第86話  多種多様弾丸  西ヒカリSide

「どう~?ギュンター。殿下の仇見つかった?」


ん?新手?

そうか……九竜と野原がこんなカウボーイ一人にやられるわけないもんね。仲間がいたならわかる。


女……か。二人の女魔族が現れた。こいつらも覇王九衛師団とかいう、覇王軍の幹部なのかな?


一人は目がかくれるほど前髪が長いロングヘアー。目に隈もあり、ダウナー系?っていうような感じのヤバそうな女。


もう一人は……何こいつ露出狂か?両肩丸見えへそだしなのはともかく、胸の大事な部分くらいしか隠せてない、前だけの服。

下半身もパンツだけみたいな…変態かよ。

まあペタンコだから、脱げたりはしないのかしら?


同じ女としては…見るに耐えないわね。恥ずかしい奴。


ただまあ二人ともかわいらしい女の子…ではあるけど、人間にしか見えないね。魔族…なのよね?


「あれ?人質……」


人質だった九竜と野原はこっちに解放済みよ。残念だったわね。


「プッ。なに取られてんの~ギュンター。ダッサ~」


口に手をあてケラケラ笑ってる。ただ仲間の失態に笑うだけか。

別に人質はどうでもよかったみたいね。

ただそうなると、普通に戦っても私達に勝てるとふんでるのかしら?もしそうなら、なめられたものね。


「手~、貸そうか?」

「キャハハ。それがいいよ!」


女二人にばかにされつつも、カウボーイ、ギュンターとかいう奴は首をふる。


「いらん心配さあ。とりあえず、この背の高い小僧仕留めて、仇討ちも一人でしてみせるぜ」

「背の高い小僧……?」


ダウナー女は北山くんの姿を確認する……と、目を見開く。


「あれー?北山っちじゃん」


え?なに、顔見知り?名前知ってるなんて…


対し、北山くんは口をあんぐりさせて驚いていた。


皆木みなき……叶羽かなう?」


名を呼んだ以上、互いに顔見知りよね?…誰かしらね?

北山くんと知り合いってことは…人間?


…魔界に人間が迷い込んでしまうことはある。

でも、そんな理由で魔界にいるとは思えない。魔界に存在する軍に属してるわけだからね…


「なんでお前……こんなとこに?三年ぶり…くらいか?急に転校したと思ったら、」

「あー悪いけど~北山くん、話することなんてないんだよね~。どうしても聞きたいなら腕ずくでどうぞ~」


三年?転校?

なんの話かわからないけど……確か神くんは天界の学園で一年ほど修行、そして二年前記憶を失ったはず…


二年と一年、足すと三年なわけだけど……まさかなにか関係あったりするのかしらね…


「無駄話してるひまねえだろ?まずてめえが相手するんだろ?このギュンター様のよ」


カウボーイハットを上に上げ、銃をくるくる回す。


「まあいいや。じゃあちゃんと話してもらうからな、後で!」


北山くんはユニコーンの生成した杖を手から出現させる。


「どこからでもかかって…」

「わかったよ」


ギュンターは言い終わる前に2丁拳銃から弾を発射!

だが反応し、泡みたいなものが杖から飛び出し、弾を包み込んで止めてみせた。


「こ、この野郎!速ええだろうが!」

「なに言ってんだ?遊びじゃねえんだ。わざわざ撃ちますよ、なんて合図すると思ってんのか?」

「そ、それは……」


敵だけど、奴の言う通りだね。

北山くんはゲームかなにかと勘違いしてるんじゃないだろうね?


戦いなんだ。正々堂々なんて甘い考えは捨てたほうがいい。


反応できたからよかったけどさ。


「アドバイスしてやるよ。油断するのは戦いじゃあ命取りだぜ?まあすでに油断してるみてえだけどね」

「なに!?」


泡で包んでいる弾丸が、突然爆発するかのように弾け飛ぶ!

破片が北山くんを襲う。


「うがっ!」


飛び散った破片は北山くんの顔の皮膚を少し裂き、手や足に一部突き刺さる。


「いってえ……だがなんのこれしき!大したことねえよ!」

「そうか。次の弾丸も撃った後なんだがねえ」

「え、」


地中から、弾丸が飛び出して北山の肩を貫く。スーパーボールくらいの小さな穴が空き、血が飛び散る。


「ぐっ、」

「ほらほらまだまだ!」


ギュンターはさらに追撃の銃弾を放つ。

北山くんは痛みをこらえながら、すかさず大きな泡を作り出し、自らを守る壁を建設。


「甘い!甘いねえ!」


放たれた弾丸は地面に発射されていた。

そして跳ねるようにバウンドする。ボールみたいに。

その勢いそのままに、建設した壁を飛び越えて、北山くんに向かってくる。


跳弾ってやつか……


落下してくる跳弾を受け、今度は手や腕を貫かれる。


「うがあああ!!」

多種多様弾丸カラフルライフルだっけ?ギュンターの能力〜。いつ見ても〜面白いねえ」


皆木が頬杖ついて言った。


「いろんな特殊効果を持つ弾丸を放つ事のできる能力だっけ?」

「そ〜そ〜。どんくらいの種類あるのかは知らないけどね」


仲間の連中が、勝手に能力バラし始めてる。


「おいおい。何、人の能力話してんだ。まあ、こんな小僧にバレても問題ねえけどねえ…」

「んだと…」

「ほら!今度は見えない弾丸だぜ!」


その発言に驚いた北山くんは見えない弾丸に警戒して、泡を前方に……

しかし、地中から弾丸が飛び出して、またも北山くんの肩に直撃。


「があ!」

「バーカ。騙されてんじゃねえよ」

「ぐっ…嘘かよ」


……敵の言う事鵜呑みにするんじゃないわよまったく。

押されてるし…助けないとまずいかな?

もう少しだけ様子見てみるけど。


「弱いねえ君。このまま蜂の巣にしてやろうか?」

「くっ、な、舐めてんじゃ、ねえ!」


ギュンターがすかさず発砲一一

弾が見えない……?

ということは見えない弾丸が使えるって事は嘘ではなかったわけか。


「一一たく、だらしねえ奴だな」


南城が炎を放ち、見えない弾丸を焼き尽くし、北山くんを守った。

てか危なかったかもね…私もつい戦いに見入ってて助けるって頭なかったわ。

南城グッジョブ。


「あとはオレ様がやる。下がってろ」


そう言って、南城は前に出る。


「まっ……!くっ」


北山くんは今何か反論しようとしてた。…でも以外にも引き下がる。


珍しいわね。この子があっさりと譲るなんて。


北山くんはとぼとぼ歩いて、地に座り込む。

…そして、拳を叩きつけ悔しさをあらわにする。


自分じゃどうあっても勝てないと思い知ったのかもね。それがとてつもなく悔しかった。


私は北山くんの近くによる。


「情けねえ…オレ、こんな弱かったのかよ…修行したのによ」

「仕方ないわ。相手は魔界で切磋琢磨してる魔族。君たちが今まで闘ってきた相手とはレベルが違う」


……まあそれでも魔界の魔族の中では下のほうだろうけどね。このことは黙っておくけど。よけい傷つくかもしれないし。


「慰められても、みじめになるだけだ。よしてくれよ…」


別に慰めてもないんだけどね。まあそっとしといたほうがいいかな?


そう私が思ってると須和も近寄ってきて、


「自分の力量がわかり、素直に下がる心がけは立派だよ。相手の力もわかっての判断、大丈夫……それができるなら君もまだ強くなれる」


へえ……須和ってこういう気遣いできる子だったのね。知らなかった。


唇を、強く噛みしめる北山くん。少し血が出てる。噛みすぎだってば。


ホント負けず嫌いなのね。


「ようやく出てきやがったかい。殿下の仇」


ギュンターはカウボーイハットをクイッと上に上げる。


「そんな部下に慕われるような奴には見えなかったから仇討ちしてくるのがいるとは思わなかったな。ま、安心しろ。同じあの世に送ってやるからよ」


軽い挑発のジャブ。


「慕ってたわけじゃねえよ?覇王陛下の命令ってだけさ。ただあの世行きはあんさんだけどね」


少し眉が動いたくらいで、さほど挑発に乗ってはこなかったね。


ギュンターは二丁拳銃を構え……

ボン、と爆発音。

拳銃が燃えて吹き飛んだのだ。


小さい火の玉をすかさず投げ、ギュンターの銃を燃やして見せたみたい。

結構な早業だね。ギュンターは反応できなかったみたいだし。


「て、てめえ……」


手が少し火傷してる。


「北山圧倒したくらいで調子にのるんじゃねえよ。天界軍、上位ランカーのオレ様を舐めるなよ。一瞬で終わらせてやる」



つづく。


「残念。北山くんは負けちゃいましたね。侮るからですよまったく」


「次回 上位ランカー お次は南城さんですね~果たして…」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る