7月6日

広いプールのような所に、国籍が様々な成人男女5人、5歳前後の子供達が5人くらい集められる。出口は分からないし、いつそこに来たのかも不明。プールの水は入っておらず、天井は高く壁には蔦が絡まっている。壁に、大小問わずブロックが突出しているところが多々ある。

私は子供達の引率で、プールの授業をしていたのに、気付けばそこにいた。どうしようと皆騒いでいるがどこか冷静で、私を含めここが何なのか、今からどうなるのかうっすら分かっているようだった。

天井の一部が開いて、そこから小さな羽の生えた、小太りの可愛らしい黒人女性が降りてきた。この妖精はこれを仕掛けた者の遣いである、という事が即座に分かる。

「今回さぁ、子供がいるじゃん。ずっと見てたけど私もさすがに辛いよ。どうにかなると思うんだけどなぁ」

と、かなりこちらに同情的である。

プールの床から水がじわじわと湧いてくる。誰か一人だけ、妖精が降りてきた穴から脱出できる。が、かなりの高さを登らなければならないし、その一人が出た途端天井が降りてきて全員潰されて死ぬ。大人達はそれを知っているが、子供達は知らない。どうにか全員が生き残れる方法を探そうと誰も上へ上がらなかった。

水はどんどん溜まり、大人達で子供を順番に抱え空気を吸わせる。壁の突出した部分に空気の溜まり場を見付け、そこで話し合う。

白人男性は突出部分に寝そべり、諦め顔だ。

黒人の男性が、「俺は水泳のインストラクターをやっているし、体力もある。上まで泳いで壁も登れる。行ってみる」と言い出す。皆それに賛成する。もし天井が落ちてきたら、皆で手を繋ごう。子供達を不安にさせてはいけないと大人達で決める。

男性は泳げるところまで上を目指した。水面に出、壁を登ろうと手を掛ける。壁は蔦だらけだが、掴める丈夫な蔦とすぐ外れる偽物の蔦があることを見抜く。そして、どんな姑息な奴が仕組んだのだと憤る。

私も泳げるところまで着いて行き、偽の蔦を払う手伝いをする。暫く登り、これ以上進めないと諦め、私は下で待ってるからと飛び込んだ。すると、見えたのは私が授業をしているプールの床だった。黄色い笑顔マークが書いてある、子供用のプールだ。

戻ったんだ!

と勢いよく水面から顔を上げると、皆揃ってキョトンとしていた。

「ここ、私が教えてるプールだよ!」というと、皆助かったんだ、良かった!と喜び合っていた。

しかし、今まで同じような目に遭った人は皆溺れるか潰されるかして死んでるのに、なぜ今回は無事だったんだろう?と思っていると、教え子の幼女が、やったぁ!と喜びながら私に抱き着いてきて、よろけた私はプールの排水溝に服を吸い込まれた。とてつもない力で、私は咄嗟に叫ぶ事しか出来なかったが、皆が助けてくれて事なきを得た。しかし、一人の少年が烈火の如く怒鳴り、その幼女の腿を打った。私は必死に止め、その少年を突き飛ばす。その時何故か、あれは全てこの少年が仕組んだことだったんだなと理解した。

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