第118話:セレナvsデュラハン

~サイド、セレナ~


やっぱりアルテ様に任務を与えてもらった時が、一番やる気が出ます。

私は長らく人生を共にしてきた愛剣リベリオンを抜剣。

この子は自分の手よりも手です(※語彙力崩壊)。


背後を一瞥すると、皆が静かにガッツポーズをしてくれました。

ふふふ。可愛いですね。

お姉さん少し張りきってきました。


悠々とコアに近づいて行き、遂にデュラハンの領域まで到達。

相手は私の魔力を察知し、ギギギとゆっくりこちらへ向きました。

「……」

「こんにちは。存分に殺り合いましょう」


デュラハンは馬から降り、錆びた剣を腰から抜きました。

乗馬したまま戦うのかと思いましたが、地に足をつけて戦うみたいですね。律儀な騎士さんです。


相手は全身と剣に〈風〉の魔力を纏い、前傾姿勢になりました。

あれができるのは選ばれしSランクモンスターだけだと思っていたのですが……。

まあいいでしょう。

「では私も遠慮なく」

私も《影》の魔力を纏います。


戦闘開始です。

敵が凄いスピードで接近し、突きを放ってきました。

では私も突きで相殺します。


キィン。

という甲高い音が鳴り響きました。

突きを剣の先で受け止めるのは、相当な技量を必要としますからね。


一瞬だけ相手の魔力が乱れました。

首から上が無いですが、どうやら驚いているようですね。

うふふふ。


「では今のうちに」

【夜の帳】

ダンジョンの上空から、『夜』が降ってきました。

もうここは私の世界です。


敵は怯まずに剣戟を仕掛けてきました。

「いいですね。相手をしてあげます」


上段斬りからの下段斬り……ではなく、手首を返して再び突きを放ってきたので、身を逸らして避けます。

すると今度は身体を捻じ曲げ、私の首を狙って横一閃。

「!?」


思わず影の中に潜ってしまいました。

どこの剣術なのかは知りませんが、かなり強引ですね。もしや、古代の剣術でしょうか。


そんなことは気にせず、私は相手の背後に出て、鎧の隙間を次々と斬りつけていきます。

「グォォォ……」

デュラハンは静かに悲鳴を上げました。

やはりそこが弱点でしたか。


魔力が数段濃くなりました。ようやく本気を出してくるようです。

「ふふふ。踊りましょうか」

【幻影乱舞】


凄まじい猛攻を浴びせていきます。

冒険者として鍛えた剣術と、暗殺者として培ってきた剣術。

その全てをぶつけます。

「ふっ!」

「ググ……」


まだまだ行きますよ。

【影剣(スパーダ)】

何本ものスパーダを宙に浮かべ、三百六十度から攻撃を仕掛けます。


デュラハンは魔力を全開にし、必死に剣を振るっています。

徐々に鎧にひびが入っていき、遂に片腕が崩壊しました。


「今です」

【影縫い】

バランスが崩れた今なら、強引に振りほどかれることはないでしょう。


そのまま全てのスパーダを敵に突き刺し、怯んだところで錆びた剣を弾き飛ばします。

錆びた剣は宙を舞い、地に突き刺さりました。

「ではさようなら」


【宵闇牙狼(ウルフファング)】


闇の中から突如、超巨大な狼が現れ、デュラハンを噛み砕きました。

するとデュラハンは消滅し、透明な結晶を落としました。

これが恐らく、アルテ様が言っていた〈風〉の結晶でしょう。


ちなみにお馬さんも同時に消滅したので、安心してくださいね。


皆の方を向くと、大歓声が上がりました。

すぐにアルテ様の元へ行き、〈風〉の結晶を渡します。

「ありがとう、セレナ」

「いえいえ~」

「ところで質問なんだが、最後の狼は一体何なんだ?八岐大蛇(チー君)と同じ匂いがしたのだが……」


私は思い出す。

「あ~。この前影の世界を歩いていた時に、偶然出会ったんです。沢山魔力を与えて、頭をヨシヨシしてあげたら、なんか懐いちゃいました」

「なんか懐いちゃったかぁ……。それは仕方ないな」

「ですよね~。かなり恥ずかしがり屋さんなので、中々外の世界に出てきてくれないんですけどね」

「飼い犬は主人に似るってよく言うもんな」


「私、アルテ様より友達多いですけどね」

「うっ……」

アルテ様は精神的ダメージを受けたらしく、膝から崩れ落ちました。

ドンマイです。


話を変えますが、デュラハンがAランク認定されているのは、きっと〈風〉の魔力を纏えるだけで、〈風〉の魔法を放つことができないからでしょうね。


では気を取り直して。


「そろそろ宝箱探しに移行しましょうか~」

「あたしが全部探し出してやるわ!」

「そんなにいっぱいあればいいのだけどね」

「俺はでっかい剣が欲しい!」

「僕は頭が良くなる魔導具が欲しい!」

「俺はやっぱ杖が欲しいかなぁ」

「私は古代の叡智が詰まった魔導具が……」


「ブルルル」

「ブルブル」

「チュー」







「アルテ様は何が欲しいですか?」

「友達」


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