第2話・俺の楽しみ

 長い尻尾をるんるんと揺らし、喜びを表す。

 今日は我が家に1人である。

 変なでかいアイツは【シゴト】とかいうのに言ったらしい。

 暗い顔をしていたのできっと病院くらい地獄な場所なのだろう。

 たまに、

「社畜は嫌だあああああああ!!」

 と叫んでいる。

 そしてそのまま部屋を駆け回るのだ。

 ウンコハイみたいなものだろうか。


 さて、まずは何をするかな。

 くわぁと一つあくびをする。ふとカーテンが目に入る。

 登りたい、本能がそう言った。

 でかいアイツは俺をそうそう叱らない。ご飯をつまみ食いしても、ティッシュをぐちゃぐちゃにしても、頭を抱えてうずくまるだけである。

 叱られないし、いっか。


 バリバリバリ...


 バリバリバリバリ...


 登って、飛び降りて、ひっかいて。

 何度も何度も繰り返していると、カーテンはビリビリになった。

 ...やりすぎたな。

 少し反省していたものの、お腹が空きだした。

 そろそろご飯マシーンからカリカリが出てくるな。

 そう思っていると、やっぱりキッチンからカラカラと音が鳴った。

 ご飯だ!

 急いでマシーンの元へ向かう。

 無我夢中でカリカリを食べるも、すぐにカリカリは無くなってしまう。

 まだ食べたりない...。


 俺はご飯の在処を知っていた。

 しょうがないよな。お腹空いたんだから。

 もっと用意しないアイツが悪い。


 前足を器用に使って戸棚を開ける。

 袋を発見。

 さぁ、爪の出番だ。バリバリと袋を引き裂くと、いい匂いが充満した。

 お腹がいっぱいになった所で、少し昼寝をしよう。いつもは飛び乗るとすぐ降ろされるテーブル。今日ならゆっくり昼寝が出来る。


 ガタッ


 コポポポ...


 ...やばい。

 非常にまずい。

 アイツが大事にしている花の花瓶を倒してしまった。

 水が零れ落ちる。...花も床に落ちた。

 ...焦りと共に、眠気が襲う。

 まぁええか、こんな花より俺が大事な筈だ。

 よし、たくさん寝て、帰ってきたら詫びの印に腹を撫でさせてやろう。

 うん、そうしよう。





 ガチャ

「ははっ...お仕事楽しい~! 仕事やめたい!! 僕仕事大好き!!」

 やっと仕事が終わった自分は、リビングへ続くドアを開け、膝を付いた。

 頭を抱えた。うずくまった。


 ぐちゃぐちゃの部屋のド真ん中で、可愛い顔して腹を出している我が愛しの愛猫、プリンがいたからだ。


 このカオスな光景を見て、こう叫んだ。


「プリンうああああああああああああああああああ!!!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

色々まぜまぜ短編集 アントロ @yanaseyanagi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ