第6話
「ファルト、本当に1人でこの依頼を受けるのか?」
「うん。街の中だし安心でしょ?
だからタルツは魔獣討伐に行ってきなよ。鍛え直したいって言っていたじゃない。」
「そうだが・・・。」
「じゃあ私はこの依頼を受けるから、また夕方にギルドでね。」
「あぁ。」
何となくしょんぼりしている様子のタルツをそこに置き去りにして、私は1枚の依頼書を受付に提出した。
内容は、『ブラクテーク』という料理屋の手伝いだ。
報酬は銅貨3枚と安いが、昨日料理が人を幸せにしてくれることを知ってしまったから、どうしてもこの依頼を受けたみたくなった。
「おはようございます。冒険者ギルドから手伝いに来ました。」
「あらあら、随分若くて可愛らしい子がお手伝いに来てくれたねぇ。」
奥から、背の低い優しそうなお婆さんが出てきた。
「えっと、私は実は料理をしたことがないのですが、大丈夫でしょうか。」
「大丈夫だと思うわ。お爺さんが足を痛めてしまってね、重いものを持ったり運んだり、手伝ってもらいたいのよ。難しいことはないと思うわ。」
「そうですか。至らないところもあると思いますが、どうぞよろしくお願いします。」
「丁寧にありがとうね。」
お婆さんが言ったように、仕事はお爺さんが運べない大きな鍋を運んだり、野菜がたくさん入ったカゴを運んだり、器を洗ったり、盛り付けができた器をカウンターのお婆さんに渡したり、料理をしたことがない私でもできる仕事だった。
役に立てずに帰れと言われたらどうしようかと思ったが、何とか仕事をこなせているようでよかった。
「お疲れさま。さぁ。少し遅くなったけどお昼にしよう。」
「はい。」
ソーセージとキャベツのスープとパンと、昨日食べた小麦粉の生地で肉などの具材を包んだものを出してくれた。
「美味しい。これ、とても美味しいですね。」
「そうかい?そう言ってもらえると嬉しいね。」
「あの、明日も、これからもまたこちらの店の依頼を受けてもいいですか?」
「それはありがたいけど、あまり報酬を出してあげられないから、君にとっては厳しいんじゃないかい?」
「そこは仲間に相談してみます。」
その日は、それでギルドまで戻り、タルツの帰りを待った。
「タルツ、おかえり。お疲れ様。それは何?」
「あぁ、ファルトもお疲れ様。これは鳥だな。で、料理屋の手伝いはどうだった?」
「楽しかったよ。料理は作っていないけど、とても優しい老夫婦で、お昼に料理をご馳走になったんだけど、とても美味しかった。」
「それは良かったな。」
「タルツはどうだったの?」
「まぁ。そこそこかな。」
「そこそこって?」
「ゴブリンの群をちょっと倒して、そしたらこの鳥が襲ってきたから仕留めて、今戻ってきたところだ。」
「ゴブリンの群・・・
その鳥って、魔獣だよね?」
「一応魔獣だな。ロック鳥と呼ばれているものだ。」
タルツは鳥って言っていたけど、かなり上位の魔獣な気がする。
ダガー1本でゴブリンの群れを討伐して、このたぶん強い鳥を倒すタルツって、もしかしてとんでもなく強いんじゃ?
「私もついてく。」
ギルドの人の反応を見れば、タルツが強いということが分かるだろうと思い、私はタルツと一緒に受付の列に並んだ。
「タルツさん、もうゴブリンの群れを仕留め終わったんですか?
ソロですよね?それにそのロック鳥、お1人で討伐されたんですか?」
「はい、まぁ。」
やっぱり・・・
タルツは私が想像していた以上に強いんだ。
受付の人は、ちょっと対応を上司に相談すると言って席を外した。
「タルツって、とんでもなく強いんだね。」
「いや、そんなことはない。
まだ、私は発展途上で、今回も反省点がいくつもあった。」
「そうなんだ。」
「お待たせしました。
タルツさん、よろしければギルマスとお話ししていただけませんか?
ファルトさんも同席して大丈夫ですよ。」
「分かりました。」
私たちは、ギルマスの部屋に通された。
ギルマスってなんだろう。ギルマスって名前の偉い人だろうか。
コンコン
「タルツさんとその仲間をお連れしました。」
「入ってくれ。」
_____
お金の価値
銅貨(100円)
小銀貨(1,000円)
銀貨(10,000円)
小金貨(100,000円)
金貨(1,000,000円)
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