第29話 集結する仲間
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残り時間――6時間29分
残りデストラップ――7個
残り生存者――9名
死亡者――2名
重体によるゲーム参加不能者――2名
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視線の先に瓜生と円城の姿を見つけた二人は、声を上げながら駆け寄って行った。
だが瓜生の足の怪我を見て、スオウはすぐに顔を曇らせた。
「瓜生さん、その足の怪我は――」
「地震の揺れのときにドジって、落ちてきたガラスにやられちまってな。まあとにかく、君らが来てくれて助かったよ」
「瓜生さんはそう言ってるけど、自分の身を挺して、この子を助けたんだよ」
スオウと瓜生の会話に、円城が横から入ってきて説明をする。
円城の言葉に促されるようして、スオウは廊下に横たわる愛莉の姿を見つめた。事前に紫人からのメールで愛莉のことは承知していたが、実際に自分の目で確認すると、非常に危険な状態であると見て取れた。
「おれたち、瓜生さんに言われた通り、五階で待機しているつもりだったんですが、さっきの地震で事情が変わったと思って、瓜生さんを探しに来たんです」
「君たち二人の判断は間違ってないぜ。現に、俺たちはこれからどうしようか迷っていたところだからな。それで五階の状況はどうなんだ? さっきの地震の影響はなかったのか?」
「五十嵐さんが落下してきたテレビにぶつかって怪我をしましたが、重い傷じゃないです。今も五階は五十嵐さんに任せてきましたから」
スオウに代わってイツカが説明をしてくれる。
「そうか、それなら良かった。五十嵐さんも二人を見守るぐらいは出来るだろうからな」
「瓜生さん、これからどうするつもりなんですか? 何か策はあるんですか?」
廊下に膝を突いて愛莉の様子を見ていたスオウは問うように瓜生の顔を見つめた。
「それなんだけどな、ひとつだけあるにはあるんだ」
「えっ、名案があるんですか?」
「昔からある取って置きの策だよ」
「瓜生さん、それってまさか――」
「ああ、『三十六計逃げるに如かず』ってやつだよ。つまり、ここから逃げ出すのさ」
瓜生がいたずらっぽい表情で全員の顔を見回した。
「でも瓜生さん、最初のデストラップのときに、この病院から出たらダメだって言いませんでした?」
「たしかにそう言ったけどな。でも、あのときと今とでは状況が確実に変化している。この病棟が崩れないという保障があるならば、ここに残ってゲームを続けてもいいが、あの大きな揺れの後じゃ、そうも言ってられないだろう。病棟の下敷きになって全員死亡でゲーム終了ってことになったら、それこそ悔いが残るからな」
「瓜生さん、実はぼくも同じことを考えていたんです」
スオウは瓜生と同じ結論にたどり着いたことがうれしくなった。
「なら話は早いな。病院が倒壊する前に、我々は外へ避難するとしよう。ゲームのことを考えるのは、それからでいいさ。ただ逃げる前に、みんなにやってもらいたいことが二つあるんだ。俺はなんとか歩けるが、この子はそういうわけにはいかない」
瓜生の視線が愛莉に向けられる。
「そこでだ、担架か車イスを探してきて欲しい。それと、もうひとつやってもらいたいことが、五階にいる参加者に報告して、一緒に逃げる準備をしてもらいたいんだ」
「たしか三階にリハビリ科があったはずです。そこなら車イスが置いてあるんじゃないかな?」
イツカが何やら思い出すように小首をかしげた。
「そいつはちょうどいい。イツカちゃん、頼めるかい?」
「それなら、おれとイツカで取りに行ってきますよ!」
スオウは自ら名乗り出た。
「よし、車イスは二人に任せた。五階への伝言は――」
「そういうことならば、私が行こう」
円城が一歩前に進み出る。
「円城さん、くれぐれもミネさんのことを頼みます」
イツカがミネのことをさっそく気遣う。
「分かったよ。ミネさんもちゃんと連れてくるから」
「これで役割分担は決まりだな。俺はそこの診察室で、この子のことを看ていることにする」
瓜生が横たわる愛莉の背中に手を回して、抱きかかえようとする。足の傷が痛むのか、思うように持ち上げられない。
「おれも手伝いますよ」
スオウは瓜生を手伝って愛莉を一緒に抱え上げた。愛莉の口から、うっという小さい声が漏れる。
「痛いのは分かるが、少しだけ我慢してくれよな」
瓜生が優しい口調で愛莉に語りかける。
スオウと瓜生とで、愛莉を廊下のすぐ先にある外来の診察室までゆっくりと運び入れる。中にはベッドがあった。地震のせいか、シーツの上に粉塵が大量に落ちている。イツカが率先してベッドをキレイにしてくれる。
「それじゃ、寝かせるぜ」
瓜生の声を合図にして、愛莉をベッドに寝かせた。
「じゃ、ぼくとイツカは車イスを探しに行ってきます」
「私も途中まで一緒に行こう」
スオウ、イツカ、円城が廊下に出て行こうとすると、瓜生が声をかけてきた。
「分かっていると思うが、三人ともデストラップには気を付けろよ」
「分かってます」
「スオウくんが付いているから大丈夫ですよ」
「ああ、分かった」
三者三様に答えて、診察室を出た。
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