6月18日

北野と山口さん、他一人と廃墟探索に行く。

それは、築年数不明の日本家屋で、お屋敷と言うには少し小さいが、民家と言うには大きな一軒家だ。中は埃まみれで、箪笥など大きな家具はそのままだった。

その家は隠し扉だらけで、壁の不審なところを少しスライドさせたら、何の為に作られたか分からぬ小さな四角い穴があったり、壁を少し押したら空っぽの部屋があったりなどした。

壁をずらすと見えた壁は深緑色で、右下に小さく深そうな穴があった。北野と、「これは何だろう?通気口かな?」と話していると、山口さんが新しい隠し部屋を見つけた。掛け軸が掛けてある壁を押すと出てきた部屋だ。

その部屋は一段と埃っぽく、段ボールなど箱が山積みになっていた。上まで続いているが、先は暗くて見えない。上手くすると登れそうだ。

「登ってみる?いやでも危ないよね」と話していると、山口さんが堰を切ったように話し始めた。

「分かった分かった分かった分かった!これは昭和30年代の家ですよ!今の家と比べると空洞が多いでしょう、現代では無理なんですよ、危ないので!でも昭和30年ならできたんです。これは30年代の家ですよ!」

途端に、私と北野は恐ろしくなった。昭和30年というと、あの恐ろしい事件があった年代だ。そんな時代に家を建てるなんておかしい、と。山口さんは、私の腕を引いて走り始めた。

「このままじゃいけない。危ない。でも大丈夫!見つけたんです、私!お願いすれば大丈夫ですよ!ここに教祖様がいらっしゃいます!」

着いた先は奈落が見える隠し部屋だった。山口さんともう一人の知らない女性は、洋装の人形を挟むように手を繋ぎ、大声で笑い始めた。

「あはは、危ない危ない。一歩でも進むと落ちるところでした!教祖様はいない!」

私と北野は、ゾッとした。山口さんには何が見えているのだろう、と。

余りに恐ろしいので、北野は助けを呼んでくると出て行った。取り残された私は、飼い犬のこまに「怖いよ、そばにいてよ。お前さえいてくれたら怖くないから」と抱きしめようとしたが、こまは愛想なくそっぽを向いた。

「ちぇ。冷たいヤツ!」と言いつつ、私はそっぽを向いたこまの背中に抱きつき、匂いを嗅いだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る