第2章【学園入学編】

第15話:帝立魔法騎士学園

そんなこんなで時が経ち


現在エクスに馬車を引いてもらい帝都【アデルハイド】に向かっている。それは数日後に控える学園試験を受けるためだ。


 このカナン大帝国では、十五を迎える子供たちは貴族平民関係無く何処かの学園に入学しなければならない。


ちなみに俺が受けるのはカナン帝立魔法騎士学園という最難関の学園である。我が帝国の貴族達は基本的にここを受験し、落ちたら権力を使って自領の学園に入学するというのが主な流れである。


俺は特待生になるために、何年も前からコツコツと勉強を重ねてきた。科目は魔法学、地理、歴史、算術の四つである。それと実技なのだが魔法と剣術のどちらか得意な方を選択できる。


 俺はどちらでもいいのだが、剣術を選択するということは模擬戦用の木剣を使うと言うことだ。


そんな晴れ舞台で他の剣を使ってしまったら、この【星斬り】という名のヤンデレソードが暴走しかねないので諦めて魔法にしよう。


この数ヶ月間、勉強以外に「解放」の練習を死ぬほどしてきたのだ。


魔臓の中で日々集めている光を無限反射させているので魔力量は実質無限。


魔力を練るスピード、破壊力も超一流。


「光鎧」を使えば防御力も一流。



近距離戦も超一流で、エクスという相棒もいる。


光探知と光学迷彩を使えば探知と隠密も一流だ。


赤外線トラップも仕掛けられるし、赤外線カメラの応用で暗視もできる。


 不安なのは回復くらいだが、マジックバッグに高級回復薬をしこたま入れているので大丈夫だし、エクスがいれば治癒魔法を使ってもらえる。


 もう敵無しのように思えるが、この世界中には俺と同格の「覚醒者」と呼ばれる傑物が何百人といるのだ。


 それに龍とタイマンを張れるSSランク冒険者だって会ったことは無いが何人か存在する。


 そのSSランク冒険者の一人は帝都アデルハイドを拠点にしてるらしいので是非会ってみたいものだ。


 

 要するに、俺なんてまだまだというわけである。


「さて、エクスは全然疲れていないようだがそろそろ飯にするかケイル」


「そうですな。アル様は食いしん坊ですからな」


「いや、それはエクスな」


「ブルル」



とテール草原の大街道を何日も進んだ先にある、アデルハイドまで続く街道の脇に馬車を止め、ケイルがマジックバッグに入れてきた、料理長の飯を皆で食べる。



 普通なら運が悪いと盗賊や魔物の襲撃があったりするのだが、エクスがいるので誰も手を出してこない。


「前から思っていたんだが、うちにあるマジックバックって優秀すぎないか?『空間拡張』と『状態保存』と『自動修復』がついてるだろ?」


「うちの大帝国は昔から民に優しい政治が行われておりますので、母国を愛する覚醒者が多いのでございます」


「なるほど、そういうものの開発に積極的に参加してくれるわけか」


「そうです」


「まぁ、他国に少し流れてしまうのは勿体無いが仕方がないだろうな」


「ですな」


「ブルル」


「アルテ様みたいに、戦闘狂の覚醒者ばっかりじゃないってことですね」


「俺は戦闘狂じゃないぞ」


言い忘れていたが、馬車を引く御者は侯爵軍騎士団中将【マルコ】の倅である【ケビン】である


食事も終わり、しばらく進むと


「見えてきたな」


「懐かしいですな」


「そうか、ケイルは帝都騎士団出身だもんな」


「ええ」



それは我がバルクッドの数倍の面積を誇り、城壁の高さも倍ほどある冗談抜きで大陸最強にして最堅の都市アデルハイドの姿であった。


 巨大な門を潜り、侯爵家別邸へ向かう。


エクスのようなSランクモンスターは高ランク冒険者でも一生に一度見るかみないかというほど。その上うちのエクスは、本に出てくるスレイプニル、別名「深淵馬」と呼ばれるような超希少種族なのだ。


そのため、都市内を進めば固まって動かなくなる者や、気絶する者が続出したのである。


まぁ当の本人というか本馬は毛ほども気にしていないが。




そして




「やぁ。アルテとケイル久しぶりだね」


「おう、兄貴。二年ぶり」


「お久しぶりでございます」


「エクスも話は聞いたよ。進化したらしいね」


「ブルル」


「というか、よくレイが黙ってたね。三年間ここに住むの」


「来る時に泣かれた」


「やっぱりね...」


バルクッドの侯爵邸を出発する直前まで、レイには渋られたのだ。バルクッドに住めと。まぁアデルハイドからバルクッドまでは普通の馬車で一ヶ月はかかるので実質無理なのだが。


前にも説明したが、アインズベルク領はかなり帝都から離れているので「辺境伯」と呼ばれる。


「辺境伯」と呼ばれるように、アインズベルクは昔伯爵家筆頭格だったのだが、多大な功績を上げ続け、つい何百年か前に【フォン】というミドルネームと共に侯爵家に位上げしたのである。辺境伯というのはその時の名残だ。


まさに叩き上げの貴族。


「レイ様は最後、馬車に忍び込んでいるのを発見されアリア様からお説教を受けておりましたな」


「それは...大変だったね」


「まぁ悪い気はしないけどな」


「レイは天使だからね」


「ああ」


と、久しぶりの会話に花を咲かせるシスコンブラザーズと世話焼きジジイを横目に見ながらエクスは溜息を付くのであった




「ブルル...」



===========================================


 試験当日


「よし、じゃあ行こうか」


「なんで兄貴も?」


「だって僕生徒会長だし」


「えっ、聞いてないんだが」


「聞かれてないし」


「それもそうだな」


今日はエクスはお留守番である(他の受験生をビビらせる可能性があるため)


「これ、ちょっとした都市より広いんじゃないか?」


「腐っても帝立だからね〜」


受験会場まで結構歩き、その間



「ロイド様よ!今日も美しいわ!」


「隣にいるのってまさか...」


「『閃光』じゃない?噂は本当だったのね」


「アインズベルクってやっぱヤバいな」



とか言われたのだが気にせずに



「ロイド」


と見知らぬ女性に声をかけられた


「ん?あ、ソフィじゃないか!」


「ロイド、隣にいるのはもしかしてかの有名な『閃光』か?」


「そうだが」


誰だこの人と思いながら返事をすると


「アル、この女性は俺の婚約者の【ソフィア・フォン・ランパード】だよ!」


「へぇ〜。よろしく」


「あぁ、よろしく頼む。気軽にソフィアと呼んでくれ」


「じゃあ俺もアルテと呼んでくれ」



と熱い握手を交わす。その姿を見た時、もしやとは思ったが彼女がアインスベルク侯爵家と対を成す大帝国におけるビッグツーのうちの一つ、ランパード公爵家の三女「ソフィア・フォン・ランパード」か。ランパード公爵家の現当主も女性らしいので、女系一家なのだろう。


 うちとランパード公爵家は分野は別だが代々肩を並べて戦ってきたので、昔からいい関係が築けている。そのため、今回ソフィアが兄貴の婚約者になったのはある意味必然といえよう。


「今日アルテは学園試験を受けにきたんだろう?」


「ああ」


「随分と余裕そうだが」


「余裕だからな」


「...」


と少し黙り込み


「ハッハッハ!!!やはり噂に違わず大胆だな!気に入った!」


「そりゃどうも」


(あんたもな)


「じゃあ、ここら辺で別れようか。アル、試験頑張ってね」


「おう」


===========================================


試験は四科目+魔法実技なので、大体午後の三時くらいに終わった。


少し疲れたが


めちゃくちゃ余裕だった。


筆記試験はケアレスミスが無ければ完璧。魔法実技は、少し張り切って「ロンギヌスの槍」で的を消し飛ばした。


同じ会場に【リリー】がいたので、応援がてら見物していたら〈火〉の上級魔法メテオを放っていたので、文句無しの満点だろう。


「あたしたちは魔法の実技は免除になるでしょうね!」


「そうだな」


「一緒ね!ふふっ」


「ああ」


なんだか嬉しそうだが、友人がいい成績を残せたのは俺も嬉しい。


「おーい!アルテ!リリー!」


ルーカスとオリビアがやってきた


「久しぶりだな二人とも」


「あんたたち久しぶり!」


「久しぶりね」


「久しぶりだな!」


とここでリリーが


「ところで二人とも試験どうだったの?」


「私は筆記試験は高得点が狙えそうで、実技もまぁまぁだったわね」


「俺は筆記試験は普通で、実技はいい感じだったな!」


「そうか」


「リリーは?」


「両方高得点が狙えそうね!」


「よかったわね。で、アルテは?」


「ん?まぁ、ボチボチだな」


「そうか!まぁ元気なら安心だ!」


「そうだな」


しばらく四人で話しながら出口へ向かうと


「あ!そういえば、アルテのお兄様って生徒会長って聞いたんだけど!?」


「ロイド様は実技は普通だけど、座学は研究者が舌を巻くほど凄いらしいわね」


「すげぇな!!」


「自慢の兄だからな」


「というか、あたしたち聞いてなかったんだけど!」


「ん?俺もさっき知ったからな」


「「「えぇ」」」


この兄にして、この弟アリである。





その頃


「ハックション!」


「ん?どうした?ロイド」


「いやぁ、どこかで噂でもされてるのかね」


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