第34話 永劫の絆
同時刻、放課後の生徒会室。中にいる生徒は一人だけ。生徒会書記の一人であり、生徒会の中で唯一の二年生である日輪光は、一人しかいない生徒会室の中で資料の整理をしていた。
その時、ガララッと扉が開く音が聞こえて光が振り返った。
「こんにちは」
そこにいたのは綺心だった。
「おや? 最近姿を現さないと噂の二年生のプリンス、伝田綺心様じゃん」
光がふざけたように笑う。綺心は部屋に入って来ると、扉を閉めた。綺心の隣で険しい表情を浮かべるグレイスが飛んでいる。
「もとい、大天使ハニエル」
「こんにちは、四大天使ウリエル」
「私になんの用?」
「君たちが僕のことを探していると聞いたのだけど、違うのかい?」
「半分正解かもね」
光が持っていた資料を机に置いた。
「見つからない方が良かったかも」
「寂しいことを言ってくれるじゃないか」
「君はなにを考えているの? ハニエル」
綺心は不敵な笑みを浮かべているだけだった。
「いいや。君たちは、かな」
「おおよそ、君たちの予想通りだと思うよ」
「じゃあ、どうして私の前に姿を現したの? 消されることはわかっていただろうに」
光が怪訝そうな表情を浮かべる。綺心は少し黙り込んで、口を開いた。
「君を殺すためだ。ウリエル」
綺心の言葉に光が目を見開いた。
「首の名のもとに、大天使ハニエル、ウリエルの決闘をここに宣言する」
次の瞬間、綺心と光は真っ白な空間にいた。呆然と立っている光は、目の前で天使の姿をした綺心を見つめる。光の背中には二対四枚の大きな翼が飛び出していた。
「……どういうつもり?」
「さっき言った通りさ」
「私を殺す? 無理だってわかってるでしょ? 私、四大天使だよ」
「やってみなくちゃわからないだろう?」
「私、あなたを消さなくちゃいけないんだけど」
「出来るものならやってみせておくれよ」
「……」
綺心の目の前に光が現れた。
「その台詞は私の台詞だと思うな‼」
光の拳が綺心に直撃する。綺心はなんとか咄嗟に光の拳を腕で防いだが、その衝撃に耐えられず、後ろに吹っ飛んでいった。グレイシスが「ハニー‼」と叫ぶ。
「シャイン」
「はーい!」
元気な返事と共に、綺心を殴りつけた光の元に現れたのは、大きな耳と尻尾を持ち、クリーム色の毛皮をした、犬のようなエンジェリックだった。瞳は金色で、両腕が大きく、背中から光と同じように二対四枚の翼が生えている。現れたシャインに、グレイシスがギョッとした表情を浮かべた。
「あなたが喧嘩を売ったのは、四大天使ウリエル。神の光だよ。ハニエル」
吹っ飛ばされた綺心が、光から少し離れた所で起き上がる。グレイシスが慌てて綺心の元に飛んでいった。
「私はそういうの大好きだけどね! でも、勝算あるの?」
立ち上がった綺心は光を見て、ニッコリと笑った。
「なさそうに見えるけど」
光の隣で飛んでいたシャインの身体が大きくなり、光の背丈と変わらないぐらいの大きさに変わる。そして、次の瞬間、シャインは綺心の目の前に現れた。
「⁈」
綺心が目の前に現れたシャインに目を見開く。シャインは拳を振り上げていた。グレイシスが咄嗟に人型に姿を変え、綺心の前に飛び出すと、拳を振り上げているシャインに向かって片手をかざし、シャインの拳を弾いた。
シャインが少しだけのけ反り、その隙に綺心がシャインの前から逃げる。しかし、シャインはすぐに体勢を持ち直し、拳をかまえた。
「邪魔だよぉ!」
シャインがグレイシアに向かって拳を振り下ろす。その瞬間、グレイシスは人型から元の姿に戻り、シャインの拳は小さくなったグレイシスには当たらずに、シャインが「あれ?」と間抜けな声を上げる。
「
シャインの前から逃げた綺心の目の前に、雷が降った。綺心が思わず立ち止まる。
「ねぇ! どうするの? ハニエル!」
光は心なしか楽しそうだ。逃げる綺心を追いかけて、次々と雷が落ちてくる。綺心は逃げまどい、翼で飛び上がった。
その綺心の真後ろに、まるで瞬間移動したかのような速さで現れたのは、シャインだ。
「ハニー‼」
グレイシスが叫び、綺心が振り返る。シャインは拳を振り上げ、綺心を叩き落そうとしていた。
「
綺心の瞳が青く光り、シャインの拳が光る。綺心が素早くシャインに片手をかざすと、シャインの拳が弾かれた。弾かれたシャインがのけ反り、綺心が素早く逃げようとしたその時、光が現れた。光は容赦なく拳を振り下ろし、避けきれなかった綺心が地面に叩き落される。落下した綺心に、グレイシスが慌てて飛んでいった。
「……う……」
「君らしくないよね。勝てる算段もないのに挑んでくるなんて」
綺心の元に飛んでいったグレイシスを、唐突に現れたシャインが殴りつけ、グレイシスが吹っ飛んでいく。地面に倒れた綺心の前に、光が降り立った。
「いったいなにを考えてたの?」
光が倒れた綺心を見下ろして不敵な笑みを浮かべる。綺心はシャインに吹っ飛ばされ、遠くで倒れているグレイシスをチラリと見て、光を見た。
「現在進行形で考えているんだよ」
次の瞬間、光の目の前にいたはずの綺心の姿が消え、光の前にグレイシスが現れた。光が目を見開き、先ほどまでグレイシスが倒れていた場所を見る。そこには、フラフラと立ち上がろうとしている綺心の姿があった。
「……いったい……」
「僕は」
立ち上がった綺心が光を見て笑った。
「勝ちを確信しているさ」
光が一瞬で綺心の目の前に現れ、拳をかまえる。すでにボロボロで、逃げることしかできないはずの綺心は、ただ不敵に笑みを浮かべて、自分に振り下ろされる光の拳を見ていた。
「
次の瞬間、光の目の前に羽衣が現れた。羽衣の拳は桃色の炎を纏い、その炎を放つ寸前で、光が唐突に現れた羽衣に目を見開く。羽衣も目の前に現れた光に驚いているようだった。
「
炎の獅子が放たれる。唐突なことに避けることも叶わなかった光は、放たれた燃え盛る獅子に襲われ悲鳴を上げた。
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