第137話 チーム周防対ブレボス、決着
『ブレボス……母の無念を晴らして……あのにっくき女を……』
ブレボスはなぜか、亡くなった母の遺言を思い出していた。
帝王軍に入った理由、それは母と自分が捨てられたきっかけになった人間の女を殺す事。そしてブレボス個人としては帝王の首も狙っていた。
捨てた息子に殺されるなんて無様にも程がある。始末した後笑い飛ばしてやる、そう思っていた。
だが、帝王と再会した瞬間無理と悟った。次元が違う。
目が合っただけで殺されると思った……
その後腐るように兵として働いていた時、腹違いの弟である帝王六騎衆のベバルとアルスに、特徴などで自分が兄とバレた。
……殺されるか? バカにされるか? いろいろと頭の中をネガティブなことが駆け巡った。
――しかし、そのどれでもなかった。
『初めて会えたな。ブレ
『いいじゃんそれ。ボクもそう呼ぼうかな~ブレ兄?』
意外すぎた。
才能に溢れ、帝王カオスの息子として認められた弟二人が自分を受け入れたのだ。捨てられた無能な
母が亡くなってからは孤独に生きてきた。帝王とその妻の人間を殺すことだけを目的として生きてきた。
……そんな自分を弟二人は事情を知らないとはいえ受け入れた。
ただ、腹違いの兄でしかない自分を。
とてもからかってるような素振りには見えない。
本心から、自分を受け入れてくれてるとわかった。
ブレボスは嬉しかった。
その後も、頻繁に二人はブレボスを気にかけてくれていた。
そして、七つの大罪人の傲慢に選ばれた時には……
『傲慢ってルシファーの力でしょ? 陛下はブレ兄ぃを認めてくれたんじゃ?』
アルスがそう言った。
息子だとは帝王に言ってはいなかった。だが気づき、傲慢の力を授けてくれたのなら……
嬉しくて仕方なかった。
偉大な父に認めてもらえたから。二人の弟は祝福してくれた。
今や帝王軍は……大事な居場所になっていた。
二人の弟と生まれたばかりの妹、そして……父、帝王のために……
ブレボスは負けるわけにはいかなかった。
♢
(何を考えてるオレは! 弱気になっているのか!? 能力が破られたから!? ふざけるな! 勝つのはオレだ!)
縁起でもなく、過去の出来事と想いが頭をよぎっていた。
能力を破られ心中穏やかではないのだろう。
だが、それでもブレボスのほうが有利。
周防は半死半生、他の連中は有象無象。周防さえ気にしていれば負けることなどないのだから……と、ブレボスは思っていた。
ブレボスは自らの影を見る。
周防の鎌で影を引き裂かれた時、ダメージが自分にはいった。
故に、影への攻撃も警戒する必要ができたわけだ。
切られた部分の影はなくなっている。となると、影への攻撃には回数制限があるのかも。
とはいえ、その回数内で殺される可能性もあるため、それについては考える必要はないと判断。
(周防は影から影への移動も可能……故に神出鬼没。オレの影以外にも気を回すのが面倒だな)
周防からも、もちろん目は離せない。――だが、
「いいか! 小生達は周防のおっさんのサポートだ! 壁になって身を隠させたり、盾となるんだぜ!」
「「おお!」」
そうなるとダスト含む、兵隊達の存在がブレボスにとって厄介になる。
人数が多い故に視界の邪魔になって仕方ない。
ならばこいつらから始末……
「――!?」
背後の木々からできた影から周防が出現! そして鎌を回収すると同時に、ブレボスに切りかかる周防。
すかさずコウモリを投擲し、ガード。
「撃て!」
ダストの投げ槍、兵隊達の銃が放たれた。ちなみに銃もダストの作った代物で、弾丸を魔力にして放てる。
守る事に集中すると言っておいた矢先に援護射撃。完全に裏をかいてる。
ブレボスにはとるに足らない攻撃。しかし、意識が削がれる。周防から目を反らすわけにはいかないのに、これは痛手としか言えない。
コウモリを周囲に展開させ、兵隊達からの攻撃は、コウモリに任せようとする。
「
ダストは獄炎の魔力に包まれた大槍を投擲! ダストの
さすがに大槍の一撃はコウモリの一匹やそこらでは防ぎきれない。コウモリの盾をかき消し、ブレボスの背後を襲う。
「ちぃ!」
コウモリを一点集中させ、槍を包み込んで……爆発させた。
それにより大槍は砕け、ブレボスに当たることはなかった……が!
「スキを見せたな?」
周防の鎌がブレボスの影をとらえる。複数回の鎌による斬撃が唸る。
「ごはっ!?」
重い、致命的なダメージを受けるブレボス。
血しぶきが舞い、胸に巨大な切り傷が複数浮かび上がる。
だがまだ終わらない。
九竜が空から落下しながら戟を振り下ろす。
戟はブレボスの肩を貫き、九竜はブレボスの体に乗り掛かる。
「今です周防さん! トドメを!」
「舐めるなクソ共~!!」
ブレボスはコウモリを千にも達するかのような数を一斉に射出!
コウモリは周囲の天界軍連中を吹き飛ばし、切り裂いていった。
「うわああ!」「キャッ!」「ぐあああ!!」
全員殺すまではできなかったが、自分から距離をとらせる事には成功した。今のうちに周防を殺すと意気込むも……
「いない!? ちぃ! 影に逃げたか!」
九竜に刺された戟を、痛みの声をあげながら肩から抜きとり、握り構える。
自分の影を見ると……先程の連撃のせいか、影が完全になくなっていた。
ブレボスはほくそ笑む。
「フハハ! 影による攻撃をし続けると、影がなくなるのか! となるとオレの影には攻撃も潜む事もできなくなったわけだな!」
「悪いけどね、それは狙ってやったことなんだよ」
どこかに隠れてる周防の声が響く。
「狙ってやったこと……だと?」
「おれの能力で相手の影がなくなった後はな……おれの能力による耐性がなくなるって事なんだ」
「あ、ああ?」
「簡単に言うと、影をなくした相手は次のおれの一撃を……数倍の威力で受ける事になるんだ」
周防の一撃が数倍になる……
ただでさえ自分を傷つけられる攻撃の威力が……増す。
ブレボスは、初めて動揺を見せる。くらえば確実に命を落とす。
それが焦りを生む。
「ふざけるな! 七つの大罪人最強、そして帝王カオスの第一子なるオレが! こんな所で負けるか!」
コウモリをオール展開。
邪魔な兵隊やダスト達は先程の一撃で動けない。ならば警戒するのは周防だけ……
周防の一撃さえ受けなければ負けはない。周防は半死半生、逆にこちらが一撃を加えれば……勝つのはブレボス。
「最強……そう、最強なんだオレは! いずれは最高幹部に登りつめ、帝王軍を背負う未来がオレにはあ、」
「「そんなもの、ねえんですよ」」
ブレボスの全身が突然何かに縛られる。その何かとは、包帯だった。
「なんだこれは!? う、動け……」
たかが包帯に縛られただけ。
なのに、全く身動きがとれない。魔力が吸われるような感覚にも襲われる。
両手両足を完全に縛られ、傀儡のように吊るされて、手足を無防備にされる。
「「これでゲームオーバーですね」」
包帯を手にぶら下げながら現れたのは……♤の
この班のメンバーだったが、今の今まで姿が見えなかった。
……やけに傷だらけでボロボロな姿だった。
何かあったのだろうか?
「か、神咲!? な、なぜだ! き、貴様は……」
驚愕してるブレボス。神咲に何か罠でも仕掛けていたのだろうか? この場にいるはずがないという態度だった。
神咲は冷たく言い放つ。
「これから死ぬ奴に答える必要はねえですよ。周防さん!」
「あいよ」
周防は影から外に出てくる。
そしてゆっくりブレボスの元に寄る。
「終わりだぜ。七つの大罪人」
「ふざけるな! オレが! オレがこんな……貴様らごときゴミ共に! 負けるはずが!」
敗北を受け入れられないブレボス。
周防は現実を突きつける。
「認めなよ。確かにおれ一人じゃ確実に負けてた。でもお前さんが見下してた兵隊のみんなのおかげでこの状況が作られた」
「そんなわけが!」
「お前さんは、おれ達……チーム周防に敗れたんだ」
鎌を天高く振り上げ……全魔力を鎌にそそぐ。
どす黒い魔力に包まれた鎌を、そのまま……振り下ろす。
「
「オレは! まだ死……」
(母上……ベバル……アルス……ち、父上……)
振り下ろされた鎌は、ブレボスを……引き裂いた。
くるくると鎌を回転させた後、地につける。
……勝った。周防は手を震わせながら、今にも倒れそうになる。
ふと、ブレボスの姿を確認する。
「驚いた……大したもんだね」
ブレボスは引き裂かれ、白目を剥きながら絶命している。
なのにその場から崩れ落ちずに、立ったままだった。
今にも上半身と下半身が分かれそうなほど、体を引き裂かれたというのに……
「生きてるおれが、今にも倒れそうなのによ……すごいね。敵ながら……あっぱれだ」
ブレボスの死体に向かい、周防はゆっくりと敬礼した。
その後、神咲に注目する。
「お前さんどこ行ってたんだ? グットタイミングで助かったけども」
「ちょっと誘拐されてましてね。ま、全員始末して戻ってきましたけどね。それにしても周防さん、なんですその様は」
「仕方ないだろ? めちゃくちゃ強かったんだからさ」
「戦いは始まったばかり。根をあげてるひまねーですよ。本隊とかも大変らしーですし」
「そうか……少し休んでから合流しないとな。ここにいるのも危険だしな」
チーム周防、半壊状態になるも死傷者はわずか。そして、七つの大罪人、傲慢ブレボスを討ち取る。
――つづく。
「見事勝利ですね~(パチパチ)今度はどこの視点に飛ぶのでしょうか? 神邏くんが良いですけど~」
「次回 盗賊団グランド。あ、なんかカマセっぽい組織でしたっけ?」
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