ヨーコーのアイリス
この世界にも昔『神』がいたらしい
聖王国第3の都市ヨーコー
冒険者たちの拠点及び、商人たちの中継地として王都とは趣の違う活況を呈するこの街。
聖王国の『聖』たる由縁も王族が神の子孫だとかなんだとか。
それが本当なのか嘘なのか一般市民である私たちに知る由もなし知る気もなし。
そこそこいい治世を敷く今の王様にとりあえず大きな不満も無く過ごしてる私たち。
まあ税金とか税金とか文句言いたいことはあるけど,言って変わるもんでもなし。
なんてことをそこそこ客が入ってきている食堂兼酒場『熊と女豹亭』改め『麗しのアイリス亭』
のカウンター横で赤毛の髪をいじりつつ注文待ちする派手な給仕服(メイド服とも言う)の中の一人が私。
親馬鹿が暴走してそこそこ名が通ってた店名を店の営業形態事変えてしまった、その被害者ことアイリスが私。
まあ救いといっては何だが”麗しの”の名にかろうじて恥じない見た目に育ったことか。
いや、自分で言うのもなんだがこの店では人気ナンバーワン、言い寄ってくる男は星の数、いや言い過ぎました両手に余るほど。
そんなわけでモテモテ人生と思いきや…
旧店名の「熊」こと我が父、もとA級冒険者(S級は国家仕事が多くなるから辞退したと嘯く)いつでも現役で大丈夫といわれる親馬鹿父が
「娘と付き合いたければ俺を倒してからに云々」
そんな訳で言い寄ってきた男はすべてが父に阻まれ、それでもあきらめない男達はいまだに店に来てくれている。
おかげさまで今日も店は盛況だ。
いや、店の盛況は自分だけが原因ではもちろん無く、おいしい食事と酒を適度な価格で提供しているからなわけだが。
いろいろ言ってはいるがいまだにまともな恋もしたことが無いアイリスは思う。
もし父の壁を乗り越えた男がいたとして、その人に私が惹かれることは無いのではないか。
なぜだろう?心の奥底にいるもう一人の自分が誰かが来るのを待ってる
なんて口に出すのも恥ずかしい乙女な気持ちがあるのである。
なので「私目当てに来てくれてる男たちよごめんよっ」てなことを常々思ってはいた。
が、今この時、その男たちとその他の男たち、果ては女の子までがこちらを一切見ず、入ってきた栗色の髪の少女に釘付けになっていた。
身長は平均的、しかし足が長くスタイル抜群。
肩より短めのサラサラの髪の毛は笑顔とともに快活な印象をかもしだしている。
軽装の防具とショートソード、軽めのバックパックから近くの町から来た冒険者だろうと推測するが…
近くの町にこれだけの美人がいたら評判になってるだろうに。
と思っていたら二度目続けて三度目の衝撃。
美しい黒髪の清楚な顔立ちの美少女、そしてそれに見合わぬ身の丈ほどの大剣を背中に背負っている。、
華やかな栗毛の少女とは違い静かで凜とした、少し近寄りがたい雰囲気ではあるがそれが高嶺の花的なものを感じさせる。
そしてもう一人ゆるやかなウェーブのかかった淡い金色の髪。
前の二人より少し年上だろうか、身長も一番高い、優しげな笑顔の下で豊かな胸が揺れている。
神官職だろうか、まさしく女神のような雰囲気である。
もう店内は静まり返っている。
この店ナンバーワンなどとうぬぼれてた私、確信、負け確ってやつ。
いや仕事仕事、他の子たちは見ほれてなのか注文を取りに行かないから私が行かねば。
その四人組は奥のテーブル席に座った。
ん?四人組?よく見ると男の人も一人一緒にいる。
店内にこれだけ人数がいるのに気づいたのは数人しかいないのではと思うほど存在感が無い。
まあ残りの三人の存在感が強すぎるせいなのかもしれないが。
身長は男性だけあって一番高いが驚くほど普通。
装備も普通の冒険者。
顔も良く見れば整ってはいるが騒がれるほどでもないだろう。
その時である私の心の奥底で誰かが叫んだ「この人!」
それとほぼ同時にさっき入ってきた栗色の髪の少女が私を指差し声を上げた。
「ほら、あの子だよ!」
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