――――――――――――――――

　残り時間――９時間２３分　　

　残りデストラップ――９個

　残り生存者――１０名　　　　　

　死亡者――２名　　　

　重体によるゲーム参加不能者――１名

　――――――――――――――――

「オレは棄権するぜ。作戦会議でもなんでも、そっちで勝手にやってくれ」

　ヒロトは誰にも視線を合わせることなく投げやりな感じで言った。ヒロキ同様に相変わらず非協力的だ。

「あ、あの……ぼくは……その、皆さんの意見に……従いますので……」

　自主性がまったく感じられない解答を出したのは瑛斗である。

「オッケー。そういうことならば賛成多数で作戦会議を開くということで決定だな。――それじゃ、さっそくだが何か案がある者はいるか？」

「はい……ゴホッ、ゴボ……ちょっと、いいかな……」

　円城が咳交じりの声をあげた。

「私が思うにデストラップにかかった人間は、みなこのホールから出た後で罠に掛かっている。最初の奥月さん、その後のミネさん、そして九鬼さんしかり」

「つまりどういうことかな？」

「つまり、参加者全員でこのホールにいた方が安全じゃないかと思ってね」

「実は俺もそれは考えていた。もちろん、いつまでもここが安全という保障はないが、無闇に院内を出歩くよりは安全じゃないかと踏んでいる」

「そうですよね。ぼくも皆でここにいた方が安全だと思います」

　五十嵐が円城の意見に相乗りする。

「けっ、なんだよそれ。作戦にもなってねえじゃんかよ」

　難癖をつけてきたのはヒロキである。

「女性陣はどうかな？」

　瓜生はヒロキを無視して会議を進めていく。

「アタシはそれでいいよ。だって、ここから動くのダルいしね」

　なんとも愛莉らしい返事だった。

「わたしも大丈夫よ。それにどのみち、ミネさんがこの状態のままだと、ここを動くわけにはいかないからちょうどいいし」

「おれもイツカと同じです」

「三人とも分かった。薫子さんは――聞いていないみたいだから、まあいいか」

　瓜生は一度薫子の顔を確認してから、そう皆に言った。

「それじゃ、今から全員このホールで待機だ。同時に、デストラップの前兆を見逃さないようにお互いに注意しよう」

「おい、ちょっと待てよ。勝手に決めんなよ！」

　ヒロキが抗議する。

「たしかついさっきお構いなくとか言ってなかったか？」

「そんなこたあ、いいんだよ！　そもそも全員の意見が一致してねえだろうが！」

「それを言うなら、そもそも会議を拒否したお前には関係ない話だろう？」

「おう、言うじゃねえかよ」

　ヒロキがその場で立ち上がった。今にも瓜生に殴りかかってきそうな雰囲気である。

「お前は本当にこの状況が理解出来ないようだな。今この瞬間にデストラップの前兆が現れたらどうすんだ？」

　瓜生がヒロキの機先を制して言う。

「うっ……」

　途端に口篭もるヒロキ。

「クソがっ！　だったら、そのテレビを今すぐ消せよ！」

「テレビ？　テレビは今は関係ないだろう？」

「はあ？　それぐらいも分かんねえのかよ？　テレビの音がうるさいと、デストラップの前兆が分からなくなっちまうだろうが！」

「だったら少し音量を下げればいいだけだろ。さっきも言ったと思うが、テレビでデストラップの前兆が放送される場合があると分かった以上、テレビは消せないな」

「だったら勝手にしやがれ！　これ以上お前たちには付き合ってられねえよ！」

　ヒロキは立ち上がると、座っていたイスを腹立たし気に蹴りつけた。ホール内にイスが転がるけたたましい音が響く。

「いやあああーーーーっ！」

　薫子が悲鳴じみた声をあげて、両手でお腹周りを庇うようにする。

「こんなことぐらいで騒いでんじゃねえよ！　さっきからずっとビクつきやがって目障りなんだよ！」

「おい、それ以上その人を責めるのはやめるんだ！」

　瓜生がすぐに二人の間に割って入る。

「どうやら本当にお前とは協力出来そうにないみたいだな」

「ふんっ、それはこっちのセリフだ！」

　ヒロキはそう吐き捨てると、背中を向けてホールから出て行こうとした。

　そのとき、テレビのニュース映像が切り替わった。

『番組の途中ですが、ここで臨時ニュースをお伝えします。今日夕方、市内で起きた逃走事件の続報をお送りします。現在逃走中の犯人について、詳細な情報が入りました。護送車両から逃走した男は市内に住む和嶋（わじま）ヒロユキ、２１歳。逃走時の服装は白のジャージの上下。髪型は金髪の短髪です。逃走中に交番を襲い、勤務中の警官から銃を奪って発砲しています。現在、市内全域に検問が敷かれています。近所にお住みの皆さんは、出来るだけ不要不急の外出は避けて、家の中に留まるようにして下さい。もしも逃走犯らしき人間を見かけた場合は、落ち着いて速やかに警察まで――』