第117話:謎のダンジョン②

今回のダンジョンはAランクと断定した。

そのため遠距離はリリー・ヘル・ブリトラ、近距離はオリビア・ルーカス・エドワードという布陣で攻略していくことになった。

俺とセレナ、エクスの三人はいざとなったら介入する。

またムーたんはカミラの頭の上に乗り、遊撃してくれるらしい。

「チュッ」


ちなみに一番ノリノリなのはムーたんだ。

「カミラの頭の上で小躍りしてますね~」

「「「か、可愛い///」」」

女子達に大人気である。

魔導具をフル武装しているネズミなんて、この世界でもムーたんくらいだろう。


順調に歩みを進めていると、すぐに魔物がやって来た。

「アルテ様、あの魔物知ってます?」

「いや、知らん。魔力量から推定するに大体Bランクくらいだと思うが……。ヘルとブリトラは知ってるか?」

「いや、フィオレント大陸では見たことねえな」

「私も知りません。蝙蝠と人間を合わせたような、不気味な見た目ですね……」


前世でいうところのガーゴイルのような魔物が、こちらに気付き赤い目を光らせた。

「来るぞ」


リリーが名乗りを上げた。

「私がやるわ!!!」


両手を地につけ、唱えた。

【溶岩蛇(ラヴァ・スネイク)】

マグマの蛇がガーゴイルに巻き付いた。

〈火〉の上級魔法の中でも特に難しいと言われる、拘束魔法である。


抜け出せなければそのまま燃やし尽くされるので、ガーゴイルはその怪力で強引に蛇を引きちぎり、脱出した。だが一瞬でも拘束された時点で、アイツの負けである。


彼女はすぐさまトドメの超級魔法を放った。

【赫々炎陽】

巨大な灼熱の太陽が直撃し、その身は消滅した。


「見事だ」

「上級と超級のコンボですか~。恐ろしいですね」

「リリーはやっぱスゲエな!」

「さすがリリーね。去年よりも発動が速いし、威力も上がっているわ」

「僕も撃ってみたいなぁ、あんな凄い魔法」


俺達はリリーの実力を知っていたので素直に賞賛したが、ブリトラとヘルは違った。

「これが帝立魔法騎士学園のトップか……」

「侮れませんね……」

彼女はただ超級まで習得しているだけではない。

本当の武器は全属性が使えることと、圧倒的な戦闘のセンスである。


もちろん我が天使であるレイ(女神)も負けてはいない。お世辞抜きでな。


一時間後。

「おい!またヤバそうな新種が現れたぞ!リリー任せた!!!」

「もう、わかってるわよ!」

「木の影からヒト型魔物の集団が出てきました。近距離組お願いします」

「うへー、またかよ。少しは休ませてくれ……」

「ほら、ルーカス。へばってないで早く防御して!」

「私は後ろから回り込むわ!」


俺とセレナ、エクスは最後尾で見守っている。

「皆頑張ってますね~」

「この程度、軽く捌けるようになって貰わないと困る」

「うわ~。相変わらず戦闘に関してはスパルタですね、アルテ様は」

「ブルルル」


「ムーたんとカミラも無理しちゃダメですよ~」

「チュッ」

「ブルブル」

あの二人も大分ハッスルしている。


「なぁセレナ。ムーたんの右足に付いている、あの魔導具は何だ?」

「あれは傷を負うと、自動で治癒魔法が発動する魔導具ですね」

「ほう。結構高かったんじゃないか?」

「ムーたん用の特注なので、白金貨二枚でした」

「高いな……。でも相棒の為なら安いもんか」

「ですね」


白金貨二枚は、日本円に換算すると大体二百万円くらいってところだな。

詳しくは言わないが、セレナはこの数年でかなり稼いだらしい。

用心棒としての給料+Sランク冒険者として活動して得た報酬。

その辺の貴族よりも持ってそうである。

そんな彼女からすれば、白金貨二枚など端金に過ぎないのかもしれんな。


ここで、セレナが何かに気が付いた。

「アルテ様。あそこに茶色い結晶が落ちてませんか?」

「おぉ。お手柄だな、セレナ」

俺は一瞬で回収した。


「これが先ほど説明した〈土〉の結晶だ」

「なるほど~。不思議ですね~」

「ほれ、エクス」

「ブルルル」ボリボリ


残すはあと一個。〈風〉の結晶だけだ。


さらに三十分後。

半分程進んだ所で、遂に先頭の六人が限界を迎えた。

「もう無理……」

「あたし、もう魔力がスッカラカン……」


というわけで、安全な場所で休憩がてら昼食をとることにした。

「何よ、この料理!絶品じゃないの!」

「アインズベルク公爵家に勤めたら、毎日これが食べられるのね……」

「肉!もっと肉をくれ!!!」

「帝城の食事も良いけど、アインズベルクのも良いねぇ」


「やっぱ野菜がうめえなぁ」

「癖になる味付けです……」


うちの料理人達は優秀だからな。

また、アインズベルク公爵領には高ランクモンスターの生息地がわんさかあるので、頻繁に良い肉を仕入れることができるのである。

野菜については、天龍山脈から流れてくる、ミネラルと魔力が豊富に含まれる綺麗な水を使って育てているので、美味しくなるのは当たり前だな。


その後、再び同じ布陣で攻略を進めていき、ついにコアの近くまで到達した。

コアは豪華な祭壇に祀られる形で浮かんでいたので、やはり前人未到というわけでは無さそうだ。

この辺を調査すれば、宝箱の一個や二個落ちているかもしれん。


そして、その周りには……。

首の無い黒騎士が、巨大な馬に乗り彷徨っていた。

「デュラハンってやつか?」

「はい。おとぎ話に出てくる伝説の魔物ですね。ランク自体はAですけど、深淵馬並みに希少な種類です」

「セレナ、いけるか?」

「もちのろんです」


セレナがアダマンタイト製の愛剣【リベリオン】を抜刀した。

数年前、オストルフでセレナと戦った時以来である。


俺は皆に言った。

「皆、よく見ておけよ。世界最高峰の戦闘だぞ」

「「「「「「ゴクリ……」」」」」」







-この世界あるある-

貴重な高ランク魔物は絵本に登場しがち。



~~~~~~~~~~~~~~~

【あとがき】

皆様あけましておめでとうございます。

今年も何卒よろしくお願いいたしますm(__)m


アルテ「皆、あけおめ」

レイ「今年もよろしくねー!!!」


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