第6話 頑張った小麦粉作り

「出来たーっ!」

「セシリア。これがさっき言っていた小麦?」

「そうそう。これを収穫して、粉にするんだー」


 リンゴやブドウの木を育てた時と同じように、土魔法で小麦の種を沢山作って、川の水を撒いたら、再び土魔法で育てる。

 日本でよく食べてた、雑穀米の中に入っている麦みたいなのを、不安に思いながら撒いてみたけど、上手く育ってくれて本当に良かった。

 しかも、すぐ収穫出来るしね。

 いやー、魔法って凄いよね。たぶん、魔法を使っていなかったら、こんな風に育ってないと思うもん。

 畑を耕したりとか、肥料とか、何となく必要そうな事を全くしてないし。


「さて。今度は具現化魔法で鎌を……出来たっ! これを使って、小麦を刈り取っていくの」


 黄金色に輝く小麦畑でしゃがみ込み、少しずつ鎌で刈り取って……どうしよう。めちゃくちゃ大変なんだけど。

 日本だったら、お米の田んぼで、車みたいなのがズザザザーって刈り取っていくよね。

 あんなのが欲しいけど、普通の車ならまだしも、流石に農機具は仕組みがわかんないなー。


「セシリア。大変なら僕がやろうか?」

「ヴォーロス、いいの?」

「お安い御用さ。えいっ!」


 ヴォーロスが腕を振るうと、スパパッと一気に小麦が斬り倒されていく。


「今のは何!? 魔法?」

「いえいえ。素早く腕を振って、カマイタチを起こしただけですよ。魔法ではないです」


 えーっと、実はヴォーロスって、かなり凄い?

 普通は、腕を振っただけでカマイタチなんか発生しないと思うんだけど。

 まぁでも……刈り取りが終わったから良しとしよう。

 ヴォーロスが刈ってくれた小麦を拾い集め、ついでに力技で穂から実を離してもらい、脱穀も完了。


「お次はこれよっ!」

「セシリア。その、穴の開いた変な石は何?」

「石臼っていって、石と石で麦の実をすり潰して粉にするのよ」

「粉にしたら食べにくいと思いますよ?」

「大丈夫、大丈夫。小麦は粉にすると、いろんな料理が作れるんだから」


 具現化魔法で作った石臼に小麦の実を入れて、早速挽いてみる。

 ごりごりごりごりごりごり……イメージで石臼を作ったけど、意外にちゃんと粉になって出てくる。

 ただ、小麦の実の周りにある皮を取り除いていないから、真っ白の小麦粉じゃなくて、茶色っぽくなっているけど。

 いわゆる全粒粉っていうやつかな。

 ひたすら実を入れて石臼を回していると、具現化魔法で作った鉄のテーブルの上に、粉が溜まっていくのが楽しくて、暫く黙々と挽き続けていると、


「じゃあ、僕はさっき言った知り合いの所へ行ってきますね」


 暫く石臼を見ていたヴォーロスが立ち上がる。


「えっと、氷魔法を使えるっていう方よね?」

「そうそう。夕方には帰ってくると思うので。あと、手土産用にリンゴっていう木の実をもらっていきますね」

「オッケー! 私は小麦粉作りを頑張るわね」

「はい。頑張ってください。では、行ってきます」

「いってらっしゃーい!」


 ヴォーロスを見送り、暫く石臼を回し続けたところで、お腹が空いて来たので、お昼ご飯を食べる事に。


「早く、パスタやパンが食べたいなー。とはいえ、今日のお昼は……バナナにしよーっと」


 土魔法でバナナを生やして、再び石臼を回し……


「出来たっ! 茶色いけど、小麦粉っ!」


 かなり沢山作ったので、数日分はあるから、取り敢えず十分の一くらいを鉄で作ったボールに入れて、残りは保存用に作った缶の中へ。

 じゃあ、記念すべき最初の料理は……パンにしよう!

 色々と勝手が違うし材料も足りないけど、日本で何度も作ったからね。

 ふふっ、美味しく作ってみよー!

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