第116話:謎のダンジョン①

 無人島のボス【アジ・ダハーカ】を討伐した俺達は、すぐにセレナ達の待つ、謎のダンジョンへ向かった。

ちなみに件のダンジョンの入り口は山の中腹付近にある。


急いで向かったので、一時間も掛からずに到着した。

「ここが例のダンジョンですか……」

「こんな目立たない場所にあるのに、セレナさんはよく気付いたな。やっぱ只者じゃねぇ」

「お前如きにはやらんぞ。セレナは」

「寄越せなんて一言も言ってねえだろうが!恐れ多いわ!」


そうか。魔人族は権力<実力だから、セレナには頭が上がらないのか。

もちろんこの法則は天使族・龍人族にも適応される。

さすがに王族などは例外だがな。


「とりあえず中に入ろう」

「そうですね。セレナさん達を無駄に待たせるわけにはいけませんし」

「嫌だなぁ。Bランク以上のダンジョンとか、考えたくもないわ」

「偶には根性を見せろ」

「へいへい」


俺達は中へ足を踏み入れた。

謎のダンジョンの内部は、かなり不気味だった。

「空が……赤い?」

「おいおい。こんなダンジョン聞いたことねえぞ?」

「……」


こんな異様なダンジョン初めてだ。

俺は今まで数多のダンジョンに潜ってきた上に、いくつもの資料に目を通してきた。その俺が知らないということは、マジで激レアということである。


ノーマン博士の魔物大全典にも記されていなかったし、以前セレナが「魔の森」の小屋から回収した、彼の旅行記にも書かれていなかった。


魔物大全典に“枠組みから外れたモノ”を記している時点で、博士がこのダンジョンを秘匿しているという可能性はかなり薄い。

要するに、ここからは未知の世界なのだ。


セレナ一行が向こうからやって来た。

「アルテ様~。待ってましたよ~」

「あんた達、遅いわよ!」

「もう何体か魔物討伐しちゃったわ」

「アルテ!ここの魔物、クソ強いぜ!」

「その割には魔石落とさなかったけどね」


「もう暴れ回った後なんかい」

「大分アグレッシブですね……」

「これ絶対アルテの影響だろ」


つい二年前まで、Cランクの魔物にさえビビり散らかしていたリリー達が、これほど成長するなんて思いもしなかった。なんと感慨深いのだろうか。


ムーたん達も楽しそうで何よりである。

「チュ―」

「ブルルル」

「ブルブル」


俺はセレナに問う。

「で、ランクはどのくらいだ?」

「四キロ先にあるダンジョンコアの周りを、Aランクの魔物がウロチョロしているので、たぶんAランクですね」

「ほほう。ちなみに先ほど……」


俺はセレナ達にジャバウォックがアジ・ダハーカに進化し、それを討伐したことを伝えた。

エドワードが顎を摩りながら言った。

「ふ~ん。アジ・ダハーカが結晶を落としたのか……。じゃあこのダンジョン出身という訳では無さそうだね。ここの魔物達は魔石も結晶も落とさないから」


「いや、結晶は一定確率で落とすんだと思うぞ。エドワードとセレナなら知ってると思うが、前回のスライムと今回のキモキモ竜が奇跡的に落としただけで」

前回の青い結晶は報告がてら、一度陛下に送ったからな。


「なるほど。面白い考察だね」

「そう考えると、なんかダンジョンも魔物も、“失敗作”みたいですね」

「失敗作か……くっくっく。言い得て妙だな」


「うわ。アルテの悪役笑い久しぶりに聞いたわ」

「私結構好きだけどね。アレ」

「どうせロクな事考えてないんだろうな!」


「なぁヘル。帝国の連中って皆狂ってねえか?」

「それには同感です……」


俺は皆に言った。

「この島を帝龍祭の会場にするという面では、恐らくここのダンジョンコアを破壊した方がいい。だが俺の判断だけでは、そんな大それたことはできん」


ダンジョンというのは主に冒険者ギルドの管轄なので、帝国の第二皇子であるエドワードよりも、SSランク冒険者である俺の発言が優先される。

そんな俺の考えとしては、せめて帝国ギルド本部長オーウェンと陛下の判断を仰ぎたいところである。


ここでエドワードが言った。

「で、本音は?」

「ここにはまだお宝が眠っている気がして勿体ないから」

「うわぁ……」


もっと言えば、壊す壊さないを別として、まずはダンジョンの謎を解き明かし、エクスを進化させたい。その後隅々まで調査し、宝箱や貴重な魔物の生態情報などを手に入れる。

話はそこからだな。


オリビアが首を傾げた。

「アルテの言った“お宝”って、もしかして宝箱のことかしら?」

「ああ」

「こんな変わったダンジョンに?」

「変わっているからこそ、だ。俺達の想像を超えた魔導具を生み出し続けた古代人。彼らはきっとこのダンジョンも発見したはずだ」

「何かしらの遺産又は痕跡を残している可能性が高いってことね」

「その通りだ」


彼らが、このダンジョンや結晶を見て何も思わないはずがない。


「調査隊が入る前に手に入れた宝箱は、全部こっそり俺達のモノにしよう」

「あんた最低ね……」


「な、エクス」

「ブルルル」


今までエクスが獲得した(美味しく頂いた)結晶は、青と赤の二つ。

青は〈水〉、赤は〈火〉属性だと仮定すると、残った属性は〈風・土〉の二つだ。

俺の予想では、四属性の結晶を獲得することがSSランクへ進化するための鍵。

深淵馬のような伝説のSランク魔物であれば、きっと……。


「よし、探索開始だ」

「久々のダンジョン攻略楽しみです~」

「チュッ」

「あたしの超級魔法の出番ね!!!」

「帝王祭に備えるには、やはり実践訓練が一番よね」

「滾ってきたぜー!!!」

「留学して早々、強敵との戦闘が続いています……」

「よくわかんねえけど、頑張るか!」(ヤケクソ)

「ブルルル」

「ブルブル」







俺はエクスの腹をタプタプしながら呟いた。

「ぽっちゃり体型のまま進化したら、体型は維持されるのか?」

「ブルル……」


SSランク(ぽっちゃり体型)にならないことを祈ろう。


~~~~~~~~~~~~~~~

【あとがき】

皆様お久しぶりです。作者の田舎の青年です。

一応生きてます(かろうじて)。


まずは二週間ほど更新が滞ってしまい、申し訳ございません。ちょっとリアルが忙しくて、中々執筆できませんでした。

(書籍化の作業もめちゃ頑張った!)


本日から更新復活します!

目指せ、二日に一話更新!


あと新作で陰陽師モノ(主人公最強系)書いてます。

読んでくれたら嬉しいなぁ、なんて……。


(●´ω`●) ←ムーたん


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る