第五話 もう一人の学級委員
テスト開始から10分が経過し点が入る。
俺は15点、雷と改空と空は5点。
「積雪、お前今何点?」
「5点」
「ギリギリだったな」
「他に誰がいた?」
「え?」
「俺達は四人だった、ならあそこにも、
「えっとー、もろ」
「その発言は
「「!」」
俺達しかいない筈の空が作った『空間』。
そこに突然現れた男。
右手に大きめのゴム印を持っている男。
我らが一年二組のもう一人の学級委員、
彼は今、俺達の目の前に立っている。
なぜここにいる。
空の顔が困惑を浮かべる。
「解除出来ない」
「それは……ここから出られないということか!」
「
改空は手を挙げた。
認承は改空を指差す。
「
「ここに六人は狭く、お互い戦いずらいと思う」
「……たしかにそうだ。では、
認承はゴム印を床に押した。
その瞬間、『空間』は無くなり、俺達は元の灰色で正方形の部屋に戻ってきた。
床は濡れていて、雪が溶けたようだ。
周りには三人、俺達を見ている。
「門さん、この前はお見舞いありがとな」
「いえ、元気そうで良かったです」
「そこ喋るな!」
世風が口を挟んでくる。
「うるせえ! 世風」
「発言は
周囲が静まるのを待ち、認承は口を開く。
「対等に、私の能力は『承認』。私に『影響を与える力、物』はすべからく、私の『承認を得なければならない』、そして『承認』の有無はこの『ゴム印が押されたもの』とする」
よく見ると門の体に薄く紅色の枠に囲まれた朱色というマークが浮かんでいた。
「エロ本みたいだよね」
俺の耳元で実に的を射た事を透は囁いた。
「急に喋るな、透、認承が話してるだろ」
俺は耳を抑えながら、透に注意した。
それとお前、登場して第一声、それだぞ。
「その通りだ!」
「うるせえ世風」
「はいはい」
積雪は手を挙げる。
「
「今の
本当に素直だな、こいつは。
それに対して、透も手を挙げる。
「
「ありがとうございます」
更に改空が手を挙げる。
お前もボケるのか?
「
「この手を挙げて話すの非効率的なので辞めません?」
よく言った、効率厨。
俺は称賛の意を込めて拍手を送る。
すると、つられて皆も拍手をした。
「賛成多数により、
そう意味でやったわけじゃないが、結果良し。
「あと、聞きたいことが」
「なんだ」
「なにしに来たんですか?」
「……なにしたい?」
「?」
「私はただ私が
「戦うとかは?」
「私はそのことに興味がない、だが」
認承は雷の方を向く。
「同じ学級委員として、彼女の実力には興味がある」
雷と認承は超近距離で向かい合う。
「
認承は雷の体にゴム印を押す。
「あと、全力で戦いたい?」
「もちろん」
「なら、積雪の能力を
「そうか、魔見積雪、来てくれ」
認承は積雪の体にもゴム印を押した。
「離れましょう、皆さん」
「最適だ」
俺達は二人から離れ、壁に体を預ける。
「なに、敬語使ってんだよ、むっつり」
俺は世風を見上げて言う。
「そんなことない」
「皆、これ貰ってください」
門は俺達にカードを配った。
「このカード」
これには何も書いてない。
と思ったら、JOKERという字が浮かび上がった。
「字が浮かんだ」
「これ、多分触った人の能力名が浮かび上がるんです」
門、カードの謎が解けて嬉しそうだ。
「なるほどなぁ」
じゃあ、俺の能力はJOKERなのか。
「そうだ、空、『空間』出してくれ?」
「良いけど、どうしたの?」
「能力、試してみたいんだ。けどあの二人の邪魔になったら、嫌だからよ」
「分かった、どうぞ」
空が指した所にドアノブが出来る。
俺はドアノブを捻り、『空間』に入る。
それと同時に轟音が響いた。
「よし」
アプリで能力を強制起動する。
「来い!」
何も……ない?
せっかく構えたのに、損した気分だ。
「きゃあ」
すると、目の前に突然女の子が現れた。
体勢を崩し、背中から倒れようとしていた。
「危ねぇな」
俺は女の子をこっちに抱き寄せ受け止める。
「大丈夫か、
「はいぃ!」
胸の大きさで予想して言ったが的中した。
「なんでここに」
俺は亜生を下ろしながら聞いた。
「知らないですよ、急にここに」
「そうか」
どういう能力なんだ、俺の能力は?
『雷』なら『雷になる』能力。
『空間』なら『空間を作る』能力。
『改行』とか『承認』とかは分かりにくいが、ある程度能力名から連想できる能力になっている。
俺の能力名はJOKER……『切り札』としよう。
切り札から人を呼ぶ能力を連想できるか?
JOKERから連想するなら大富豪とか七並べから別の能力になる能力とか。
あとは大体のゲームで一番強いから一番強くなる能力。
「あのー、黙られると困るんですけど」
「あ、すまん。お前の能力なに?」
「えっと、枝切さんには特別ですよ?」
「いいから話せ」
「Counterfeit……『贋作』です。能力は」
「まって、当てるから」
「ふざけないでください」
「見たものの模造品を作る」
「そうです、私は『認識した物の
「ふーん」
『贋作』かぁ。
今、いるかぁ?
こいつがいたとこで何が出来るのか。
あ。
「はは」
自分でも笑っちゃったよ。
こういう悪知恵にはやけに頭が回るな、俺。
「外出るぞ」
「は、はい」
「どんな感じ?」
ドアを少し開けて、側に居た空に声を掛けた。
「やばいね、かなり」
「出てこい」
「おはようございます! 亜生さん」
「うっせ、世風」
「彼女はどうしたんだ?」
「能力使ったら来た」
「そうか」
改空は何気なく答えた。
もう驚かないか。
俺は亜生を引っ張り出し、『空間』から出る。
積雪のサポートで自由に動き回る雷に完全に対応し受け切る認承。
さっそく俺の悪知恵を実行しよう。
「亜生、あの認承が持ってるやつ、作れるか?」
認承は亜生を認識していない、なら『承認』の判定には入らないはず。
「えーと、ゴム印ですね。出来ます!」
亜生は自慢気な表情を浮かべながら、右手にゴム印の『贋作』を創り出す。
「よし、これで勝つ」
「言っておきますけど、一度使ったら壊れますからね」
「分かった」
俺はまず俺達を囲む6つの壁をよく見た。
予想通り、壁にも朱色のマークが浮かんでいる。
いや、床と天井にはマークが無い。おそらく影響が無いからだろう。
だがそれ以外の壁は認承にとって『影響を与える物』だからな。
認承が背を向けているあの壁にしよう。
「積雪、俺の居るとこの湿度を増やせ」
「う、うん」
俺はその壁に向かう。
ゴム印で認承の能力を解除する。
そしたら雷が認承をブッ飛ばして、認承は壁をすり抜けて、隣の床に激突。
あの高さだし……死なないよな。
よし、ここから。
「認承! 俺の能力は相手の能力を消す能力だ!」
俺は右手に持った『贋作』のゴム印を左手で隠しながら言い放つ。
「何!?」
「今、この壁のマークを消した!」
まだ押して無いけど。
「!」
「隙あり!」
雷が認承をこちらへ蹴飛ばす。
認承は壁にゴム印を向ける。
認承はゴム印を壁に押した。
壁からマークが消える。
「!」
認承は戦いで凹んだ所に足を引っ掛ける。
「お前の能力は消してない」
ていうか、俺は
「なんだとぉ!」
「もっかい押したらどうだ」
どちらかといえばその方が痛くないと思う。
「もういっちょおぉ!!」
そんなことをしてる間に雷の蹴りが認承の背中に決まる。
認承は壁をすり抜けた。
というか、雷が穴を開けたのでそこから落ちた。
「雷、あいつのスマートウォッチに結果打ち込んでこい」
「分かった」
雷は能力を使い隣の部屋に行く。
すぐに雷は穴から顔を出し、親指を立ててサムズアップした。
これで雷の点数は15点。
「それ結局使わなかったですね」
亜生は『贋作』のゴム印を指した。
「いや、これは持ってるだけで効果がある。認承の能力はこれを使う、これで
「えっとぉ……つまり?」
「これで、認承は能力を使えないってことだ」
「でもそれ、私達も使えないですよね」
あ。
「あ」
「あって」
「協力者になれば、いらないよ〜、
透が俺と亜生の間から口を挟む。
「認承くんが分かりやすくするために押しただけだから」
「じゃあ、亜生、協力するか」
「はい! 私、頑張ります!」
亜生は強く返事した。
「私も良いかな?」
「私も〜」
それに続いて、門と透も声を上げた。
世風は姿を消していた。
あいつは正々堂々やるタイプだし、俺のことは嫌いだろうから、去ったのだろう。
どうやって去ったかは分からないがひとまず置いておこう。
「良いな? 皆」
「僕は良いよ」
「俺も問題ない」
「私は大歓迎」
「僕は或人に従うぜ」
これで協力者は八人。
そうだな……俺:2、僕:2、私:4かぁ。
分かりにくいから、次は一人称私以外が良いな。
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