第85話 ユニコーン再び 西ヒカリside
※今回は四聖獣白虎、西ヒカリ視点です。他の四聖獣視点がこれからたまにあります。
ーーベイルのアジト内。
私は神くん達の修行の見物したりするだけで暇をもて余してた。
で、ネイルアートでもしてたわけなんだけど……
「西将軍」
なによもう…邪魔しないでほしいな。忙しいのに。
……さっき暇もて余してたって言ったけどね。ゲームでも持ってくればよかったかな?
話しかけてきたのは…須和か。
凹凸ない貧相なスタイルの女ランカー。階級は……なんだったっけ?上位だとは思うけど。
年齢は神くん達よりは少し上。天界軍の若手ホープでクソ真面目、いや堅物ってとこかな?そういうとこは九竜と似てるよね。
九竜より強いけど、もっとめんどくさい子なんだけどね。
無視すんのも感じ悪いか……しょうがない。
「…なあに?」
「いえ、将軍は鍛えないのかとおもって」
「汗流すの嫌いだし、私はほら、四将軍だからさ」
「最高戦力なのは百も承知です。でも今回の相手……帝王軍は四将軍でも容易な相手ではないはずでは?」
……まあその通りなんだけどね〜。
部隊長程度すらこの前仕留め損なう失態してるしね。これからの戦いを思うと先が思いやられるよ。
「わかってるよそれくらい…」
「なら鍛えるなり、我々に稽古つけてくれるなりしてくれるべきではないでしょうか?」
「……気がのらないの」
「四将軍ともあろうかたが何を!…上官ではありますが、言わせてもらいます!」
私を殴りかねないような剣幕で詰め寄ってくる。…めんどくさ。
「将軍は立場を理解していらっしゃらない!最高戦力なのに軍の活動もろくにしないで、学校の教師なんてして!」
「ちょっとちょっと、教師バカにしてんの?よくないな」
「違いますよ!本来の活動を無下にしてるから言ってるんです!朱雀を贔屓して彼を見守るなんて、都合のいい言い訳して人間界でぬくぬくと……」
「…今回は参加してるじゃない」
「それは!」
本当めんどくさ……
うるさいから仕方ないな。
私は席を立つ。
「修行、すればいいの?ならするわ。稽古はベイルがやってるからいいでしょ?」
「……」
なんかまだ何か言いたそうね、まったく。
とはいえ私もいつまでもダラダラしてる気はないけどね。
神くんの助けにならないといけないわけだし、帝王軍とはどうしてもやり合うことになる。今のままじゃ幹部連中に勝てるとも思えない。
つってもここんところ頭打ちなのよね。
修行してもあまり強くなれない。
……強くなる一番の方法はやっぱ、四聖獣の力の解放かなあ?
四聖獣は段階を踏んで初めてその力を発揮することができる。そこが他の聖獣との違い。
第一段階の時点ではただ、四聖獣になっただけにすぎない。まあ潜在的な力を少し解放できるらしいけど。
第二段階は能力の会得と力の僅かな解放。神くんは今ここね。
第三段階、もう一つの能力と力の半分解放。私と…多分玄武や東くんもこの境地についてるはず。
……そして第四段階。
四神転身…四聖獣の力の顕現だとか言われてるけどよくは分からない。
ただ、今までの比ではないパワーアップなのは間違いないと思う。
それができれば六騎衆……いや、帝王カオスにも対抗できるはず、なんだけどねえ。
できる気配がないのよねえ~。鍛えりゃいいって問題でもないだろうし…
ホント頭打ちで困っちゃう。
アジト内の静寂な空気が突如、チリリンと鈴の大きな音が鳴らす。
……これは、アジト近くに誰か侵入してきた合図……
敵?いや野原の可能性も…
彼女には前もってアジトの場所教えてたし。
無事だったって連絡あったしね。
……まあ、念には念を入れて…
「はいはーい!仲間の人だろ?」
一一!!北山くんが自宅のチャイムに答えるかのように入口へ!?
ちょ、何考えてんのあの子は!?
危機管理能力なさすぎでしょ!ここは魔界なのよ!
「北山くん!待っ……」
私の静止は遅く、北山くんはドアを開け、地上へ出てしまう…
仕方ない……
「みんな!敵の可能性あり!ついて来て!」
最低限の言葉で皆を集めた。
声に反応して、近くにいる須和以外に南城と水無瀬もやってくる。
「美波も呼びますか?」
南城の問いかけに私は首をふる。
「神くんの手を煩わせる事もないわ。まだ万全じゃないだろうし…」
そもそも敵の襲来とも限らないしね。それに私がいる事だし、無理して呼ぶ事はないわ。
対し、須和がチラリと見てくる。
なによ。甘いだとか思ってるのかなこの子。
私は気にせず、北山くんを追って外へ出る。
…すると、
北山くんの姿は洞窟の外に見えた。
全員で彼の元へ向かう。
「この野郎!その子離せ!」
北山くんがなにやら叫んでた。
何事かと思ってたけど、近寄って見るとわかる。
カウボーイハット被ったひげ男が北山くんの前にいる。
男は2丁拳銃を二人の女子に構えていた。二人は両手を上げて、座りこまされてる。
この二人の女子は…
「九竜と野原!?」
あちゃー。ここにやってくる時に捕まったのか…ついてない。
なんで九竜もいるのかは知らないけど、奴らにここまで案内させられたのかな?
となるとこいつらは帝王軍?
「いいから要求に答えろよぉ」
要求?
「まず、殿下を殺した赤髪野郎差し出せ」
殿下?なんのことかわからないけど、赤髪といったら南城の事?
そう思ったら、南城が前に出る。
「トーナメントで仕留めたハーベルンの部下か?」
「いやがったな…」
トーナメント…この前の選抜トーナメントの事?そこで南城が倒した奴のことなのかな?
※60、61話参照。
「あいつの手の者ってことは、覇王軍とかいうちんけな組織かお前ら」
「ちんけだとぉ?この野郎…」
…聞いたことある。帝王軍への対抗組織の一つだと。
帝王軍が邪魔なのは私達天界軍と同じはず。それなのに協力するどころか、私達に敵意を向けてくるとはね…あまり賢い連中ではなさそう。
「とりあえず、動くんじゃねえぞ?仲間の命はこっちが握ってるんだからよ」
わお。人質?今時流行らないよそういう汚い手。
「……要するに、抵抗できないようにしないと…俺様が怖くて仕方ないわけか?」
お、いい挑発だね南城。
「あ?つまらん挑発だねえ。覇王九衛師団たる我々が、貴様ごとき恐れるわけないだろぉ?」
「覇王九…なんだって?聞いたことねえな。そんなダサい名前、聞いたことあれば忘れねえはずなんだがな。所詮低レベルな組織か」
「……何、言おうが無駄だねえ。こっちは楽して敵を葬りたいだけ。てめえなんぞ素で相手にしても余裕なんだよね」
平静装ってるけど、銃を握ってる手がプルプル震えてる。
かなり頭にきてるみたいだね。
…なら、
私は洞窟内にまだ残ってる須和に指で合図。その瞬間、
ライフルの狙撃音が鳴り響く。
耳に響く轟音。
撃ったのは須和。奴らから見えない位置から狙撃したの。
狙いはカウボーイの手。
狙撃され、奴は銃を落とす。
その瞬間を逃さず、私と南城は動き、人質二人を背負う。そしてすぐさま奴から離れてみせた。
俊足の白虎の私なら、スキをみせた時点でこれくらいの事は容易にできる。でも南城はそうはいかないと思ったんだけど……やるじゃない。彼もうまく人質を救出できてる。
「こ、この野郎!」
怒り心頭ってとこね。
やけに簡単に救出できたし、やっぱ大した奴じゃない。
…九竜と野原二人もいてこんなのに捕まったの?…なんか違和感があるわね。
「よし!これで思う存分戦えるぜ!」
北山くんが上着を投げ捨てる。
え、君がやる気なの?
「なんだ北山。お前がやるのか?なら譲ってやるが……危なくなったら言えよ。手ぇ貸してやる」
「いらねえ心配だぜ南城。オレもリヴィローとの戦いの後、ずっと休んでたわけじゃねえ。見せてやるよ修行の成果をよ」
…自信満々なのはいいけど、少し甘く見てないかしらこの子。
今までとは違い魔界に住む魔族なのよ?
人間界に逃げた連中とは違う。
帝王軍と比べれば容易とはいえ…そう上手くいくかしら。
「さあて。いくぜユニコーン。オレらの1本角でこいつを貫いてやろうぜ!」
つづく。
「どうやら戦闘は次回からになりそうですね。ヒカリ先生の言う通り、なんか危ない雰囲気ですよね~」
「次回 多種多様弾丸 敵の力の事でしょうか?」
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