第82話:海戦②
【炎鳥】
小さめの戦艦から強力な魔法が放たれ、僕は咄嗟に叫んだ。
「ソフィ―!!!」
【水龍の咆哮】
炎の鳥と水龍のブレスがぶつかり合い、第二の戦いが始まった。
両者がぶつかった結果、ブレスは一瞬で炎の鳥を飲み込んだ。たぶん≪炎≫の覚醒者が超級魔法を放ってきたのだと思う。魔法の相性的にソフィーに相手してもらった方が良さそうだね。
「ソフィ―、アイツの相手は頼むよ」
「わかった。任せろ」
「見た感じ、敵の覚醒者はピッタリ十人だね。ソフィ―に一人、フローレンス団長に二人、そしてチー君に七人相手してもらえば大丈夫そうだ」
コクコク
「了解です。魔法を相殺し続ければ最悪、魔導大砲のゴリ押しで勝てますね」
「うん。まだ相手が覚醒者を隠していたらマズいけど、そろそろうちの精鋭部隊が到着するから、それまで耐えれば勝ち確だよ」
「念のため呼んでおいて正解でしたね」
「そうだね」
そんな事を話している間にチー君は巨大な八岐大蛇に変化していき、計八個の首が全て例の戦艦へ向いた。敵の何人かはチビってるだろうね。
【渦炎】【黄金槍】【腐乱風】.......
【渦潮】【土石龍】【暴風龍】.......
焦った相手が早速、十の超級魔法を放ってきたので、こちらも応戦し三つの超級魔法と七つのブレスで相殺する。フローレンス団長の魔法がとてもカッコいい。もちろんソフィーとチー君もね。
フローレンス団長の異名は『煉獄の魔女』で、確か絶級の〈火〉魔法が放てるはずだけど今は魔力を温存するために超級魔法で応戦している。それでも十分凄いけどね。
その間魔導大砲が止まるわけもなく、覚醒者の戦艦は被弾している。そろそろ穴が開く頃じゃないかな?
その魔法合戦は数分間続き、遂に覚醒者の戦艦に穴が開き煙も上がり始めた。
「ほら、出てくるなら今だよ。敵の覚醒者諸君」
「ロイド様!うちの空母を西側後方に確認しました!」
「ナイスタイミングだね!攻撃開始の合図を送って!」
「了解しました!」
そして後方を振り返れば、空母から次々と飛竜達が飛び上がり、群れと言う名の部隊を形成し向かってきた。物凄いスピードだね。
実はこの前、海上戦でも飛竜部隊を駆使したいとアルに相談したことがあったんだ。その時に空母とやらの話を聞いてすぐに造艦した。飛竜も生き物だから、常に飛んでいると疲れちゃうからね。もし陸から飛んで参戦したら、本領発揮なんて夢のまた夢。でも空母に乗せてくればそれが可能になるってわけ。ちなみに飛竜に騎乗しているのは白龍魔法師団の面々だ。
あとうちに飛竜部隊を作る許可は貰っているから安心してね(アルが陛下に貰った)。
「攻撃開始!放てぇ!」
【花吹雪】
射程距離に入った飛竜部隊はすぐに上級以上の魔法を撃ち始めたが≪雪≫の超級魔法で相殺された。覚醒者の戦艦ではなく、沈みかけの一番巨大な戦艦の方に≪雪≫持ちが隠れてたようだ。一番強そう。
ここでフローレンス団長が
「おい、お前達!私が≪雪≫持ちの相手をするから、こっちは頼んだぞ!」
「「「「了解!」」」」
フローレンス団長と飛竜部隊は上手くスイッチし、煉獄の魔女vs≪雪≫持ちの戦いが始まった。
【火龍の咆哮】
【雪龍の咆哮】
そんな当たり前のように超級魔法合戦を始められちゃうと僕が情けなくなってくる。まだ中級までしか使えないし。
とか思っても、僕の目は両者の戦いに釘付けなんだけどね。
【赫々炎陽】
【ブリザード】
あれって確かリリーが帝王祭で使ってた超級魔法だった気がする。魔法書にも載ってる奴だね。ここで両者の魔力が上昇した。恐らく次で勝負が決まると思う。あっちも飛竜部隊とソフィー、チー君のおかげで終わりそうだしね。
【プロミネンス】
【ホワイトアウト】
二つの絶級魔法がぶつかった瞬間、プロミネンスがホワイトアウトを飲み込み、そのまま後ろの戦艦まで燃やし尽くした。というか高熱すぎてドロドロに溶けてる。
「そっちも終わったようだな。勝鬨を上げようじゃないか」
そのタイミングでソフィ―とチー君がこちらに歩いてきた。そちらを見れば覚醒者の戦艦が完全に沈んでいた。
「うん。皆!勝鬨を上げろ!!!」
ウォォォォォォォォォォォォォ!!!!!
僕の初めての戦争は完全勝利で幕を下ろした。
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その後飛竜部隊はすぐに空母へ帰還し、他の海兵達も休憩タイムに入った。
戦争は戦争だからね。皆死ぬ気で来てくれたんだ。感謝してもしきれないよ。
「ロイド総帥、お疲れ様でした。海にプカプカ浮かんでる敵兵共はどうします?」
「フローレンス大将もお疲れ様。あの人たち亜人嫌いだから拾わなくていいよ。団長もエルフだしね」
「お気遣いありがとうございます。あー、海の魔物達が群がってますね」
「あー、戦艦沈んじゃったからね。魔物除けの魔導具も海の底か」
「覚醒者の魔力量は膨大なので、ヤバいのが寄ってきたら大変ですね」
「なんか巨大なタコの触腕が覚醒者達を海に引きずり込んでるけど」
「あの大きさだと、恐らくSランクのクラーケンかと思われます」
「帰ろうか」
「ですね」
僕たちは旋回し、直ちに帰還することになった。
「じゃあね。差別主義者諸君」
数十分後
「なぁロイド。あのタコ付いてきてないか?」
「ちょっと待ってね。遠視の魔導具で確認してみる」
魔導具をのぞき込むと、東側遠方の海に超巨大な赤い影を確認した。
「うわぁ、どうしよっか」
僕はフローレンス団長とソフィーの方をチラ見する。
「私の魔力はもうスッカラカンですよ」
「同じく」
すると、甲板で日向ぼっこしていたチー君がのそりと起き上がった。まったく誰に似たんだか。
「もしかしてチー君が追い払ってくれるのかい?」
コクコク
そのまま巨大な体をのそのそと動かしながらチー君は戦艦の船尾へ向かった。僕達も気になったので二人以外の海兵も引き連れながら後を付いて行った。
チー君は十六個の目を細くし、遠くにいるクラーケンを睨んだ。
八頭全員が口を大きく開いたその瞬間
ゴォォォォォ!!!
今までとは明らかに違う威力の破壊光線が放たれた。
八本の光線は海面を裂きながら大海原を突き進み、クラーケンに直撃した。
高い水柱が上がり、それは大きな津波になって艦隊まで押し寄せた。
「手すりに掴まれ!!!」
艦隊は大きく揺れたがそれも直におさまり、特に問題も無く再び進み始めた。
皆口をポカーンと開けて、甲板の方に戻るチー君を見つめた。
「「「「…」」」」
ここでフローレンス団長が開口一番
「あのー、ロイド様。大蛇が始めからアレ撃ってれば終わったんじゃないですかね?」
「う、うん...。アルもそんな事言ってた気がしなくもないっていうか、なんというか...ゴニョゴニョ」
そしてソフィーがニコニコしながら僕の肩にポンと手を置き、耳元で囁いた。
「夜...オシオキな」
「ヒェッ」
その夜、ソフィアに首根っこを掴まれ寝室に引きずり込まれるロイドが目撃されたという。
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