3話「打開の為に」
さて、楽しい楽しい異世界ライフを期待していたら一転。
追放されて情けないどん底異世界ライフに落っことされてしまった。
追放とはよく聞くが、実際追放されれば心の苦しみは痛い程理解出来た。
「ちくしょうがァ!」
いつも以上に怒りが表向きに顕になっている様に思えた。
まるで吠える獅子の様にして、凱亜は1人人気がなく、誰もいない場所で1人怒っていた。
誰の家かは分からないが、無性にも憂さ晴らしをしたくなり、凱亜は1人壁を殴っていた。
「クソが、クソが、クソが!」
今でも奴らを、自らに冤罪を吹っ掛けて追放した奴らを始末してやりたくなる。
心の怒りは、まるで火山が爆発したかの様にして更に膨張していくのが自分でも嫌になる程分かる。
腸が煮えくり返る様な程だ…。
◇◇
しかし、ただ只管に矛先の分からない怒りを燃やしているのでは現状を打破する事は不可能だ。
まずは、今からどうするべきなのか少し考えるべきだ。
(落ち着け、落ち着け。素数でも数えれば落ち着くはずだ…)
そんな訳ない。それだけは理解出来る。
普通、何も無しに追放されたらどうするべきだ。
凱亜は取り敢えず、誰でも座る事の出来るベンチに腰を掛け、顎に手を当てて考える事にした。
今、自分がいる場所は城からもそれなりに離れており、人気もあまり無い陰気な場所だ。
落ち着いて考えるには最適な環境と言えるだろう。
(ラノベとアニメを思い出せ…。追放されたら、どうする?)
これでもアニメとラノベの知識なら誰にも負けない自信がある。
これまで、凱亜はアニメやラノベであらゆる展開を見ていた。
「追放」ぐらいの困難なら、幾らでも挽回は出来る。
ならこの後、僕は一体どうなる?
考えろ、考えるんだ。
可愛い女の子と出会う?
悪魔女の子と契約する?
何処かの国の女騎士に拾われる?
何かチート的な力を手に入れる?
はたまた、魔王となり世界を滅ぼす?
それとも影から全てを掌握していく?
何なら今から谷底に落下しに行くか?
残念だが、どれも当てはまりそうにない。
確かにアニメやラノベなら上手く事が運ぶ事が多いし、仮に絶望に近い状況に立たされてしまったとしても逆転は容易に出来る。
と言うか絶望に近い状況にすらならない事が殆どだが。
「武器も、これじゃなぁ…」
そして、凱亜は手元にある武器を見つめ、哀れさと悲しげな表情を浮かべる。
その右手には、逆手持ちで1本のナイフが握り締められていたのだ。
これは荷物持ちだった僕に唯一支給された護身用の装備だ。
職業が無くとも、このナイフなら使えるだろうと言う優しさか哀れに思ったか、それとも煽っているのか分からない様な感じで受け取った武器だ。
切れ味も特に悪くは無い、これと言って特徴の無いごく普通のナイフだ。
何かを切るのにも使えるし、敵に突き刺したりするのにも使える。
だが、武器がこれだけではあまりにも不安だ。
リーチの差もあるし、何よりこれが無くなってしまったら、己の拳でしか戦う事が出来なくなってしまう。
アニメやラノベの主人公って、大体主人公限定で使える武器を持っている傾向がある。
例えば魔剣とか、凄く飛ぶ弓とか、中には自作の銃作ってる人とか、スマホ使う人だっている。
だが、僕には魔剣なんて使えないし、弓だってまともに撃てない。
銃は好きだけど、作るなんて普通に考えて無理難題。
専用の器具も無しに作れなんて、無理が過ぎる。
スマホだって持ってない。
「武器、買うか…後、出来るなら仲間も欲しい」
運が良かったのか、凱亜の持ち物の中にはこの世界の通過である「
召喚されて数日した後に、王の財から皆に配ってくれていた金だ。
◇◇
この世界の通貨は、全世界共通して「
大体、1
この知識は、異世界で生きていくには必須の常識だ。
僕はしっかりと覚えていたが、奴らは覚えていない様だった。
それよりも、金を王共にパクられなかったのは大きい。
無一文で外に放り出されていたら、間違いなく詰んでいただろう。
「所持金は…2500G、無駄遣いは厳禁だな。何処か格安で買える所を探そう。それと仲間も……?」
も、の続きを言おうとした時。凱亜の脳内にある記憶が蘇った。
ここは間違いなく異世界だ。それは確実な事だと言う事は分かる。
ならば、あの要素が存在している事に凱亜は今気が付いた。
「奴隷だ…!」
奴隷を買って、戦力にする。
そうだった、それがあった。何故気が付かなかったのだろうか。
ごくごく、ありふれた要素であったのにどうして気が付けなかったのだろうか。
見落としていた?しかし、そんな事はどうでも良い。
異世界と言う場所、そこには所謂「奴隷」と呼ばれる存在がある。
金を払って買えば、自分の命が尽きるその時まで、買った奴隷は必ず自分の物となる。
決して裏切る事は出来ず、全ては購入者である主に委ねられる事となる。
死なせるも、戦わせるも、弄ぶも、自らの快楽の為に使うのも全て購入者の自由だ。
大体の場合だと、可愛い女の子が奴隷として売られていて、買って仲良くするのがセオリーだ。
そしてそこから徐々に深い仲へと落ちていくのが定例と言った所だろうか。
後、確証は一切ないが奴隷ならば裏切る事もないし情報を公開しても嫌味を言われる事はない。
あてはないが、試してみる価値は存分にあるだろう。
近場にもしかしたら、奴隷を売買している場所があるかもしれない。
「よし、なら早速行動を…」
凱亜は表情を切り替え、勢い良く座っていたベンチから立ち上がった。
「お前さん、奴隷を探しているのかね?」
「え、マジ…?」
まだ何も言っていないつもりだったが、まるで心の声でも聞かれている様な気分になる。
いざ行動を行おうとした時、謎の人物が凱亜の前に現れたのだ。
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