第14話 二種類の魔法

「リュウコ! 無事か?!」


 ミヤコはリュウコが竜を追って走っていった方向に叫びながら走っていた。今回はそこまで派手に暴れ回っていないのか、もう戦闘が終わっているのか、戦闘音がしない。つまりリュウコがどこにいるか分からないのだ。


「ミヤコー! 攻撃力強化だけちょうだい!」


 前方右側からリュウコの声がした。その声を頼りに距離と位置を予測して言われた通りの魔法を飛ばす。


 遠くで断末魔と何か重いものが地面に落ちる音がした。


「ミヤコー! こっちこっち」


 予想通りの方角でリュウコが呼び声を上げてを振っている。よく見ると、竜は倒された後で首と胴も分かれていた。


 周囲は酷い有様で血まみれ、そして木々が焦げた跡がある。こちらの中型の竜も炎竜だったようだ。


 ようやくリュウコの元に辿り着いたミヤコは安堵のため息をつく。


「無事みたいだな。にしても随分派手にやったな」


「私の腕力だけじゃ一発で首ぶった斬れないからね。今日はアンタがいるから来るまで耐久戦してたのよ。燃やされそうになった木は水魔法で止めたんだけど、あたし強化魔法は使えないから」


 魔法は大きく分けると二種類ある。一つは自身の魔力を使う魔法。こちらは強化魔法が当てはまる。


 もう一つは周囲の精霊の力を借りる魔法だ。こちらには水魔法や薬草の効果を使う治癒魔法などが当てはまる。


「いい加減覚えろよ」


「無理。何度やっても感覚が掴めない」


 リュウコは精霊の力を借りる魔法は使えるが、自身の魔力のみを使った魔法は使えないのだ。


 今までミヤコに感覚をどうにか言語化してもらっても、ミヤコにリュウコの魔力を操ってもらっても感覚が分からず、習得することができなかった。結局どうやってもできなかった。


 本人も一発に限らなければ強化魔法無しでも竜を倒せる手段を持っているから、今のいままでなあなあになって使えないままできてしまったのだ。


「この話はまたいつか。それより、トイの方はどうなった? まさかアンタがついてて死んだとか言わないよね?」


「胸元に一発鉤爪を喰らったけど、治癒魔法で今は落ち着いて向こうで今は休んでる。竜も倒した。本人も寝てていいですかとか言ってたし、まだ余裕あるだろ」


「そう。最初は動けてなさそうだったけど、新人にしては上出来じゃないの」


「俺と一緒のこと言うなよ。恥ずかしい」


「何よ、いいでしょ。同じこと思ったんなら、今日のトイは上出来だったってこと。さ、トイを回収して依頼元の村まで行こ。もう一人の怪我人も気になるし、早く言って村人たちを安心させてあげなくちゃ」


「そうだな」


 リュウコとミヤコは、竜を運搬するための作業に入った。


 狩ったドラゴンは捌いて売りに出したり、肉は村の食料にしたりする。特に炎竜は鱗に耐火性があるから防具へと加工できるため値がつく。


 竜を持ち帰るのは村人たちを安心させるだけでなく、お金がない村が依頼料を払えるようにするために必要なのだ。こうして、何か問題があった時にすぐに竜狩りを呼んでもらえるような仕組みが出来上がっている。

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竜とリュウコと擬似終末 大和詩依 @kituneneko

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