第64話  十秒

四聖獣最強の存在。玄武……

それについての説明はつづく。


「奴がどれだけ四聖獣の力を解放してるかは知れませんがね、とりあえず能力は使えると判断していいでしょう」


俺も自然回復力の増大という能力を会得してるわけだし、木田理暗だって使えてもおかしくはないだろう。


「というかさっき使ってましたがねえ」

「……?」

「敵から受けた電磁力。あれを鉄球に移し替えてたでしょう?」


先の一回戦。…ドゥパンに対して確かに行っていた。


廃物転移プレゼンツ。玄武の能力の一つ。…毒なり、メンタル攻撃なり、自分が受けた多くの現象や、能力を他の物質に授ける事ができる能力。これにより単純な魔力の攻撃以外全て通らない」

「…厄介な能力かもしれませんが、俺にはあまり関係なさそうですね」


俺は毒とか能力で相手をハメる戦法はできない。

だからそういったものに対するカウンターは意味がない。


「…わかるのはそれくらいですかねえ。やはり使い手によって戦法も変わるのでね」

「…そうですよね。ありがとうございます」


風見さんに礼を言った。

奴自身の戦法。先程の戦いからは鉄球を使うという事しかわかっていない。


「奴が使ったといえば鉄球だが、あれが武器聖霊スピリットウエポンなのだろうか?」

「違うよ〜」


俺の武器聖霊スピリットウエポン、リーゼが否定してきた。

ちなみに今は俺の指にはまってる指輪になってる。


「あれは同族の匂いしなかったヨ」

「…違うのか?となると金属性魔力で生成した武器とかか……?」

「それも違うかな~多分」

「…どういう事だ?それ以外魔力を秘めた武器は生成できないんじゃないのか?」

「いや例外は他にもあるよ?能力によって作られた物とか」

「玄武の能力で作った……と?」


聞いた話の能力では、そんな事できるようには聞こえないが……


「いやそこはあーしもわかんないけどお〜」


否定はしても、正解まではわからないリーゼ。


「なんにせよ武器聖霊じゃねえならさっきの戦いじゃ、本気をまるで出してねえってことだろ?」


南城は立ち上がる。


「それじゃ対策のしようもねえよ。それにもう時間もねえみてえだ」


置いてあるテレビから、DJの声が聞こえる。


「「それでは準決勝を始めまーす!まず組み合わせ発表!」」


確かにもう時間がない。

仮に初戦じゃなくても、天界組が当たれば棄権することになっている。となるとすぐ木田理暗と戦う事になる。


「準決勝で当たる奴は、とにかく勝つ事より疲弊させる事に重点をおいたほうがいいかもな。誰がやるにせよ、決勝で戦う奴が楽できるようにな」


…準決勝で当たる者は捨て駒になれということだろうか?

それだけ厄介な相手とはわかるが……


「「組み合わせ発表〜!準決勝第一試合は!!」」


電光掲示板に名前が出る。


「「スプリング対岩絶!」」


「俺様か……。まあ相手にとって不足はねえな」


よりにもよって、一番初戦で疲弊してる南城か。…運が悪い。


「無理そうなら棄権もアリよ?」


と、水無瀬は気を使うが、


「ぬかせ。ああは言ったが、殺れそうなら殺ってやるよ」


南城は最初から捨て駒のつもりでは戦わないということだろう。

…だが無理と判断すれば、彼は進んで捨て駒になる気だろうが。


「…死ぬなよ」


俺は戰場に向かう戦友に、一言。それだけ言い放った。


「…当然だ。オレ様は◇の九、南城春人だ。こんなところで死ぬかよ」

 

南城は鼻で笑った。





俺達三人は揃って会場へ向かう。

二人は参加選手席に座り、南城はリングへと向かう。


リング上ではすでに木田理暗が待ち構えていた。

南城はゆっくりとリングへと上る。その姿を確認すると木田理暗は……


「死への船旅の準備は出来たか?出来るだけ苦しまないようにしてやる。安心してくれ」

「ほざけ。死ぬのは…てめぇだ!」


「「それでは準決勝第一試合スプリング対岩絶…始め!!」」


試合開始のゴングが鳴ると、理暗は両手を前に出して開く。


「…十秒」

「あっ?」

「十秒でこの試合終わらせて見せようか?」


まさかのカウントダウン。

よほど自信があるようだ。


「…いいぜ。負けるのはお前だからな」

「ならオレがこのコインを投げる」


理暗の手の平に5円玉くらいの大きさのコイン。


「これが地に落ちた瞬間からカウントダウンスタートだ。かけっこのスタート合図みたいで楽しいだろ?」

「くだらねえ」

「…あと一つ、オレは卑怯な手は嫌いでな。正々堂々と戦いたいから、これからオレがやる事を教えてやる。せいぜい対策練るんだな」


やる事を教える?

つまり十秒でどう倒すかを教えるつもりという事なのだろうか?


「どうしても不意打ちみたいになるからな。だが不意をつく、…つまりそれを事前に教えておけば、不意でもなんでもないだろ?」

「しるかよ」

「とりあえず聞けよ。…オレはコインが落ちた瞬間に、鉄球を高速で放つ。そして直撃させたらまたドゥパンとかいうやつみたいな目に合わせる。それで10秒後にはお陀仏ってわけだ」


ドゥパンのように……

飛ばされた先に鉄球、飛ばされた先に鉄球。

あれを繰り返され肉片と化したアイツのようにか……


「てめぇ、何考えてんだ?」

「言ったろ。オレは不意打ちが嫌いだとな」

「それで勝率下げるのがアホだってんだ」

「下がらんさ。勝負は見えてる。そもそもオレの相手になるのは…」


理暗は参加者の席に座ってる俺を指す。


「あいつくらいなものさ。…なあ朱雀」

「てめぇの相手はオレ様だ。次の試合のことなんぞ考えたら、足元救われると教えてやる!」


激昂する南城は両手に炎を包ませる。


「いいね。その表情。…なら始めようか!」


コインを指で弾き、上昇。

そしてコインはクルクルと回転しながら、落下開始。


……地に落ちた!

カウントダウン開始!


突如理暗の目の前に出現した鉄球が、高速で南城めがけて飛んでいく。説明通りの行動だ。


一秒。


南城は炎を放つも、鉄球はそれを消し飛ばし南城に直撃! 


二秒。


「ガハッ!!」


三秒。


衝撃で吹き飛ばされる南城。そして背後には鉄球の姿。


四秒。


南城は切り返す。ドゥパンと違い、磁力に引き寄せられるわけではないのでどうとでもなる。


五秒。


炎の拳でぶつかるはずだった鉄球を粉砕!

これで同じ目には合わない。


六秒。


「やるな…だが」


称賛する理暗。しかし、


七秒。


突然重圧のようなものを受け、南城は倒れ伏せる。


「がっ!!」


八秒。


南城の頭上に巨大な鉄球が出現。


九秒。


「ジ・エンド」


理暗の発言後、鉄球が落下!!


十秒。

 

鉄球は南城のいた地点に落ち、リングのタイルをぶち割り、南城ごと地中へと沈んだ……


…南城は逃げれた素振りがなかった。

押しつぶされたのかも……


「…ちょうど十秒か」



つづく。


「まさか十秒で倒しちゃうなんて恐ろしい敵、ですね……」


「次回 玄武闇盾ノースシールド これは玄武の……」

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