第78話:教皇国潜入②

 俺は異国の香りを楽しみながら、ダラダラと東門へ向かう。

どうでもいいが、ここへ来た感想を述べておこう。

まず一つ目が『なんか白い』で、二つ目が『寒い』である。

半分以上の人々が白い服装をしている上に、全ての建造物も白色なので、新鮮で楽しい。でも料理まで白色だったら嫌だな。食っても味がわからん気がする。

あとカリオス教皇国は、カナン大帝国やアルメリア連邦よりも緯度が高い場所に位置しているので、非常に寒い。でも雪が降っていないだけマシだな。バルクッドは死ぬほど雪が降るからな(エクスが雪だるまを量産)。


本当に今更だが、通貨と言語は大陸共通なので安心してほしい。訛りとかは若干あるけど。

東門付近にある馬車乗り場に到着したので料金を支払い、俺は馬車に乗り込んだ。

皇都行きの特急便なので結構混んでいるが、気にせずに座る。

しかし初めのうちは良かったが、人が乗車してくる度に座るスペースが狭くなっていく。

そして俺は無意識に声を出してしまった。


「せまっ」


すると隣に座っている、魔法師のローブを着た女性冒険者が


「ごめんね、お兄さん。これでもギリギリなの」


「いや、こちらこそすまん。別に誰が悪いわけじゃないからな」


「もしかして初めて?」


「そうだ」


「じゃあ一応教えておくけど、皇都に入る前に厳重な身元検査があるから、今のうちに準備していた方がいいよ」


「そうか、色々教えてくれて悪いな」


「うふふ、冒険者の誼よ」


やっぱり冒険者は良いな。

冒険者として生きていく上で『情報』は命。そのため、割と横の繋がりが重要だったりするのだ。要するにコミュ力が高い奴が多い。話しかけたら結構ノッてくれる。

てなわけで


「皇都に何しに行くんだ?」


「冒険者仲間を探しに行くの。今までソロで活動してきたのだけれど、さすがに厳しくなってきちゃって...。皇都ならメンバー募集してるパーティが多いから」


「なるほどな。不躾で悪いんだが、ランクはいくつなんだ?嫌なら言わなくてもいいぞ」


「Cよ。ちなみに三属性使えるわ」


「おお、奇遇だな。俺も同じだ。てか三属性ってヤバいな。それならたぶん引っ張りダコになると思うぞ。優良株すぎて」


「だといいのだけれど...。というより貴方もCなのね。それと他のパーティメンバーは?」


「今絶賛別行動中なんだ。恐らく今頃、元気に草原を駆け回ってると思う」


「なんか楽しそうなパーティね」


「皆食いしん坊だけどな」


俺は徐に黒馬、ネズミ(親方)、某覚醒者を思い浮かべた。


「ふふふ。私もそんなパーティに入りたいわね」


なんて会話をしながら馬車に揺られること約半日。

ようやく皇都が見えてきた。あの一番デカい建物が大教会だろうな。ここから見えるってどんだけデカいんだよ...


「ふぅ。久々に誰かと冒険者トークができて楽しかったわ。最後に名前だけ教えてくれない?私はロビンよ」


「ユートだ。こちらこそありがとな」


「ええ。じゃあ、またどこかで」


「おう」


といい、馬車を下りた。身元検査所は男女別なので、ロビンとはここでお別れである。

その後身元確認は問題なく完了し、ついに俺は白色の大門を潜った。


===========================================


カリオス教皇国皇都【ヴェラ・ガルシュテラ】にある食堂にて


「美味いな...モグモグ」


そういえばまだ昼飯を食っていなかったので、現在食堂にいる。

これは余談だが、メニューを見てもよく分からんかったので適当に注文した。

普通は『〇〇鳥の煮込み定食』とかだろ?でも全部『ミルサック』だの『バララギ』だの、ジモピーしか知らないような郷土料理しか載っていなかった。

まぁめっちゃ美味いんだけどな、バララギ。


あと奴隷を結構見かけたな。連邦でもたまーに見かけることがあったが、その比じゃなかった。

どうせ『ちょっと怪しいから異端審問』→『証拠不十分だが異端判決』→『奴隷落ち』の流れで奴隷を量産しているんだと思う。ビバ糞国家。


ここの奴隷は黒い民族衣装のようなモノを着ていた。教皇国では白色が神聖視されているので、まぁそういうことだろう。ロビンは良い奴だったから奴隷落ちだけはしてほしくないな。


と、その時

マジックバッグに入れてある通信の魔導具が鳴り始めた。こっちは確か陛下専用のやつだ。

俺は急いで会計を済ませ、食堂を出た。すぐに近くの物陰に入り、光学迷彩を起動。


「アルテです。何かありましたか?」


「仕事中に悪いな。実は先ほど教皇国海軍と思わしき艦隊が、天龍山脈北側の海域に現れたと連絡が入った。それと同時に、ランパード公爵領の海域付近にも敵同盟国の艦隊を確認した」


「マジすか。ランパードに関しては心配ないですけど、教皇国の艦隊がこのまま進んだら、まずオストルフのアインズベルク公爵海軍とぶつかりますね。一応俺帰りましょうか?」


「いや、余もそう思ってフレイヤとロイドに確認をとったのだが、二人とも大丈夫だそうだ。フレイヤなんて、久々の戦争だと張り切っていたぞ。ロイドも自分自身の力を試す良い機会だと言っていたな」


「頼もしいですね」


兄貴が自分だけで戦うと決めたのなら、俺が横入りするのは余計なお世話ってやつだ。


「まったくだ。だが問題は連邦だな。形としては三つ巴の戦いだが、初めは両国ともに帝国を狙ってくるだろう」


「俺もそう思います。うちに仕掛けるなら今が一番いいタイミングですもんね。もし何かあったらすぐに連絡してください。転移のアクセサリーを使って一瞬で帰りますので」


「ああ、わかった。では切るぞ」


「了解です」


ちょっと急いだほうが良さそうだな。

俺は光学迷彩を起動したまま白い屋根を伝い、最短で大教会を目指すことにした。






「教皇って普通大教会にいるよな...じゃあ教会ぶっ壊せば、ついでに死ぬんじゃね?(天才)」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る