第7話 最初の料理
「ただいまー」
「おかえりなさーい。あれ? 氷魔法を使うっていう方は?」
パン作りの為の作業を色々していると、陽が沈み始めた頃に、知り合いを呼んでくると言っていたヴォーロスが一人で戻って来た。
会いに行ったけど、断られちゃったのかな?
「今日はちょっと忙しいそうで、明日来るそうです」
「そうなんだ。じゃあ、明日はヴォーロスの知り合いの方の分も、食事を用意するね」
「ありがとうございます。きっと喜ぶと思うのですが……ところで、僕が居ない間に、ここで一体何があったのでしょうか?」
「あはは、まぁ色々あってね。とりあえず、ここに凄く弱い雷魔法を使って欲しいな」
「ここ? 朝とは随分と形が違うけど……これで良いのかな?」
「うん。良い感じだから、暫くそのままに出来る?」
ヴォーロスが頷き、暫く弱い雷魔法を……電気を流してくれるみたい。
具現化魔法を使って、鉄とか石とかで作り出した、なんちゃってオーブンだけど、良い感じに加熱出来ていそうね。
思いの外、上手くいきそうだと思っていたら、ヴォーロスが不思議そうにしているので、パンを焼いている間に状況を説明する事に。
「えっとね。朝に作っていた小麦粉を使って、パンを作っているのよ」
「パン……ですか。セシリアたちの食べ物なんですね?」
「そうそう。でね、料理をする台が欲しかったから、食事をするテーブルと兼用で使おうと思ってテーブルを作ったの。あと、食器や調理器具も必要だから、鉄とかステンレスとかっていうのを使って色々作ったのよ」
「……それで、この状態ですか」
私の話を聞いたヴォーロスが、改めて周囲を見渡す。
いやまぁ、その……うん。確かに私もやり過ぎたかなとは思う。
だって、魔法が凄すぎるんだもん。
今日のお昼頃までは鉄とか石とかっていう、いかにもファンタジーです! っていう材料で家や調理器具を作っていたんだけど、ふとステンレスの事を思い出して具現化魔法を使ってみたら、出来ちゃったんだもん!
だから、無駄に大理石のテーブルだとか、銀食器だとか……はい。調子に乗って作り過ぎました。
こんな未開の地で持っていても、何の役にも立たないだろうから作ってないけど、きっとダイヤモンドとかルビーとかっていうのも作れたりするんだと思う。
宝石だって土の中に眠る鉱物だからね。
「ま、待って。確かにこの辺りは大変な事になっているけど、向こう側はちゃんと頑張ったの! レタスにトマトとか、オレンジや桃……いろんな野菜や果物を作ったんだから」
とりあえず、ヴォーロスにそのままパンを焼いてもらって、私は家の反対側に作った畑へ。
早速、夕食用に作ったレタスとトマトを包丁で切って、材料の準備を。
暫くすると、良い匂いがしてきて……無事にパンが焼けたっ!
「凄い……良い香りがしますね」
「うん。焼きたてのパンの香りだよ。これを取り出し……あ、熱そうね」
「じゃあ、僕が取りますよ。熱さも寒さも平気なので。……えっと、これで良いですか?」
「ありがとう。じゃあ、それを台の上で逆さにして……あ! そっか。油が無かったから、くっついちゃったんだ」
仕方が無いので、今回はパンをくりぬくようにして取り出し、切れ目を入れて、中にレタスとトマトのスライスを挟んで、完成っ!
「出来たよっ! 私の故郷の食べ物で、サンドイッチっていうんだ」
私用に普通の大きさのを。ヴォーロス用に特大のサンドイッチを作ったので、早速食べてもらう。
「人間は器用ですよね。朝の粉がこんな事になるなんて……うわっ! 美味しいっ!」
「どれどれ……うん、良いね! 本当は、ハムとか卵があるともっと美味しいんだけど、それは今後の課題かな」
デザートに甘ーい桃をいただいて……未開の地へ来てから、料理って感じがする食事が出来た。
どんどん生活を良くしていけるように頑張ろーっと!
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