第4話 自己紹介をする。


「ええっと!!」

私はお腹から大きな声を出した。

聞いて欲しい。というように。


「私は、月宮かぐや。入学式の次の日に転入なんて変だなと思うだろうけれど、よろしくお願いします。」


私はなるべく笑顔でそう言った。

しばらくの沈黙の後、教室から拍手が起こった。

私が姫になると騙された時の拍手よりは小さいが、なんだか今の方が嬉しかったりした。


「はい、じゃあかぐやちゃんの席はあそこよ。えーっと、太陽くん!!後で学校案内してちょうだいね!」


「うぃー」


た、太陽!?あの太陽と同じかしら……??

私の胸が大きく鳴った。鼓動が早くなって、自然と頬が赤くなっていってしまう。


私は平然を装って、先生に促されたままに太陽の隣の席に着く。


「あ、貴方さっきの!!!」

今初めて気付いたように言ってみた。

自分だけ意識してたら恥ずかしいからだ。


「お、かぐやだ。同じクラスじゃん!よろしくな」

太陽は白い歯を見せて大きく笑う為、こっちまでつられて笑顔になってしまう。

「こちらこそ、よろしく頼むわ。」

私も、太陽に負けないくらい大きな笑顔でそう言った。


「さぁ、1校時は自己紹介から始めます。出席番号1番から、順番に前に出て話してね。」


先生は手をぱんっと叩いて言った。

出席番号1番だと思われる人が、「えぇー……」と小さく声を漏らし、わざとらしく嫌だということを態度に出しながら教卓まで歩いた。


そして、気だるげな声でボソボソと話し始める。


「えーっと、西中から来ました、青木優斗っす。よろしく。」

パチパチ……とまたしても拍手が起こる。

それにしても猫背だな、と思いながら私も拍手をした。


次々に人が自己紹介をして、拍手をして、を繰り返し、遂に私の番になった。


私は1番の人のように猫背にならないように、背をピンッと伸ばして、先生が教室にはいる時のように堂々と教卓まで歩いた


……が、その時。

「かぐやちゃんはさっき言ったから大丈夫よぉ!」

と先生が言った。


私はその瞬間、顔がカァァァっと熱くなり今にも爆発しそうだった。

穴があったら入りたいとはこの事だろうなと思った。


「す、すいません……」

私が先生に向かってペコペコと頭を下げてると、教室からドッと笑いが起こった。


「あははは!謙虚すぎ!」「かぐやちゃん可愛い〜」

「それな!思った!女子から見ても超可愛い!!」

「面白〜!」


笑って貰えたのは嬉しかったが、どうすれば良いのか分からずにオドオドしていると、誰かが背中をトントンと突っついた。

「誰?」と私が振り返ると、太陽が片手を口の横に置き、コソコソとなにかを話していた。


笑い声のせいで聞こえなかったから、私はもう1回!と人差し指を立てて、顔を太陽に近付けた。


太陽は1回笑って、もういちど喋りだした。

「どんまいどんまいw」

私は、それだけ!?と思い、太陽の真似をして手を口の横に置いて言った。

「それだけなの!?ふふふっ笑」

私が堪えきれずに笑うと、太陽も一緒にブフォッと吹き出して2人でクラスに混じって笑った。


やっぱり太陽の笑った顔は綺麗で素敵だ。

私は、また頬が赤くなった。でも、それは恥ずかしくなかった。太陽も、顔が赤かったから。


少しの間笑っていると、先生がまたぱんぱんっと手を叩き、クラスの笑いを静めた。


「はい、面白かったけどそこまで!次!!太陽くん!!」

「あ、はいー」

太陽は立って椅子をしまい、教卓までてくてくと歩く。太陽がちらっとこっちを見た瞬間に、私は頑張れ!とガッツポーズをした。

太陽は親指を立ててニッと笑った。


「えーと、太陽です。東中から来ました、よろしくお願いしますー!」

太陽は礼儀良くお辞儀をして、また席に戻る。

皆同じことをしているはずなのに、何故か太陽の時だけは愛おしく思える。

……ほんとになんなのだろうか、この気持ち。


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