第113話:無人島到着
俺達八人は学園を出て、無事アインズベルク公爵家別邸に着いた。
帝都の貴族街に堂々と佇む屋敷を見て、ブリトラとヘルが呟いた。
「うぉぉ、デッケェ……」
「帝国貴族の御屋敷は比較的大きいと思っていましたが、ここは別格ですね……」
「ちなみにうちの実家はこれの三倍はデカいからな」
「「!?」」
護衛に挨拶し中へ入ると、すでにセレナとムーたん、カミラが待機していた。
「アルテ様、待ってましたよ~」
「チュ―」
「ブルブル」
「三人共お疲れ。今日はワガママに付き合ってくれてありがとな」
「いえいえ~」
余談だが、最近ムーたんは魔導具収集にドハマりしているらしく、小さな身体にいくつものアクセサリー型魔導具を装着している。
エドワード、ルーカス、リリー、オリビアの四人は久々の再会なので、雑談に花を咲かせている。ムーたんはリリーとオリビアに揉みくちゃにされ、エドワードとルーカスは綺麗なお姉さんキャラであるセレナにデレデレである。
エクスは相変わらずカミラとイチャイチャしている。早く俺にエクスベイビーズを見せてくれ。どうでもいいが、どんな仔馬が生まれるんだろうな。エクスが黒でカミラが白だから、シマウマ模様になるのか、それとも牛みたいな模様になるのか。
いや、黒一色と白一色にバラバラに分かれる可能性もあるし、灰色になる可能性もあるな。
まぁどんな仔馬達が生まれようと、溺愛する自信がある。
その時を楽しみに待とう。
ブリトラとヘルは固まっている。
「おい、アルテ。あの人ヤバくね?」
「はい。ほんわかした雰囲気を纏っていますが、実力の底が見えません。何者なんですか、彼女は」
「セレナはうちの用心棒だ。それ以上でもそれ以下でもない」
セレナはゲルガー公爵家の暗殺者として何十年も働かされていた。そんな彼女を半ば救出する形でアインズベルクに雇い入れたのである。ムーたんはお友達枠で付いてきた。
「あの成金ネズミもめっちゃ気になる」
「あの子可愛いですね///」
「あれはムーたんだ。ちなみにあのアクセサリーは全部高級魔導具で、その中の一つは転移のアクセサリーだ」
「えっ。高級どころの話じゃねぇじゃん!」
「転移のアクセサリーとか、各国の王族が動き出すレベルですよ……」
最近ムーたんにねだられたので、俺がムーたんの魔力でも使えるようにカスタマイズしたモノをプレゼントしたのだ。空前の魔導具ブームが終わる前に渡してやろうと思ってな。
てなわけで帝国アマチュアの二人を連れ、オストルフへ転移した。二人とも初めての転移にかなり興奮したようだ。今のうちに楽しんでくれ。
「これが今日、俺達が乗る戦艦だ」
「「……」」
俺達の前に昂然と浮かぶこの大戦艦の名前は【スサノオ】。アインズベルク公爵家海軍の二番艦である。
今日は第二皇子(学園を卒業したら皇太子)を乗せる予定なので、兄貴がこれを寄越したのだ。
ルーカスが首を傾げた。
「なぁアルテ。このまま戦争に行くわけではないよな?」
「俺達だけで小国を潰しに行くんだぞ」
「えっ」
「冗談だ」
全員でスサノオに乗り込み、波に揺られること約一時間。早速件の無人島へ到着した。
すぐに上陸し、まずは砂浜で作戦会議をする。
「どうだ?セレナ」
「う~ん。B級が一体に、C級が数体……。後は山の中腹に不思議な魔力を感じますね。ダンジョンでしょうか」
「ほう、さすがは未開拓の島だ。まさかダンジョンがあるとはな」
リリー達も大盛り上がりである。
「ダンジョン!?この島最高じゃないの!」
「魔物の間引きが終わったら是非潜りたいわね」
「ダンジョンに入った時の、異世界感がたまらないんだよなぁ!」
「フィールド型かな?階層型かな?」
そこにダンジョンがあったら潜るという、俺の冒険者イズムを継承してくれているようで何よりだ。その調子で頼む。
「B級とか、討伐したら都市の英雄になれるレベルなんだが……」
「ワ、ワイバーンと同級ですよね?」
「お前ら今度、バルクッドに来てみるか?近郊にある魔の森にはSランクがうじゃうじゃいるぞ」
「嫌だよ!」
「遠慮しておきます」
未だにビビり散らかしている二人に、俺は言った。
「今回は頑張ってくれよ?俺の魔人族、天使族に対するイメージはお前らにかかっているんだからな」
それを聞いた二人は少しやる気を出した。
「頑張るぜ!魔王様の為にもな!」
「舐められたままでは終われませんからね!」
作戦はこうだ。
まず二つのチームに分かれ、魔物を順次倒していく。
何かあれば通信の魔導具で連絡。
俺のいるチームがB級を倒し、セレナチームがダンジョンの下調べに行く。
まぁそんな感じだ。
俺チームがエクス、ヘル、ブリトラ。
そしてセレナチームがリリー、オリビア、ルーカス、エドワード、カミラ、ムーたんだ。
「じゃあな。武運を祈る」
「お前らも頑張れよー!」
「島のボスは私達に任せてください」
「アルテ様もお気をつけて~」
「早く来ないと、ダンジョン踏破しちゃうわよ!」
「ちゃんと二人を守ってあげてなさいね、アルテ」
「ヘルもブリブリも、何かあればすぐアルテを頼るんだぞ!」
「ヘル頑張ってね!あとブリブリも」
「おい!お前ら後でぶっ飛ばすからな!」
「今更だけど大分汚いあだ名だよな、ブリブリって」
「ぷっ。お似合いですよ~」
「てめぇら……」
俺達は森の中心へ、セレナ達は山の方へ向かった。
暗い森に足を踏み込んで早々、俺達を歓迎するかのように魔物が鳴き声を上げた。
「おい、ブリトラが鳴いてるぞ」
「ん?って馬鹿鳥じゃねえか!」
「本当に馬鹿みたいな鳴き声ですね」
無人島探索は続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます