第30話:再会
数日後、俺は無事にアルメリア連邦首都【レクセンブルク】に到着した。その日は疲れて寝てしまったので、翌日に重要書類を諜報部の合同基地に届けた。
「よし、暫くのんびりしよう」
「アルテ様、どうせなら冒険者ギルドの依頼を受けてもいいと思いますよ。首都内を変にブラブラしていると逆に怪しまれますし」
「せっかく偽装用の冒険者タグを作って貰ったし、それもアリだな」
この冒険者タグは、オーウェン率いる帝都ギルド本部の奴らが結構本気で作ってくれたので絶対にバレないと断言できる。
「レクセンブルクには何十万人も冒険者がいるからな。まぁ大丈夫だろ」
実際、それは冒険者タグを持っている人数であって現役で活動し生計を立てている者の人数であればもっと絞られる。
この世界の冒険者タグや商人タグは身分証明書としてかなり有効なので、持っている人が多いのだ。
「もしかしてこの冒険者タグって死ぬまで使えるんじゃないか?後でオーウェンに相談してみよう」
アルメリア連邦とカナン大帝国の戦争などアルテの人生にとってはただの序章に過ぎないので、この冒険者タグにはこれからもしっかりと役に立ってもらわなければならない。
「おっちゃん、そのサンドイッチ二つ」
「まいどあり!」
そんなことを考えながら屋台で美味そうなサンドイッチを鉄貨六枚で購入したのであった。
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昼食をとった後、俺は冒険者ギルドに来た。
「やっぱりデカいな本部は」
本部には毎日何万人も訪れるので当たり前の事なのだが、冒険者ギルドの本部というのは世界でも有数の巨大建築物なので毎回圧倒される。
ギルドに入ると、まずは大広間でパーティの勧誘や世間話をしている奴らが目に入る。真っ直ぐ進むと低ランク用の受付があるので、俺は右の階段に登って二階へ進む。冒険者ユートはCランクなので中級者用の受付を利用するためだ。
主に魔物の討伐依頼が貼ってあるクエストボードを眺めていると
「ん?もしかしてユートか!?」
Bランクパーティ【天狼】のディランが声をかけてきた。
「ディランじゃないか。久しぶりだな」
「そうね。一ヶ月ぶりかしら?」
「久しぶりだなユート」
「二人も久しぶりだな」
アリエットとセオドアも声をかけてきた。元気そうで何よりである。
「ユートは討伐依頼を探してるのか?」
「そうだな」
「じゃあ俺たちと同じ依頼を受けようぜ!」
「それも面白そうだな。ちなみに何の討伐依頼なんだ?」
「Bランクのオークジェネラルの討伐依頼よ」
「あぁ。オークの集落を攻めるなら人数が多い方が有利だもんな」
「そういうことよ」
「じゃあ早速手続きしに行こうぜ!ユートも参加するってことでいいんだよな?」
「おう」
というわけで、俺はBランクパーティ天狼と合同で依頼を受けることになった。天狼は依頼を明日受ける予定らしいので、俺もそれに合わせる形だ。
「ちょっと酒場にいって作戦会議しねぇか?」
「「「賛成」」」
一応本部にも酒場が併設されているので、そこへ向かう。四人でテーブルを囲むように座り、作戦会議を始める。
「おそらくアリエットは魔法剣士で、ディランはタンク、それでセオドアは魔法師だろ?三人が何の魔法を使うのかが知りたい」
「見ただけでわかるなんてあなた凄いわね。私は〈風〉の中級よ」
「俺は〈土〉の上級だぜ!」
「俺は〈火・水・風〉の三つ。水が上級で他の二つが中級だ」
「ディラン嘘つくなよ」
「嘘じゃねぇよ!本当だ!」
ぶっちゃけ、ディランが上級まで使えるのにはとても驚いた。魔法というのは魔力操作とイメージ、理解度の三つが必要なのだ。いつも言っているが、その魔法の概念や性質を理解できないやつが多いので上級魔法が使える奴は少ないのである。
「で、ユートは何の魔法が使えるの?」
「一応〈土〉の初級が使えるが、練度が低すぎで戦闘じゃ役に立たない。だから基本は身体強化を駆使して剣で戦っている」
「なんか意外だな!」
「確かにユートは最低でも上級は使えると思っていた」
「それって本当なの?」
「ああ。期待させてすまなかったな。でも剣術は誰にも負けないから、パーティの前衛が一人増えたと思ってくれればいい」
「剣術だけでCランクってそれはそれで凄ぇけどな!」
「期待している」
「俺が天狼に適当に合わせるから、お前たちはいつも通りでいいぞ」
「じゃあそれでお願いね」
次は四人でオークジェネラルの集落の場所や弱点などの情報を整理し、作戦会議は終わった。
「割とすぐに終わってしまったから暇ね」
「少し聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「いいわよ」
「ここの本部にSSランク冒険者がいるだろ?確か≪重力≫持ちの覚醒者」
「確かにいるけど、どんなことが聞きたいの?」
「戦闘スタイルとか」
「私は見たことがないから、知り合いの冒険者から聞いた話でいい?」
「頼む」
「基本的に魔法で相手を潰すらしいわよ。もし潰せなかったら、殴って討伐するらしいわ」
「覚醒者の魔法に耐える奴を殴って討伐できるのか?」
「普通の身体強化と違うって聞いたわね。力も速さも、それに色も違うって。あと、剣術は苦手だけど拳闘士として超一流だって」
「なるほどな。貴重な情報が聞けた。ありがとう」
「目指しているの?」
「ああ。SSランク冒険者になるのが夢なんだ」
「そうだったの。頑張ってね、応援してるわ」
「俺も応援してるぜ!」
「頑張れよ」
「おう」
やっぱりいい奴らだな。俺が剣しか使えないと知っていても、馬鹿にせず応援してくれるとは。こいつ等とはこれからも仲良くしていきたい。まぁ本当は終焉級の魔法が使えるし、SSランク冒険者だし、なんなら覚醒者だけども。
しかも重力持ちとは面識が無さそうだから、もし俺が始末したときにそれがバレてもどうにかなりそうだ。ナイス天狼である。
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翌日の朝、俺たちは首都から結構離れた場所にある森の近くへ向かっていた。
「もうすぐ【叫びの森】ね」
「物騒な名前だよな!」
「なんでそんな名前なんだっけ?」
ここでセオドアが
「この森に生息しているゴブリンやオークはよく人を攫うだろ?生け捕りのまま運ばれて、その時に上げた悲鳴がたまに聞こえるから叫びの森って命名されたんだ」
「最悪だな!」
なんて話しながら進むと、例の森に到着した。
「そろそろ気を引き締めるわよ」
「おう」
俺は返事をし、四方を警戒しながら森に入る。オークの集落はこの森の真ん中を流れる川の上流にあるらしいので、迷わずに進み、数時間後到着した。ちなみに途中でゴブリンに何回か襲われたが、セオドアが魔法で吹き飛ばした。
「到着だな」
「まずは私たちの魔法で一気に数を減らすわよ」
ディランは上級のストーンバレット、セオドアは上級のウォータージャベリン、アリエットは中級のミニサイクロンで攻撃し、俺はそれを眺めていた。
「恐らくあの大きな建物にジェネラルがいるはずだから、出てくる前にもっと数を減らすわよ!」
わらわらとオークが出てきて、その中にはDランクのオークよりも高ランクなオークメイジやオークナイトも混ざっている。ちなみにメイジとオークはCランクである。
ここでディランが
「俺が攻撃を耐えるからアリエットとセオドアはメイジとナイト、ユートが普通のオークに攻撃してくれ!」
俺は通常の身体強化を使い、スルスルとオークの巨体の間をすり抜けながら的確に討伐していく。俺は今までもっと高ランクの魔物の相手をしてきたし、有名な覚醒者を剣術縛りで倒してきたのだ。そのためこんな奴らは俺の目にはほぼ止まって見える上に軽く【星斬り】を振っただけで首が飛ぶ。
すぐに普通のオークを討伐し終えたので、手加減をしながら三人の援護をする。
「ユートやるじゃねぇか!こっちも頼むぜ!」
「おう」
この三人の連携は完璧である。全員結構体力を消耗しているが、まだ傷は一つもない。セオドアは魔力残量をきちんと計算しながら魔法を撃っているし命中率も高い。ディランの防御力もとても高いし、隙を見て放つ上級魔法も結構効いている。
極めつけはアリエットだ。魔法剣士としての質が高すぎる。相手との距離の取り方も上手いし、相手の弱点を狙えている。綺麗な太刀筋で、護りも攻めも得意なようだ。これは魔法剣士の一つの完成系ではないだろうか。
ルーカス、オリビア、リリーの三人が冒険者パーティを組む際に参考になりそうだから、ここでよく観察して帝国に帰ったら教えてやろう。
大体倒し切った後、今更オークジェネラルが怒り心頭な様子で出てきて
「グオォォォォ!!!!」
オークジェネラルとの戦闘が始まった。
「いや、出てくるの遅くね?」
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