第83話 覇王九衛師団 ???side
怪しい三人組と、七つの大罪人オニードとその側近数名。
皆、静かに睨み会う。わずかな静寂…
その静寂を最初に切るのは、三人組の中の1人、ぽっちゃりした男。
「まさか、こんなところに帝王軍がいるとは驚いたべ…。あんた幹部か?さすがに六騎衆じゃなさそうだけども」
「これから死ぬ相手に自己紹介ってのもアレだけど……ま、名乗ってあげるよ。七つの大罪人、色欲オニード」
さあ、驚け。と言いたげにドヤ顔して見下ろすオニード。
…しかし。
「な、なんだよ…ビビらせやがって。大罪人ならなんとかなるべ」
ホッとして冷や汗を拭い出した。
この反応はオニードにとっては想定外。
ドヤ顔の自己紹介だ。相手がビビり散らかすか、逃亡をはかると思っていたはず。
それが真逆の反応。彼女にとっては面白くない反応。
案の定、オニードは眉間にシワをよせ、ピクピク怒りに身を震わせている。
「どういう意味だい?ウチじゃ怖くないとでも?」
「最高幹部の帝王六騎衆か、その下の八傑衆ならともかく、兵隊よりは上ってだけの部隊長だべ?お前ら大罪人は」
幹部は八傑衆まで、七つの大罪人は厳密に言えば幹部ではない。それ故になめられているのだろう。
「腹立つ言い方だねえ…じゃあなにか?七つの大罪人なら恐れる事はないとでも?」
「そりゃそうさ。曲がりなりにも、帝王軍に面と向かって反抗してる対抗組織なんだ。部隊長なんて怖くないねえ」
「……反抗してる対抗組織?」
その言葉に反応するオニード。
「なにあんたら、帝王軍に歯向かってるバカ連中なの?いるんだよね、支配地域で反抗してるバカども」
帝王軍ことバラメシア帝国は魔界四大勢力で一番巨大な国。だが、あまりの暴虐ぶりや力による支配に内部で反乱する者達が後をたたない。一番内乱が多い国でもあるわけだ。
圧倒的武力により、降伏を余儀なくされた敗戦国の残党なり、単純に帝王が気に入らない者、ただの賊などその数は多い。
神邏達に敗北したローベルトもまた、そういう組織の一つ。
だが、どこの対抗勢力も帝王軍の喉元に食らいつくどころか、ろくに損害すら与えられない。
はっきり言って、面と向かって対抗できてる組織などない。
あるとするなら他の四大勢力くらいなもの。バラメシア帝国内部には絶対にない。
つまり、このぽっちゃりはデカイ口叩いてるだけにすぎない。
「どこの雑魚組織所属よ。グランド?」
「ーー!あんな野蛮な賊組織と一緒にすんな!
間違えられた事に憤り、あっさり所属をばらしてしまう。
「覇王軍?ああ、
「そう、いつか帝王カオスの寝首かいてみせるべ」
「アホくさ。帝王陛下どころか、ウチにすら勝てないくせに」
「ほざけ!おい出番だべ!」
ぽっちゃり男は、ダウナー女子ではないもう一人の人物を呼んだ。
その人物は、フードをかぶり顔が見えてなかったのだが、呼ばれた瞬間、服を全て脱ぎ捨て前に飛び出してくる。
全身毛で覆われた野獣。牙は鋭く、とんがった耳は狼のよう。
二足歩行で三メートルくらいの巨体だ。
もう一人は人間でも魔族でもなかったようだ。
「なにこんな化け物でウチを殺ろうと?」
「舐めるなよ。こいつは組織で研究に研究を重ねて作り上げた人工魔獣。元は人間と魔族の混血児なため理性も働き、敵味方の区別もつく存在だ!」
元はということは、人ということ。人を改造してこのような怪物を生み出したとみえる。
敵を倒すため人の道に反していることまでしているということだろう。
「さあやれ!このクソ女を始末しろ!」
人工魔獣はオニードに飛びかかる。
それに対しオニードの側近達が動こうとするが、
「あーいいよいいよ。ウチがやる」
「え?しかし…よいのですか?」
「こんなの遊びにもならないって」
オニードは手をかざし、手のひらから魔導弾を発射。
まっすぐに飛んでいく魔力の塊は、いとも簡単に人工魔獣の頭部を消し飛ばした。
首から噴水のように血が吹き出し、人工魔獣は倒れた。
あまりにもあっさりと退治された。
さすがに想定外だったか、余裕の表情が崩れ冷や汗を大量にかきだすぽっちゃりの男。
「え、は!?う、嘘だろ!?大罪人なんかにあっさりと…」
「だーから舐めんなと言ったでしょうが」
人工魔獣の手が動く。まだ死んではいないのだろうか?首から上がないというのに。
「しぶと。死んどけっての」
オニードは追撃の魔導弾を放ち、人工魔獣を消し炭にした。残ったのは灰だけ。
「な、なんで大罪人なんかがこんなに強いんだ……聞いてないべ」
「どこ情報か知らんけど、目論見甘かったねえ……で、どーすんの?」
するとぽっちゃりはすぐさま、振り返り、一目散に逃亡をはかる。
ちなみにダウナー女子はそのまま動かない。
「あは、逃がすと思ってんの!?ウチをバカにした罪、死んで償ってもらうっての!」
オニードはジャンプしてダウナー女子を飛び越える。
「あんたらはそこの女やっちまいな!ウチはデブ仕留めてくるから!」
「「へい!」」
側近に命令出して、オニードは全速力で後を追う。ぽっちゃり男はゼエゼエ言いながら走っておりさほど速くない。故にあっさりと追いつかれ、オニードは前に立ちはだかる。
「はい、残念」
「……へへへ。死なばもろともだああ!!」
ぽっちゃり男はこれまでと思ったか、やけになって殴りかかる。
「
オニードが一言そう告げると、ぽっちゃり男の動きがピタリと止まる。
オニードの体から湯気みたいなものが出ており、その煙に当てられたからだろうか?
男は汚らしいよだれを垂らし、ぷるぷる震えている。
「どう?ウチ魅力的でしょ?」
セクシーポーズを取りだすオニード。なんのつもりだろうか?
近寄ろうとするぽっちゃり男を足蹴にする。
「気色悪い。地べたに這いずってな。で、あんたら天界軍の連中の居場所わかったんだって?ウチに教えてくれない?」
「おし、教えたら……」
呂律もうまく回らずにはあはあ言っていて気持ち悪い。一体どうしたのだろうか?
「そうね。素直に答えたら……ご褒美あげてもいいわねえ」
「奴らの!居場所ならここに!」
さっき見ていたパソコンのような物をオニードに渡す。洗脳でもされてるかのようにあっさりと…
「サーンキュ。じゃあ…」
言い終わる前に、ぽっちゃり男は足蹴にされたまま無理やり近づき、襲いかかろうと…
「死ね不細工」
する前に、足に力をいれ、ぽっちゃり男の頭を地面に踏みつけて……
「ごぎゃあああああ!!!」
頭部を潰して殺した。
目玉やら脳などがあたりにぶちまけられた。
「うわキッショ」
オニードは魔導弾を連発し、ぽっちゃり男の身体や腕などが消し飛んでいく。
血液も蒸発していった。
「ん?血の色赤いな。……まさかこいつ人間?」
基本的に魔族の血の色は黄緑。違うものもいないことはないが、赤い血は人間特有のもの。純粋な魔族なら赤い血はありえない。
「あ、確か覇王軍って魔族と人間の混血がいるって話聞いたことあるな…じゃあこいつは薄汚い血が混じってるわけか。ますますキショいな」
灰となったぽっちゃり男の死体にツバを吐き捨て、配下の側近達の元へと戻っていく。
……すると、
「あれ?」
オニードの眼の前には、自らの側近達のバラバラ死体が転がっていた。
そんな死体の前には先程のダウナー女子の姿があった。
「あ、おかえり〜」
ダウナー女子はだるそうに手を振ってきた。
仲間の死は気にしてない様子。だがそれはお互いさまのようだが。
「何あんた。やるじゃん。側近連中は魔力はCランク以上はあんのに」
「そりゃ〜まあね〜。
「幹部?」
「そ、
つづく。
「九人いるんですか?ていうか敵同士潰しあってくれるのはありがたいですね!」
「次回 招かれざる者 どっちが来ようとその通りですよね」
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