第三十八話 Shadow Running Through The City

「終わったの?」

屋上から戻ってきた関崎に手を振るレオニダス。

関崎は近くの席に座る。

周りの隊長達は関崎を見つめ、言葉を求める。

「……あいつは九代目総隊長だ」

その言葉に場はドッと明るくなる。

「ナハハハハハハハハ、そりゃあ良かった」

「関崎が言うなら良いけどよ」

「レオ、もう納得しろよ」

「してるわボケェ!」

「お前らに頼みがある」

関崎は頭を下げる。

「あいつに俺たちの罪を背負わせないでくれ」

「……分かってるよ」

「それに、黒武さんの代で終わらせるって言ってましたよ、黒武さんが」

「そうか、ありがとな!」

「それにしても、あいつすげぇよな」

「六代目総隊長?」

「ああ、カゲロウを作って本人は自殺、あいつのせいで人生狂ったやつは数知れず」

「俺たちもその一人だな」

「「ハハハハハ」」

 走はスマホで地図を見ながら、歩いていた。

「ここを真っ直ぐ? 曲がるのか?」

スマホの光が暗くなる。

充電が減っているのを表すサインだ。

「早く帰らないと」

スマホの地図を頼りに、走は駆け出す。

「……」

その時、走の体が違和感を感知する。

「いる……」

 「なあ、なんでカゲロウはまだ出るんだよ」

関崎は黒武を見る。

「もう死んだんでしょ? ねぇぇ黒武さぁぁん」

酔ったアニペが黒武の体をグワングワン揺らす。

「それは、『烏の血』だ」

「そぉうなんですか? 溥西」

「ああ、まだ詳しくは分かってないが、日本の漫画風に言うなら……『烏の血』とカゲロウは惹かれ合うって感じだ」

 「さっきのお店辺りに居る……」

走はお店付近のカゲロウを捉え、跳ぶ。

電柱を蹴って、ビルの壁を蹴って、さっき関崎と話した屋上に到達する。

「ギャラギャラ」

「ギャラスの、血!」

「この二人がリーダーで良いのかな?」

「下、コワせ!」

百を超えるカゲロウが積み上がり、ビルが揺れる。

「足りない、僕だけじゃ……」

走はカゲロウを何十体も切るが、終わる気配は無い。

「ああ~ピサかこれは?」

イタリア代表ヴェネト州支部隊長ジョット・マルコ・ガリレイが屋上に来た。

「危ない!」

倒れたカゲロウが上から襲う。

「『放電』」

走は落ちてくるカゲロウを切り裂く。

「カゲロウね、理解した。それと走」

「は、はい」

「今のは放電を使わなくても大丈夫だ」

「はい」

腰のホルスターから銃を抜き、カゲロウを撃ち落としながら、走の立ち回りを観察するジョット。

「手」

リーダー格のカゲロウの声に反応して、カゲロウ達は姿を変える。

「走、放電は出来るか」

「まだです」

「そうか、作戦はこうだ、俺の弾丸でこのデカブツの核までの道を作る。そこから突っ込んで切ろ!」

走はジョットの作戦にこくりと頷く。

ジョットは核の位置を見ながら発射のタイミングを見計らう。

「今だ!」

ダンという音が響き、走は地面を蹴り、カゲロウの穴に突入する。

「……はあ!」

カゲロウの身体が風船のように膨れ上がり爆発する。

「やりましたね」

「怯んだな」

「へ」

「まだ放電が出来ないからと、怯んだな。確かに放電なら間合い以上の範囲を攻撃出来る」

「すいません……」

「いいか、走、俺はお前を総隊長とは、認めない……! 次また会うときまでにそれを直せ」

ジョットは走を睨みながら屋上を出る。

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