第3話 クラスメイトに会う。


校舎に入って、地図の通りに職員室に向かう。

タナカセンセイ……センセイってなんだろうか。


立ち止まって兎がくれた本を開く。

ペラペラとページを捲ると、途中に"先生について"というのを見つけた。


「……学業を教えてくださるニンゲン…敬うようにしてください。へぇー、なるほどね。」


私はうんうんと頷いた。

その時、前から人がドンッとぶつかってきた。

「わっ、」

私はいきなりの衝撃で、地面に尻もちを着いてしまった。

「ごめんなさいっ、私周りを見てなかったわ…」

スカートをはたきながら、立ち上がる。

ぶつかった人の顔が見当たらない、私は上を見あげた。男の子だ……黙ってこっちをまじまじと見ている。

「お前、誰だ、しらねぇな……」

「なっ…だ、だって私、今日から転入してきたに、ニンゲンなのよ!!」

「転入ってw昨日入学式だぞ?1年だろ?上履きの色も……って!ローファーで校舎入ってくんなよ!!!」

「う、上履き……??」

初めて聞く言葉に私が動揺していると、背の高い男の子が説明してくれた。

「下駄箱で履き替えるんだよ、着いてこい」

「そうなのね……」

私はその上履きが本に書いてなかったことに対して、プンプンしながら男の子の後について行った。


「そういえばお前、どこから来たんだ?」

「………わ、私!?」

「お前に話しかける以外誰に話しかけんだよw」

「た、確かに………w」

思わずふふっと笑いをこぼすと、男の子も笑ってくれた。

「貴方、名前はなんて言うの?」

「俺は赤城太陽。お前は?」

「私は星河かぐやよ。」

「へぇ、あのかぐや姫みたいだな。見た目も似てる気が……」

「……それってどういう意味??私があの顔に似てるとでも?」

かぐや姫に似てると言われるのはもう聞きたくないのだ。お母様から散々聞いた。もうわかったから、言わないで欲しい。


私だってできることならもっと違う顔で産まれたかったのに。


私が頬を膨らまし、「フンッ」と鼻息を出した。

「お前豚みてぇだなww顔は綺麗なのに……ほら。」

男の子、太陽は何食わぬ顔で私の顎を軽く掴んで自分の顔に寄せる。

自分の顔が赤くなっていくのがわかる。

「豚って……失礼ねっ!」

私は恥ずかしくなって、顔を逸らした。

「わっ、なんだよ見てたのに……それにしても整ってるよな。うちの学校にはいねぇぞ、こんな美形。」


よくそんなことを恥ずかしがらずに言えるよな、と思う。私だって、ひいお祖母様に似ていて美人、とはよく言われていたけれど、私自身を見て綺麗だ。と言われたのは初めてだった。


余計に、顔が熱くなってきた。

自分だけ言われて恥ずかしくなって、なんだか不服だった。

「あ、貴方も人の事言えないわよ。」

恥ずかしさを隠しきれず、顔を手で覆いながら言った。

「え、ガチか??あ、ありがとな……」

顔を隠していたので表情は見れなかったが、少し戸惑ったような声をしていたため、やった、と思った。


そんなこんなしているうちに、もう下駄箱に着いていた。

「これだよ、これを履くんだよ。」

太陽は私の名前が書いてある下駄箱を開けて言った。

「へぇ、これが上履きって言うのね。」

「かぐや、お前中学とか行かなかったのかよ?」

「あ、ま、まぁそんなとこね。」

中学が何か分からなかったため、適当に流した。


「そうだ、一校時目教室で自己紹介すんだよ。お前何組だ??」

「あ!そ、そうだ!私職員室に行く途中だったわ!!その、イチコウジとやらが始まるのは何時??」

「8時45分だけど……」

「ありがとう!私まだ何組か分からないのよ!!センセイに会ってないから!!同じ組だと良いわね!また会いましょ!」


私は焦って走り出した。

まだいるかなと思ってちらっと振り返ると、呆然と太陽がこっちを見ていた。

私は、「またね!」という意味を込めて笑いながら手を振った。


太陽は、ハッとしたように笑って手を振り返してくれた。


また、顔が赤くなっていく。

こんな気持ちになるのは初めてだ。病気、なのだろうか……?


それよりも時間が余りない。

急いで来た道を戻る。


階段をのぼり、職員室に着いた。

ドアに張り紙がしてある。月で学んできた地上の言葉を、一生懸命に読んだ。

2回ドアをノックして、「失礼します」と言った。


「あら?転入生のかぐやちゃんじゃないの。一人で来たの?どうしたの?」

私が次の言葉を発する前に、私の担任のセンセイとやらが来てくれた。

「自分のクラスが分からないわ……あと、教室はどこかしら?」

「私すっかり忘れてた。貴方をクラスのみんなに紹介しないといけないのに…!!ごめんね、さぁ行くわよ!」

私は先生に手を引かれて、職員室を見た。

他の先生がチラチラとこっちを見ている。恥ずかしくってまた顔を先生の方に向けた。


「先生の名前はなんて言うの?」

「私?私は田中 舞蝶よ。こんな名前だから昔はアゲハ蝶なんて呼ばれてたわ……懐かしい。」

「私は先生の名前、素敵だと思うわ。誇っていいことよ、名前が素敵だなんて羨ましいわ」


「あら、嬉しいことを言ってくれるのね、ありがとう。かぐやちゃん。さあ着いたわよ。あなたのクラスは1年C組。きっとみんな待っているわ。入りましょう。」

先生は堂々と教室のドアを開け、黒板の前に立ち、みんなに「静かに〜!」と声をかけ、私に手招きをした。

私は恐る恐る、教室へと進む。緊張していて1歩1歩が小さかった。

遂にクラスメイトの顔が見えるところまで入ってしまった。私は辺りをキョロキョロと見回し、先生の横に立った。

先生は私にニコッと笑いかけ、みんなの方に向き直った。

「みんな、昨日も言ったと思うけど、転入生が来たわよ!!かぐやちゃん、自己紹介、出来る?」

「え、えぇ、できるわ。」

私は緊張しながらも、自己紹介を始めた。










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