た。


「え……村があるの!?」

「うむ。とはいえ近付くと色々面倒なので、我は村の詳しい様子は知らないのと、そもそもチーズがどんな物か分からぬが」

「チーズは牛乳から作るってセシリアが言っていたけど、確かその村は牛を飼っていたと思うよ?」


 って、その村の事をヴォーロスも知っていたの!?


「あれ? この近くに村とか街は無いって言っていなかったっけ?」

「うん。人間の村や街は無いよ?」


 あぁぁぁ……そっか。ヴォーロスに会った時、私が『人間の村とか街があったら教えて欲しい』って、聞いたんだ。

 人間と獣人は違うから……うん。私の聞き方が悪かったのね。


「じゃあ、後でその村の近くまで案内してもらっても良いかな? そこでチーズが手に入ったら、もっと美味しい本当のピザを食べさせてあげるっ!」

「おぉ、それは楽しみだな。だが、それはそれとして、あのリンゴという木の実も貰って良いか?」

「構わないわよー。じゃあ、ちょっと待っててね」


 土魔法でリンゴの木に沢山の実を付けると、ヴォーロスと一緒に収穫して……あ、ヴォーロスは自分でも食べるのね。

 幾つかセマルグルさんがリンゴを食べて満足そうにした後、三人で獣人の村へ向かった。

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