第81話:海戦①
~サイド、カリオス教皇国海軍大将【ハウゼン】~
我が艦隊が海軍基地を出港してから約一ヵ月。
ようやく天龍山脈付近を抜け、帝国北側の海域に侵入することに成功した。目的地はランパード公爵領なので、ここからさらに三週間ほど航海を続けなければならない。この距離の場合、本来ならもっと早く到着するのだが海流の向きが反対なため、かなり日数が掛かってしまう。
だが問題はここからだ。ランパード公爵領へ到達する前にいくつかの大貴族領を通過する必要がある。そのうちの一つがアインズベルク公爵領オストルフだ。他の大貴族家海軍はまだしも、大陸に名を轟かせるアインズベルク公爵家は危険である。
かの【閃光】が乗船していれば少々手こずるだろう。負けることは決してないと断言できるが、ランパード公爵海軍にも【氷華のエリザ】がいる可能性が高いからな。短期間に二人のSSランク冒険者を相手するのは面倒この上ない。まぁ私も複数の優秀な覚醒者を連れて来たから安心だ。
「我が艦隊は世界最強だからな。薄汚い亜人国家など、丸ごと海に沈めてやる」
数時間後
「遠方に数十隻の戦艦を確認!もう一度告げる、西側遠方に所属不明の艦隊を確認!」
私は遠視の魔導具で西側遠方を見る。すると先頭を進む巨大戦艦の船首で、青いマントを羽織った黒髪の若造が仁王立ちしていた。あれが噂のアインズベルク公爵家次期当主【ロイド・フォン・アインズベルク】だな。資料で確認したことがある。他の弟妹と違い、何か特出した才能も無い出来損ないだと載っていたな。これはラッキーかもしれん。
「おい、あれがアインズベルク公爵海軍の艦隊だ。さっさと旋回して横一列に並べ。風向きも海流もあちらの方が有利だ。待った方が効率が良い」
「了解です。全艦旋回して隊列を整えろ!アインズベルク公爵海軍の艦隊を一網打尽にするぞ!」
「まずは先頭の巨大戦艦を狙うように指示を出せ。間合いに入ればただのデカい的だ」
「はっ。先頭の巨大戦艦を狙え!魔導大砲に弾を込めろォ!」
やはり真っすぐ進むことしかできん無能のようだな。この様子だと【閃光】も不在。
そうと決まれば叩き潰すのみ。カリオス神様もそう望んでおられるに違いない。
「そのまま海の藻屑になれ出来損ない共が」
「放てぇ!!!」
ドドドドドドドン!!!!
魔導大砲の砲弾が次々と放たれた。
それらが先頭の巨大戦艦に当たる刹那、私は勝利を確信しニヤリと笑った。
だがその瞬間、若造が叫んだ。
「反射結界、展開!!!」
数百の反射結界が展開され、砲弾を全て跳ね返された。それはもちろん我が艦隊に降り注ぎ、数多の叫び声と共に戦艦を破壊した。
まったく意味がわからん。いや、帝国に≪反射≫持ちがいるのは知っていたが、なぜあの数の結界が張れるんだ?人間業じゃないだろう。そもそも魔導大砲ほど高威力であれば反射できないはずでは?そのために魔導大砲を改造してきたのに。
まさか魔法陣を利用したのか?しかし、固有魔法を魔法陣にするのは非常に困難な事だと母国の研究者達が提唱していた。もし作れたとしても、作った本人か超高位の魔法師でないと発動できないだろう。
私の頭の中に様々な憶測が思い浮かんだが、結局分からず終いだった。
そして、次の指示を出す前に巨大戦艦から魔導大砲が放たれた。
その砲弾はなぜか大きな音を立てながらゆっくりと宙を飛んでいる。
我が海兵達も件の砲弾に注目している。
「なんだ、冷やかしか?」
瞬間、砲弾が閃光のように強く光輝き、私達の目を潰した。
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時を遡る事数分前
「まず【スサノオ】で突っ込めば間違いなく狙い撃ちされるから、この反射の魔法陣を起動してね」
「「「「「「「了解!」」」」」」」
「その後例の閃光弾を撃って敵を怯ませたら、旋回して反撃開始だ」
「「「「「「「はっ」」」」」」」」
「大まかな指揮は任せたよ、【フローレンス】団長」
「はっ。白龍魔法師団団長の名に懸けて」
うちの魔法師達は相変わらず頼もしいね。
今回はアルが趣味で作った反射の魔法陣を最大限に活用するために、白龍魔法師団の皆も連れて来た。今の段階だと、高位の魔法師しか起動できないってアルが言ってたからね。
でもそのうち転移の魔法陣みたいに研究を進めて、誰でも起動できるようにしてくれるみたい。さすが魔法陣オタク。
「あと、覚醒者が出てきたらソフィーとフローレンス団長、チー君の三名を中心に戦ってね」
「わかった」
「わかりました」
コクコク
チー君も八つの頭を上下に揺らして返事をしてくれた。これでもう心配することは無いね。
そして現在
「皆、もう目を開けていい!こちらも旋回し魔導大砲を放て!」
魔導大砲はほとんど戦艦の横に付いているから、いちいち旋回しなきゃいけないんだけど敵の半分以上は失明状態で混乱しているから大丈夫だろうね。アルに貰った閃光弾、恐るべし。
ドドドドドドドン!!!
この砲弾の雨で敵艦隊はほぼ壊滅状態になった。でも強力な覚醒者が隠れている可能性が高いからまだ油断はできない。
その後も砲弾を撃ち続け、すでにほとんどの敵戦艦が海に沈み始めている。
だが最も大きい戦艦の後ろから、小さめの戦艦が出てきた。やっぱり隠れていたようだね。普通の魔法師の魔法だと、今撃ってもここまで届かないけど、覚醒者の魔法なら届きそう。
と考えていると
【炎鳥】
「ソフィ―!!!」
【水龍の咆哮】
炎の鳥と水龍のブレスがぶつかり合い、第二の戦いが始まった。
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