第84話 招かれざる者
「
「そだね~。所詮猿真似だよ~。数は九人で、帝王六騎衆よりは多いってだけで実力も本家に遠く及ばないだろうしね」
ケチつけられてるのに、まさかの肯定。彼女自身はどうでもいいと思っているのだろう。
「所詮反抗組織だし~、帝王六騎衆に八傑衆といった帝王軍の幹部には全然及ばないだろうね。……でも、」
ダウナー女子はオニードを指し、
「七つの大罪人ごときよりは上かな~?少なくとも」
鼻で笑った。
またもや顔がピクピク動くオニード。先程のぽっちゃりとの会話でもわかる通り、挑発にのりやすいタイプのようだ。
「どいつもこいつも……ウチがこの座につくのにどれだけ苦労したかも知らんくせに、七つの大罪人をバカにするなよ!」
「苦労自慢?別にバカにしてないよ~。事実を述べただけだし~」
「それがバカにしてんだよ!幹部どころかこの座だって、ただの兵には高き壁なんだ!貴様ら小さい組織と一緒にするなよ!」
「ハイハイ。すごいすごーい」
棒読みで軽く拍手してきた。
「殺す……」
「イキるのはいいけど~さっさと能力でも使ったら?強さ証明したいんでしょ?」
「……」
オニードは黙る。なぜだろうか?
彼女の性格なら、挑発にのって能力発動でもしてきそうなものだが。
「使えないんでしょ~?色欲のオニードさん」
「知ってるのか?能力を」
「対抗組織だよ~?それくらい調べついてるって。七つの大罪人はその名の通り、七つの大罪にそった能力をもつ……でしょ?」
七つの大罪といえば、傲慢、強欲、嫉妬、暴食、怠惰、憤怒、色欲だ。
それを網羅していれば、能力の察しはつきやすいかもしれない。
オニードは色欲。
要は性欲だ。それにそった能力となると……
「異性を虜にする能力。他にも細かい詳細あるだろうけど~、基本はそれでしょ?」
「ちぃ……」
「つまり~、同性には効かないわけだよね?」
「……同性愛者ならその限りではないが…」
「残念~叶羽さんは異性愛者です~その毛は微塵もないよ」
「だろうね。魔族や天界人にはまずいないからね……」
「だから異性限定みたいなもんだよね~」
どれだけ強力なものかは不明だが、そもそも効かないなら何も恐れる必要はない。
それがわかってるからでかい口を叩けたのかもしれない。
「七つの大罪人が脅威じゃないのは~能力判別しやすいのと、あんたみたいに大した能力じゃないのもあるんだよ」
「なに!?」
「幹部なら時止めるヤベーのもいるって話なのにね」
「…地獄兄妹の兄か…」
「いや、言われても知らないけど。まあとにかく、あんたは恐れるような相手じゃないってこと」
「本当にそうかは……」
オニードは左手を前につきだす…
「ウチに勝ってからほざきな!」
すると、奴の指が伸び、ダウナー女子めがけて飛んでいく。
伸縮速度は速く、そのまま相手の心臓を貫く……
そう、思われたが。
突然、オニードの指が切断され、ぼとぼとと、全ての指がこぼれ落ちていった。
「ーー
「さあ?なんででしょ?」
両手で、わかんないみたいなポーズをとる。肘曲げた状態で軽く両手をあげて。
憎たらしい顔して煽ってもいる。
なかなか性格悪い。
(奴はなにかした素振りなかった!どうなってんの!?)
実際、ダウナー女子は突っ立ったままで、なにもしてはいなかった。
そう見えるように振る舞ってるとかではなく、少なくとも今この瞬間は、彼女は何もしてはいなかった。
仲間の気配もないから、横槍があったわけでもない。
とすると他に考えられることは…
「罠でも、仕掛けてたの?」
「ピンポーン!よくわかったね~最初から準備してたんよ」
「いつの間に…」
「わかりゃしないよ。見えないんだから」
「見え……ない?」
「はい、ヒントおしまい!」
手をパンと叩く。
その後、彼女の手からいつの間にか刀が握られていた。鍔もないシンプルな刀。
「あ、そういえば名乗ってなかったよね?覇王九衛師団の
「てめえが誰かなんか、さらさら興味ねえんだよ!」
「あそ。じゃあ死んでね~」
刀を振りおろす叶羽。
オニードはすかさず、近くに転がってた仲間の死体を掴み盾にする。
ーーが、
飛び散る黄緑色の鮮血。
振り下ろされた刀は、オニードの左肩から右側の腰まで、あっさりと真っ二つに切り裂いた。
「う、そ……な、なん……で」
驚愕するのも無理はない。
切れ味だとか、攻撃の速さなどに驚いたわけではない。
まず、切り裂かれたのはオニードだけということだ。
盾にした死体は、全くの無傷。
オニードの目には死体をすり抜け、自らだけを切り捨てたように見えたのだ。
それは目の錯覚でもなんでもない。
叶羽の能力だ。
「
「て、手品みたいな能力使いやがって……」
「心外だな~盾とか避けれるし使い勝手いいんだよ?」
「それだけ…じゃ、……」
白目をむいて、事切れた。
死亡したと思われる。
「はい、おしまい」
あっさりと、七つの大罪人の一人を始末してしまった。覇王軍、いやこの叶羽という女子、侮れない実力を秘めているようだ。
所詮部隊長とはいえ、前回白虎のヒカリとの戦闘で、彼女の必殺技を防ぐほどの実力者。それをあっさりと始末してしまったとは。
叶羽はチラリと草木の茂みを見る。
「誰~?のぞいてるでしょ」
誰かの気配に感ずいたもよう。先ほどまではなかった気配。今現れたのだろう。
すると茂みから、カウボーイみたいな帽子被った男が現れる。
「さすがだねえ。大罪人殺るたあ」
「ギュンターか。叶羽さんの応援に来たわけ?」
「そんなとこさ。殿下の敵討ちだからな。覇王陛下が複数の九衛師団で向かうよう手配なされた」
「て、ことはあんた以外も~九衛師団来るってこと?」
「そうなるねえ」
九衛師団は九人。
このギュンターなるものもそうと考えると現時点で二人。さらに追加で来るとなると、何人になるだろうか?
「敵討ち…覇王さんがそんなこと考える人とは思えないけどね」
「相変わらず信用してないみたいだねえ」
「利用価値あるから~在籍してるだけだもん。それは向こうもわかってるし」
「あんたの実力は折り紙つきだし、だから覇王陛下も重宝してるんだろうな」
「ん~?ちょっと隠れて」
突然なにかを察した叶羽はギュンターを連れ茂みに隠れる。
すると…二人の女子がキョロキョロしながらうろついている。
一人は小柄、もう一人はモデルのようなスタイル。
「はあはあ。本当にこんなとこにその、協力者のアジトあるん?」
「そう。だから急いでね野原」
二人の人物、それはこの前神邏達と共に戦い安否が不明だった野原。それと、今まで神邏達のサポートをしてきた美少女、九竜姫御子だった。
この様子からみて、神邏達の隠れるアジトを探してるようだ。
「あの二人、多分天界軍だよ~見張ってれば勝手に招いてくれるよ。殿下の敵にね」
叶羽は利用できるとして、後をつける。
知らず知らずのうちに二人は、招かれざる者達を案内してしまう事になってしまっていた……
つづく。
「あら意外。こっちが勝ったんですね。大した組織じゃないと思ったのに」
「次回 ユニコーン再び。あ、北山くんが戦うのでしょうか?」
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