6月19日
何者かに追われていた。
一緒に逃げていた日本語を話すアリッサ・エドワーズに、
「アンジェリーナ・ジョリーとして映画の中に入ったら逃げ切れるわ!この映画たちの中からアンジェリーナ・ジョリーを探して、名前を書いて!」
と、ずらりと映画のサムネイルが並んだ、パソコンの中の紙のようなものを見せられる。アリッサは早々に名前を書き、私にペンを渡してきた。
「アンジェリーナ・ジョリーじゃないとダメよ!」
と、念を押され、何とか沢山のサムネイルからアンジェリーナ・ジョリーを見付ける。その写真に〝アンジェリーナ・ジョリー〟と書こうとしたが、余りにも写真が小さくて名前が書けなかった。辛うじて〝アンジー〟とだけ書いたが、アリッサに
「アンジェリーナ・ジョリーだけど、アンジーじゃないの!何とかなるかしら!?とにかく、映画の中に入って!」
と急かされる。私は、慌ててサムネイルの中に入った。
そこは、近未来の阪急梅田駅だった。私は私のままであった。
電車を使って逃げようと、ホームで待つ。しかし、こんなにも広い駅なのに、到着した電車は小さな二両編成だった。一両が小さく、二人がけの席が両サイドに五席ほどしか無い。絶対にこの電車じゃないだろう、と思っていたが、後ろに並んでいた軍人たちが、「この電車で逃げられますよ」と教えてくれた。
慌てて乗ったが、座席の半分が知的障害者で埋まっていた。辛うじて空いている席は全てその人達の涎にまみれていて、私は重い荷物を持っていたが、とても座る気になれなかった。しかし、軍人たちはみな優しい顔で何も言わずに座っていた。
私は、ああ、何て優しい人達なのだろう、自分が恥ずかしい。そうだ、少しハンカチで拭いてみよう。そしたら座れるかも、と思い拭いてみるが、やはり無理なのだった。
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