第8話:これって寧々ちゃんのおかげ?

神主の卵、菅原 道之助・・・以降、ミッチーって呼ぶことにした。

桃香ちゃんのことは「ピーチ姫」って呼ぶことにした。


俺んちに居座ってしまった、ミッチーとピーチ姫には空いていた四畳半の

洋間を与えてやった。

そこで今日も昼間っからふたりはエロッちいことに励んでいた。

働いてないんだから、暇でしょうがないから、そういうことになるんだ。


いくら扉を閉めてたって、ピーチ姫のエロい声が聞こえてくるわけで、

そうするとだな、俺っちの寧々ちゃんがムラムラしてきて俺に迫ってくるんだよ。


向こうに負けてなんかいられないってんでさ・・・。


拒否ったりすると、また羽交い締めにされるから、しかたなく仕事を一旦、

中断して、こっちもはじまるわけ・・。


向こうとこっちでおネエちゃんふたりのエロい声の共演。

時にフォルティシモだったり、時にピアニッシモだったり。

でもってハモったりなんかして・・・。


で、終わったら俺は何もやる気がしなくなくなる。

まるで欲望と言う煩悩を捨て去った坊主のように・・・。


寧々ちゃん・・・しばらく待ってくれ。

休憩したらまた欲望の煩悩が復活するから・・・。


って、そんなことしてるから仕事が延び延びになっていくんだよ。


こんなことやってていのかって思ってた日々だったが、


ある日、某、有名建築デザイン会社からオファーがあって、なんでも

今回、古民家カフェのデザイン部門を立ち上げるとかで、堂島さんに、ぜひ

当社のスタッフとして参加してくれないかってことだった。


青天の霹靂・・・一介の売れない建築デザイナーにだよ俺・・・そんなことある?


給料は保証するって話で、よければ住まいも手配するからってことだった。

今までと違ってボーナスも出るし・・・まあ今より自由はなくなるけど、生活は

一気に何倍もリッチになる・・・。

これでとりあえず、みんなを養ってはいける。


これって、やっぱり寧々ちゃんのおかげ?

彼女はあげまん?


「私とエッチしたら出世するよ」って寧々ちゃんは言った。


それからコンビニの帰り、余ったつり銭で買った宝くじで、なんと一億当たった。

今までいくら買っても、一度も当たったためしなんかにのにだ。

ラッキー、めっちゃツイてるじゃん。


ここまできたら、もう寧々ちゃんのおかげとしか言いようがない。

俺はなんか、ギャンブルにでも手を出そうかと思った・・・。


でも寧々ちゃんに聞くと、欲を出しちゃダメなんだって。

欲を出したら、身を滅ぼすよって言われた。


資産でも増やそうと欲を出すと詐欺まがいの投資会社に騙されて泣き寝入り

するのがオチ・・・世の中そんなもん。

寧々ちゃんの言う通り、人間欲をだすとロクなことがないってことなんだろう。


人は分相応・・・でも俺は違う。

寧々ちゃんが俺のそばにいるかぎり・・・恋人でいるかぎり大丈夫さ。

ってやっぱり私利私欲に走る俺だった。


で、このことってピーチ姫にも当てはまるんだろうか?

ピーチ姫もあげまん?


ミッチーがいきなり神主に抜擢されたりして・・・。


で、そんなに、なにもかもうまく事は運ばない。

な訳で、ミッチーはピーチ姫との新たな生活のため就職活動をはじめた。

ピーチ姫に彼氏を出世させる能力があって、ミッチーにピーチ姫効果が

あるといいけど・・・。


で、そのピーチ姫は、なにもしない寧々ちゃんと違って、甲斐甲斐しく

俺たちのために料理、洗濯、掃除とけなげにこなしていた。


「お姉ちゃん・・・邪魔・・・どいて」

「大きな図体して、トドみたいにゴロゴロして・・・動かないと太るよ」

「エッチばっかしてないで、手伝ってよ・・・」


「あんたに言われたくないわ・・・」


「それに〜主婦ふたりもいらないでしょ・・・」

「あんたのほうが、私より器用なんだから、あんたがやったほうがいいのよ」

「私そういうの、どヘタだから、無理よね」


「昔っからそうだったよね、お姉ちゃんは・・・」


「ふん、あんたより私のほうがありがたいのよ・・・私にはご利益がある

グッズなんかも出てて、みんなから敬われてるのよ」


「あんたなんか桃の節句の時だけ、もてはやされるだけでしょ」

「私とは格が違うのよ」


「でも、お姉ちゃんに関わった男はみんな最終的には身を持ち崩してるわよね」

「お姉ちゃんは男にいい夢見せておいて、結局男を堕落させるのよ」


「だから好きな男にバケモンだ妖怪だって訴えられて坊主に封印されたんだよ」


「ふん、それは欲を出す男の方が悪いからでしょ」


「一郎さんだって、どうなっちゃうか分かんないよ」

「もうすでに目の前が見えなくなってるかも・・・」


「ずえ〜ったい、私がそうはさせないから・・・もし、堕落しそうになったら

別れるって三行半、叩きつけてやるから・・・」


寧々ちゃんは、はっきり別れるって言い張った。

それが吉と出るか凶と出るかは俺次第ってことか・・・。


そんな姉妹の会話なんか知らないで俺はウハウハで、貯金と宝くじの金で

マンションを買った。

で、みんなを引き連れて新しいマンションに引っ越した。



そこは50階建ての高級マンションの最上階の広い部屋。

窓から綺麗な都会の夜景が見えた。


俺は出世したんだ。

寧々ちゃんがいるかぎり、俺には常に運が回ってくるって寸法・・・


でも、それっていいんだろうか?

自分の実力じゃないのに・・・いくら寧々ちゃん効果だとしても

この一連の出来事を、ふと疑問に感じる俺だった。


実はその疑問に感じることが一番大事なんだ、人間にとって、俺にとって。



もし第9話があるなら、つづくと思う。

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