第67話 朱雀対玄武
――神邏side。
「「決勝戦!始めえええ!!」」
DJが試合開始の宣言をした瞬間!
俺の周りに鉄球が現れ、瞬時に襲い掛かってくる。
360°、逃げ場はない。
が、鉄球の全てが綺麗に両断され分かれた。
俺が全身から風の刃を放ち、全て切ったからだ。
この間、一秒あるかないかの刹那だった。
理暗は不適に笑う。
「……やるな。目の前の鉄球だけならともかく、背後のも1秒のくるいもなく、切って捨てるとはな」
くるいがないのは当然だ。全方位同時に刃を放ったんだからな。
それに……
「……背後の攻撃なんて、俺には無意味だ。気配がなかろうと空気の流れでわかる」
木属性特有なのか、聖霊イリスのおかげかはわからないが、俺は風や空気の流れに敏感で、目に頼らずとも相手の攻撃が感知できる。
「どちらにせよ鉄球攻撃は通用しないようだな……。ならば」
理暗のピアスが光る。
「亀良々、……やるぞ」
「りょーかい」
大人の女の声が発せられた。
玄武の
「
「……ならその盾の守りを避けて、攻撃するまでだ」
「できるかね」
理暗は手を前に出す。
俺は何かを察知し、その場を高速で移動する。
するとさっきまで俺の立っていた地点のリングのタイルが、なにか大きな物が落下したかのように、ひしゃげて潰れた。
実際は何も落下などはしていない。……これは……
「……重力?」
「御名答。オレは重力波を操る」
重力……となると、魔力の五大属性の、地属性に当てはまる。
「「地属性魔力。それも使い手がかなりかぎられる重力使いか。さすがは玄武と言ったところか。本来は水だから、こいつも変わった四聖獣みたいだな」」
と、聖霊イリスは分析した。
「地属性……。俺の木属性なら相性は有利だよな……」
「「そうだ。木は地に強い」」
「……まあそれを考慮しても、そう簡単にいく相手ではなさそうだかな」
次々と重力波を落としていく理暗。対し俺は全速力で避けていく。
……とはいえ避けてばかりでは、埒が明かない。
逃げまどいながら、攻撃を開始する。まずは植物による攻撃をしてみるとするか。
理暗の立つ地点から、リングのタイルをぶち砕いて、樹木が湧き出てくる。
樹木は理暗の全身に絡みつき、縛り上げる。
この樹木による攻撃は、縛り上げた対象の魔力を少しずつ奪っていく特性もある。
空気中や木々から魔力を集めるだけでなく、密着させれば敵の魔力をも奪う。
それが木属性の真骨頂。
少しずつ木属性魔力の力を思い出したか、使いこなせるようになったかは定かではないが、俺は木属性の特色を扱えるようになってきていた。
そして相性上有利な属性相手なら、その特色を最大限活かすことができるはず……
そう思い行動した。
「下らん小細工だな」
理暗は全身に魔力を集中し、力任せに樹木を引きちぎる。
けして容易に引きちぎることができる物ではない。
それだけ奴の力は強大なのか?
だがその行動のせいで、俺への重力攻撃は止まった。
そのスキをのがすはずもない。
すかさず風の刃、かまいたちを連射。それも理暗を中心に、グルグル回りながら何発も放ち続ける。
これにより、反応できても真正面の攻撃しから盾で防げないはず。
何故ならさっきの鉄球のお返しとまでに、全方向からかまいたちが襲い掛かってくるのだから。
盾は一つ。
全方向を守るなどできない。
「ぬるい」
理暗は盾を使わず、自らの周囲数メートルほどに、強力な重力波を発生させる。
その重力波は切れ味鋭いかまいたちを、全弾押しつぶし、消し去った。
ならばと俺は剣に魔力を集中。
一撃の威力を増した、かまいたちをはなつ。
大きく鋭い風の刃。
飛ぶ斬撃にも見える。
さっきの連発した、かまいたちとは威力が違う。
理暗は重力ではなく、盾で防御の体制。
その強力な一撃は
その間に俺は背後に回る。
盾を前方に構えているため、背後はがら空き。
いかに盾が強力でも、その盾の守りきれない範囲をつかれれば、意味はない。
――切りかかる!
ガギインと金属音が鳴り響く。
盾のガードが間に合ったのだ。
スキをついたというのに、対応が早い。
すると盾の中央部にある宝玉が、光る。
そこから魔力のレーザーが放たれた!
あまりの不意の一撃だったため、左手でガードするのが精一杯だった。
俺の左腕から少し、血しぶきが舞う。
風を発して、体制を立て直すように奴から距離をとる。
「……やはりただ守るだけの盾ではなかったか」
まさかエネルギー波を放つことができるとは思っても見なかった。
「なかなか素早いな。対応するのが難しかったぞ。……動きが遅いのは玄武の弱点だからな。スピードでかき回されると戦いづらい」
玄武は防御力最強で、攻撃力も高いが、速度は四聖獣で最も鈍足という特徴があるらしい。
だから奴の言う通り、速さでかき回されるのは苦手なのかもな。
……だがとても致命的な弱点には見えない。なぜなら、
「……よく言う。その弱点を重力で補ってるくせにな」
重力で相手を捉えられれば、相手の速度は大幅に下がる。
よって、敵にかき回されることはなくなる。
さっきみたいに瞬時に、周囲に重力を起こす事も考えれば、むやみやたらに近づくのも難しい。
ゆえに弱点をうまく補えているのだ
あえて奴が弱点を言ったのは、むしろスピードでかき回してくださいと願ってるのかもしれない。
「――ん?」
理暗は左腹部を軽く押さえる。痛みでも感じたか?
先程の一撃……
完全に盾で防いだと思われていたが、少し当たってたみたいだな。
……わずかに手応えあったし。
「攻撃最強の青龍ならいざしらず、朱雀がオレに痛みを……?それだけ巨大な魔力を持つと言う事か?」
驚く理暗にスキを感じ、俺はかまいたちを連射し始める。
だがまたも重力でかき消して、見せる。
「……無駄だ。オレに遠距離技は効かん」
聞く耳持たず連射。
だがただ連射してるわけではない。緩急つけたり、方向を曲げたりさまざまなかまいたちを俺は撃っている。
左右から上下から、放ったかまいたちから、ワンテンポ遅れてのかまいたちだったりと、翻弄しようとするかのようにうち放つ。
「下らん小細工だな。先程の背後をつく攻撃といい、正々堂々と戦うつもりはないのか貴様」
不服そうにかまいたちを防ぐ理暗。正々堂々か、まあその言い分もわかる。
だが、
「……悪いがこっちも必死なんだ。この程度の小細工くらい、大目に見ろ」
「……ふん。そんなものオレに意味をなさない事を、よく教えてやる。秘技でな」
つづく。
「まだ様子見と言ったところでしょうか?戦いはまだ始まったばかりですしね」
「次回 重殴撃 必殺技名でしょうか?」
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