第109話 : 学園長
俺は現在、SS-1クラスで地理の講義を受けている。もちろん、リリー、オリビア、ルーカス、エドワードの四人も一緒だ。
色々と事件が起きた入学式から、早くも三週間が経過した。
俺はきちんと通学し、生徒会の仕事も律儀に(嫌々)こなしている。褒めて欲しい。
今週の土日は友人達と共に、オストルフ近海に浮かぶ無人島へ行く。主な目的は魔物の間引きだ。絶対に楽しい。
教師のアグノラが、黒板にスラスラと大陸の地図を描いていく。
「皆も将来国外へ行くことがあるだろう。もちろん貴族としての仕事でな。だから、天龍山脈の向こう側の地理もしっかりと把握しておくように。じゃないと、いざって時に痛い目を見ることになるぞ」
そういえばまだエルドレア大陸にある国々の詳しい話をしていなかったな。
今この時間を使って簡単に説明させてくれ。戦争で色々変わったし。
まずこの大陸には、(元)三強と呼ばれていた国がある。
お馴染みのカナン大帝国、アルメリア連邦、カリオス教皇国だな。三つ巴の戦争により、連邦は帝国の属国になり、皇国は解体された。要するに今は我が帝国が大陸を支配している。
その他には、ブレスデン公国、リオン王国、ルル侯国、獣人国、フロレンティ連合国が存在する。
ブレスデン公国はセレナの故郷だ。学園を卒業したら、真っ先に向かう予定である。ちなみにその先にルル侯国があるのだが、この国には俺の狙うべきSSランクダンジョンがあるので、故郷に寄った後はそこを目指すつもりだ。
あとはそのままの感じだな。
しいて言うのなら、フロレンティ連合国は数多の小国が集まり形成された国家だということくらいだ。小国群をカッコよく言っただけである。
また向こう側には、ルーヴェン山脈や太古の大森林などの危険地帯が存在するので、是非行ってみたい。以上だ。
別大陸の話はまた今度する。
チャイムが鳴り、授業が終わった。
「アルテ。学園長が呼んでいるから、この後すぐに学園長室へ向かうように」
「嫌だよ」
「嫌でも行くんだよ!」
「チッ」
「教師に舌打ちするんじゃない!まったくお前って奴は、一年生の頃から全然成長していないじゃないか!もっと三年生らしく、いや生徒会らしくして欲しいものだ……ガミガミ」
「ってなわけで、久しぶりに行ってくるわ」
「行ってらっしゃい」
「さっさと帰ってきなさいよね!生徒会の仕事が溜まってるんだから!」
「そうだぞ!絶対逃げるなよ?」
「きっとジークフリートをフルボッコにした件だろうね」
本当に久々である。
忘れた人のために軽く説明すると、学園長は覚醒者の美魔女エルフだ。また、SSランク冒険者【氷華のエリザ】の愛弟子でもある。余談だが、エリザの事をふざけてエリちゃんと呼んでいる、そんな女性だ。
三年目の今でも、学園長の名前は知らない。何の覚醒者なのかも知らない。謎エルフである。
コンコン
「どうぞ~」
ガチャ
「えらく久しぶりだな、学園長」
「そうね。去年アルテ君は多忙だったから、しょうがないわ」
「で、どうしたんだ?」
学園長は資料を眺めながら続ける。
「まずはジークフリート君と喧嘩した件についてよ。あの後大変だったんだからね?」
「すまん。でもアイツが百パーセント悪い。命を奪わなかっただけ感謝して欲しいくらいだな」
「色々聞いたけど、アルテ君が正解のようね。すでに国際問題にまで発展しているようだし、それに関してはもういいわ」
「そうか」
「次の話に移りましょうか。毎年一年生は前期に、帝都近郊の森で野外演習を行うでしょう?」
「おう。一年生の時は俺が参加して、二年生の時はエリザが参加したやつだな」
「そうそう。それを今年もお願いしたいのよねぇ。SSランク冒険者が引率として参加するのと、参加しないのでは、保護者からの印象が大分変わるのよ」
「まぁ、二年前に連邦飛竜部隊の襲撃があったくらいだからな」
学園長は溜息をついた。
「あの時もしアルテ君がいなかったら、本当にヤバかったわよね」
「そうだな」
「というわけで、参加してくれる?依頼はギルドを通すから安心して頂戴ね」
「ジークフリートの件で迷惑をかけたからな。参加する」
「ありがとうね、助かるわ。それで、本音は?」
「レイにカッコいい所を見せたい。お兄ちゃん凄いって言われたい」
「シスコンここに極まれり、ね」
「俺はシスコンじゃないぞ。ちょっと過保護なだけだ」
「あー。はいはい」
「いや、マジで」
「そういうことにしておくわね。ふふふ」
その後、生徒会室にて。
「アルテ。今後の予定決まってる?もし決まってたら、この書類に書いて欲しいんだけど」
「ついさっき決まったからな。すぐに記入する」
「了解。五人の予定を照らし合わせて、僕が今後の計画を考えていくからね」
生徒会長は大変だな。
今週の土日は無人島へ行く。来月は野外演習の依頼を受ける。
帝龍祭がいつかわからんが、どうせ再来月か、その次の月くらいだろう。
別邸に帰宅すると、珍しくケイルが門で待っていた。
「アルテ様。お帰りなさいませ。今日は珍客が来ております」
「珍客……?」
すぐに接客室へ向かう。扉を開けると、ソファに例の客人が座っていた。
「お前が伝説の冒険者、【閃光】か。喜べ、私直々に会いに来てやったぞ」
「いや、帰れよ。あと伝説とか言うの、恥ずかしいからやめろ」
「照れるなよ」
「我慢できずに来ちゃった奴に言われたくないわ」
そこには帝龍祭で決闘を行うはずの相手、“黒龍のヴァレンティア”が座っていた。
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