第8話 未開の地、二日目終了

 夕食を終え、とりあえず具現化魔法で簡単な棚を作って、洗った食器や調理器具を片付けた後、川へ水浴びに。

 汗を流すついでに服も洗って……とりあえずの家の屋根の上から、昨日乾かしていた服と交換する。

 小さなタオルや着替えは持ってきたけど、ここでは服が手に入らないだろうし、何処かで引っかけて破れたりしないように気を付けなきゃ。

 そんな事を考えながらパジャマに着替え終えた所で、ふと気付く。


「ねー、ヴォーロス。何か髪の毛が一気に乾く魔法とかって使えたりするのかな?」

「え? そんなの使えませんよ?」

「そうなの? でも、一緒に川で水浴びしたのに、どうしてヴォーロスだけ既に乾いてるの? そんなに毛が沢山あるのに」

「んー、これじゃないですかね?」


 そういって、濡れた犬みたいに身体をブルブルと震わせる。

 なるほど。あれで水しぶきを飛ばしたんだ。

 私は……いやいや、髪の毛も長いし、そもそも無理だから、ドライヤーが欲しいな。

 けど、風を送る扇風機なら作れると思うんだけど、熱風にするにはどうすれば良いんだろ?

 冷蔵庫の時にもぶつかった壁だけど、温度を変化させるのは、電化製品を販売していただけの私には難しい。


「けど、扇風機なら作れちゃうから……何もしないよりかはマシかも!」


 という訳で、早速具現化魔法を使って、アルミ製の扇風機を作ってみた。

 とはいえ、モーターは未だ実験が足りていないので、歯車を組み合わせ、ハンドルを回すと動く扇風機に。

 うん。思った物が、そのままの形で出てくる魔法は本当に便利ね。


「せーのっ! ……あ、良い感じかも」


 手動扇風機だけど、それなりの風が来て髪から水滴が飛んでいるような気もする。


「何だか楽しそうですね。僕もやって良いですか?」

「むしろ、やってくれると助かるかな。ヴォーロス。そこの取っ手を思いっきり回してみてくれる?」

「わかりました。いきますよー」

「えぇ、いいわ……よぉぉぉっ!?」


 ま、待って。何これ!?

 この風って、テレビのバラエティー番組とかで、お笑い芸人さんが吹き飛ばされるやつじゃ……


「ひゃあぁぁぁっ!」

「せ、セシリアっ!?」


 吹き飛ばされそうになったところを、ヴォーロスが止めてくれたから良かったものの……ヴォーロスだと力が強すぎるみたい。

 まぁ、おかげでそれなりに水滴は飛んでいったけどね。


「ヴォーロス。この家は入れる? 狭かったら、新しく建てなおすけど」

「大丈夫ですよ。というか、普段はもっと狭い場所で寝てましたから。こっちの方が広いくらいです」

「そうなんだ。じゃあ、えっと……何も無いところですが、どうぞ。雨風を防げるのと、魔物は来ないから」

「魔物は別に平気ですけど、雨風は助かりますね。では、お言葉に甘えますね」


 ヴォーロスに続いて私も石の家に入り、出入口を土魔法で塞ぐ。

 それから、念の為の結界魔法を使い、作った畑や棚なんかにも魔物が近寄れないようにしたところで、寝転ぶヴォーロスの背中にダイブ。

 わー、モフモフだー!

 昨日は冷たい石の上で寝たから身体が痛かったけど、これならきっと大丈夫なはず!


「あ、ヴォーロスって寝相が悪かったりする?」

「いえ。殆ど身動きしないから大丈夫だと思いますよ」

「そっか、良かった。あ……お、重かったりしない?」

「全くです。そもそも、身体の大きさが全然違いますから。気にせずどうぞ」


 という訳で、ヴォーロスから許可も貰った事だし、モフモフと一緒に就寝!

 良い夢が見れそうね。

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