第72話   大会終了

仲間になれ。

…そんな俺の発言に理暗は驚きを隠せていなかった。

まあ、今の今まで殺し合いしていた相手にそんな事言われるとは思わないか。


…いや、殺し合いというのは語弊あるか。

少なくとも俺は殺すつもりなど最初からなかったしな。

南城の事を考えると理暗の方もそんな感じと俺は思えた。


…仲間になれと提案できた理由がそれだ。


南城を殺さなかったところを見ると少しは信用できる相手なのではないかと思った。

ローベルトや教団連中のような野蛮な悪党連中とは違うのは確実。


…それに救いようのない悪党が四聖獣などになれるとは思えない。

天界の守護神なのだからな。



理暗は啞然としつつも口を…開く。


「おめでたい奴…だな。オレを信用できるとでも言うつもりか?」

「…できる、とまでは言い切れない。ただ悪党とも思えない」

「…オレの何を知ってんだ。会ったばかりのこのオレをよ」

「知らない。ただの直感かな」


血の混じったツバを誰もいないところに吐き捨てる理暗。


「ここまでのお人好しとは恐れいった。バカすぎて呆れる」

「…そうか。で、返答は?無理強いするつもりはないが」

「聞くまでもねえだろ。特もねえしな。だいたいオレを仲間に入れたら寝首かくぜ?」


…仲間にしたら損だとでも言いたいのか?

人を見る目があるかどうかはわからないし、…まあそういう可能性もあるかもな。


だがそれなら、


「下らない事しようとしたら切るだけだ。別に信用してるつもりはない。…ただ、四聖獣の戦力はほしいと思っただけだ。帝王軍…奴らに恨み、ありそうだからな」

「……」


突然黙るところを見ると、帝王軍を潰したい気持ちは天界軍と同じみたいだな。


「…何度も言うが強制はしない。特といっても、帝王軍相手の共闘と、お前のリベンジに付き合ってやれるくらいだしな」

「…ちょっと待て」


…ん?反応してきたな。

やはりこいつ…


「リベンジ、飲むのか?」


…そっちか。

何よりも俺との再戦が重要なのかこいつ…

戦闘狂というかなんというか…理解できないなこいつの思考回路。


だが、そんな事でいいのなら…


「…味方として、ちゃんと俺達に協力すること。仲間の誰も傷つけない…そういった条件のめるなら然るべき時に…リベンジ受けてやる」


断る理由はなくなる…か。


「……少し、考えさせろ」


今までで一番の好感触だったようだな…変わった奴だ。


「連絡先を教えれば、傷治り次第返答する」

「…そうか。吉報を待つ」


魔界に駐屯してるという天界軍への連絡方法を兵の方がしてくれた。


…あの様子だとこちらについてくれそうだな。玄武が味方になれば戦力は倍増だろ。

俺が勝てたのも運があったからだしな。



ひしっ…と、幼なじみのルミアが凄まじく大きな胸を押し付けるように俺にくっついてきた。……やわらかい。


「神邏くん、帰りましょうか」


とびきりの笑顔で俺に問いかけてきた。

それに癒やされつつ頷く。


「…そうだな。帰ろう」


と、二人並んで帰ろうとする矢先に、

許嫁の水無瀬がルミアと逆方向から俺にくっつく。


「…ちょっと神邏、堂々と浮気はどうかと思うわよ?」


…強く俺の腕にしがみついている。


「浮気もなにも…俺は君と結婚する気は…」

「ない!ですもんね~」


ニコニコしながらルミアが否定。

…双方睨み合い。


まあ、なんか気が抜けて悪くないな。こういうのも。仲悪すぎるのは良くないが。



一一視線?


今、誰かに見られていたような…

…………


辺りを見回すが…特に誰もいない。

いや、気づかれて去ったんだ。誰だ?


……なぜかはわからないが、少し懐かしい気配だった。



ちなみに、結局この場には帝王軍の者は誰一人いなかったらしい。


逃げた連中のなかに魔族と協力していたブラックリスト入りしてる人間を捕らえ吐かせたところ帝王軍はまずこんな大会見に来ないらしい。


優勝候補の連中も死んだし、人間界で暗躍していた魔族も減った事になる。支配地域も解放されるだろうし、それだけでもこの大会に参加した意義はあったな。





???side


ーー魔界。

魔族住む世界。


ごく稀に人が迷い込む事もあるという異世界。そのためか魔族以外の種族もわりといるらしい。


四季もあるが人間界以上に温度差が激しかったりしてただの人間ならキツイ環境。

日によっては1日中明るかったり暗かったりするため人間界とは環境がホントに違う。


人間界と天界よりも広く、頑強な世界…

そんな世界のある地域、巨大な城塞都市…バラメシア帝国。

そこの中央に位置する帝王城に、情報屋の姿があった。


いつものようにローブをまとった怪しい姿である人物に情報を提供していた。


「ーーということです」


膝をつきながら、情報の公開をしていた。


「天界軍…いえ、朱雀とやり合うその時には、最高幹部の帝王六騎衆ていおうろっきしゅうの方々を二人ほど送り、確実に始末することを提案します」


情報屋が頭を下げ情報を提供している相手…その男は玉座のような椅子に座っていた。


逆だった白髪、モミアゲと長く大きな前髪のみ黒ずんだ髪型。

体格は少し大きいくらいで人間とあまり変わらない。

白目の部分が黒く、瞳は赤い。

容姿の優れていて、美しい白い肌。…だがどことなく恐ろしさを感じさせる魔族。


この男こそ、バラメシア帝国支配者兼、帝王軍首領…


帝王カオスである。


「ど、どうでしょうか?帝王陛下…」


顔色を伺うかのような情報屋。

今までの落ち着いた飄々とした様子は今はない。

帝王に畏怖の念を抱いているのだろうか…


…帝王は口を開く。


「貴様…最高幹部を使わねば勝てぬ…そう言いたいのか?他の兵、いや、余の軍をバカにしているのか?」


あまり怒りは感じない落ち着いた様子の言葉…だが、


「も、申し訳ありません!出過ぎた発言でした!」


深々と頭を地にこすりつけるように下げる情報屋。

恐ろしい…下手な事を言えば殺される…そう感じたようだった。


「よい。貴様には優れた人材を紹介してもらったからな。その程度の発言水に流そう」

「は、はあ!」

「シャド…あれほどの男どこで連れてきたのか気になるほどだ。六騎衆にも引けをとらんどころかそれ以上かもしれん。…寝首かかれるやもしれんほどだ」


静かに笑みを浮かべていた。


「ただ天界軍…それほど力を持ち直したというなら…朱雀、警戒しようではないか。六騎衆の騎士ナイトバロンに任せてみるか…」

「はっ!あ、ありがたき幸せ…」


と、頭を上げないまま礼を言った情報屋。

今までの奴としては考えられない態度…だった。帝王カオス…それほどの男なのだろう。


天界の英雄を討ち取った勢力の大将…今現在の天界軍では太刀打ちできないかもしれない…


情報屋は…思う。


(朱雀…今までは運が良かっただけだ。帝王軍を相手にすることになれば命運はつきる…今度こそな。某は楽しみにしているぞ…貴様と天界が破れるその日を…な!)



ついにきって落とされる天界と帝王軍の戦い…

果たして神邏は…深緑の朱雀は帝王を倒す事が出きるのだろうか…



第一部 朱雀飛翔編 完


第二部 帝王軍編へつづく。



「第一部が終わり帝王軍へ突入です!これまでとは比較にならない戦い始まります!それでも神邏くんの勝利を願います!!」


「次回 帝王軍編プロローグ 少し未来の状況を見せるみたいです」




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