第63話  玄武登場

ベスト4が出揃った事で、一時休憩が設けられた。


俺達三人は控室に戻り、作戦会議をしようとする。だが、その前にダストの容態を見に行くことに。


ダストが休んでる控え室、

そこには風見さんと俺にとっては見知らぬ三人の姿があった。


「おや、三人共無事に勝ち上がったようで素晴らしい」


風見さんが俺達三人を褒めた。

俺はとりあえず頭を下げた。


「…どうも」


すると水無瀬は見知らぬ三人に気づくと、


「あら?鏡さんに沼坂さん、それに弓まで……どうしたんです?」


三人の名を呼んだ。


鏡さんが長髪後ろ結びで、片眼鏡の男性らしい。

沼坂さんは姿勢の悪い、白髪グラサンの男性のようだ。

弓さん……は名前だろうか?

その子は黒髪ツインテール、失礼かもだが、凹凸ないロリ体型の女子。


「いんやね、水無瀬のお嬢さんの実力見てみたくてね」


沼坂さんは言った。

水無瀬は質問する。


「元々三人もこの任務に参加してたのですか?」

「まあね、後方支援だけど。で、風見さんに許可とって見に来たわけよ」

「へえ……」


…どことなく嬉しさは感じない。むしろ迷惑そうにしてる水無瀬。


「さすがはゆかりんだよ!ウチのライバルにふさわしい!」


テンション高く、ピョンピョンしながら弓という少女が褒めた。

友達なのか?


「なんだ、どいつもこいつも水無瀬目当てか。オレ様や美波はどうでもいいとな」


南城が嫌みったらしく言った。


別に褒められたいとかではないのだろうが、自分や、同じく圧勝した俺にも何かあっていいだろと思ったのだろう。まあ俺のことはついでだろうが。


…意外と子供っぽい。


「あー?そっか、あんたもいたんだ気づかなかった〜」


さっきとうってかわって、冷たい目線で南城を睨みつける弓という少女。


…嫌われてるのだろうか?


「あいも変わらず性格ブスだな。学園時代から変わらず、認めた水無瀬意外には、全員クソみたいな態度か。…気に入らねえな」

「うるっさい。ウチは態度変える気なんてないから」


そんな言い争う二人に、水無瀬はため息ついている。

この弓という少女のこういうところに手を焼いてるのだろうとわかる。



「俺は見ていたぞ。貴様の戦い」


鏡さんが南城に話しかけた。


「なかなか見事だった。あの厄介な能力に対して、的確に処理したその実力、評価に値する。分析では貴様の勝率は4割ほどと読んでたのだがな」


負けの確率が多いと思われていたのか。

南城にとってはあまりいい気はしないだろう。


「…鏡さんの分析通り、4割をとって勝った。…とは思いませんがね。あの戦いは100%勝てるものだった」

「そうかもしれん。俺のデータは聖獣の力を加味してなかったからな。今度新たな力をデータベースに入れさせてくれ」

「考えときます。…ただ、」

「ん?」

「奴の能力攻略のヒントは、鏡さんのおかげです。ありがとうございます」


…なんと、南城が頭を下げた。

プライドが高そうな南城がこんな事をするなんて……


…付き合い長そうな水無瀬や弓という少女まで驚いているし。


「なるほど。俺の転移能力をヒントにか。確かに前に教えた事があったな対策方法」

「はい、だから容易に勝てたと」

「まあ感謝されるような事ではない。仲間に何かを教えるのは当然のこと。それにより勝率が上がるのなら尚更だ」


南城の言った100%の勝率、それは鏡から聞いたヒントのおかげもあるわけか。


「――で、もちろん君も素晴らしかったぞ朱雀」

「…どうも」

「そういえば自己紹介もまだか。♤の十三キング鏡凛月かがみりつきだ」


鏡さんが名乗ると、他二人の連れにも顎を動かして合図。

二人は頷くと、


「オレっちは沼坂啓太ぬまさかけいた、♤の十一ジャックさ」

「…あんたとは会ったことあるというか、同じ学園にいたんだけど一応自己紹介ね。東国弓とうごくゆみ。♤の八」



三人とも♤とはなにかの偶然だろうか?

…しかし皆階級は高い。

男二人は俺よりも上の階級だし。

俺も自己紹介するか。


「…美波神邏みなみしんらです。◇の十で朱雀……です」

「まあそう固くなるな。同じ仲間なわけだからな。…そうだろ風見」


鏡さんに問われると少し間を置き、風見さんは、


「…ええまあ。大事な戦力ですしねえ」


なんだ今の間は……

水無瀬はどことなく居心地悪そうにしているし。


「ところで君たちは水無瀬さんに用があるのだろう?」

「ああそうだが、…まだ任務中な上に次の相手に対して作戦会議でもするだろうしな。まあ後でいい。隣の控室で待ってるさ」


いや後方支援なのではないのか?

という疑問が浮かぶ。

戻らず控室にいるなんて、余裕なのかなんなのか……


「行くぞ」


鏡さんは沼坂さんと東国さんに声をかけ、部屋を出る。


「上司の命令だから。じゃねゆかりん」


手を振りながら、部屋を出る東国さん。水無瀬は特になにも返さなかった。


「オレっちも!じゃあねゆかりん」


…東国さんの真似だろうか?低い声の男が無理やり出した甲高い声でのモノマネ。…気持ち悪い。



…とりあえず本来の目的を果たそう。元々は見舞いに来たのだから。…と思ってたのだが、そもそもダストはいなかった。


「風見さん。…ダストは?」

「彼はもう戦えないしね。とりあえず外の救護班にまかせたのだよ」

「…そうですか」


それなら心配はいらないだろう。

なら次は作戦会議だ。


「じゃあ、あの木田なる人物に着いて対策練りましょうか」


水無瀬の言葉に同意し、俺達はとりあえず椅子に座る。



三人は勝ち上がったのだから、対策を練る必要があるのはただ一人。木田理暗だ


…奴はローベルト以上の魔力を持っている。

そしてあの魔力が型どった亀、…あれは……


その答えを南城は教える。


「あの理暗とかいう奴、…間違いねえ。あれは最後の四聖獣……玄武だ」

「…玄武」


天界を守護する聖獣の中で、最も位の高い四神こと、四聖獣。


その中の三体。

朱雀は俺、美波神邏。

青龍は東龍次。

白虎は西ヒカリ先生。


そして最後の一体がその玄武……木田理暗ということか。


ただ四聖獣になるものはその血筋、一族に限るらしいが……


「…あの木田ってやつは、玄武一族ということか?魔族ではなく」

「…いや魔族なのは間違いねえと思う。考えられる事と言えば、天界人と魔族の混血ってところか?かなり珍しい例だが」

「玄武一族が魔界に住み、そこの魔族と…?」

「聞いたことねえがな。大昔にそういう人がいたのかもしれねえ」


混血とはいえ魔族……

そう考えるとどうなのだろうか?


「曲がりなりにも玄武なわけだし…説得して味方になってはくれないかしら?」


水無瀬は言った。

…純粋な魔族ならまず無理だろうが、半分天界人なら天界に協力してくれるかも……ってことか?


南城は首を振る。


「人間と魔族の混血は、どちらにも差別対象になり、どっちも嫌いなパターンが多いと聞く。それが天界人でも同じ事だろ」

「天界人は魔界になんていないし、差別対象どころの問題じゃないんじゃない?」

「なら話してみるか?と言っても反天界&反人間界掲げてるような帝王軍に入ろうとしてる以上、無駄だと思うがな」


…道理だ。

天界と敵対する組織に入ろうとしてる奴だ。天界に対してなにか思うところがある可能性は高い。


「面倒な話ね。…なんでそんな素性もわからない奴が玄武になれたのかしら……?」


水無瀬の疑問ももっともだな。

まあそんなことは考えても仕方ない。そう俺は思い、話を変える。


「…どちらにせよ戦わずにはいられないのなら、玄武について知ってることを教えてくれ」

「…そうね。え~っと……」


考える水無瀬。


「四聖獣についてなら自分のほうが詳しいだろう。聞きたい事があれば答えるよ」


風見さんが話に入ってくる。

退室したのはあの三人だけで、風見さんは残ってたのだ。

まあ今回の隊長なわけだし、ここにいるのは当然だろうか。

指示もしやすいだろうし。


聞きたいことか、

というか、俺の場合はそもそも……


「…質問もなにも、俺は同じ四聖獣としか知らないんですが……」

「じゃあまず軽く特徴など上げましょうかねえ。…四聖獣・玄武げんぶ。天界北方に位置する守護神で、冬を司り基本属性は水、まあ君のように属性が違うことも極稀にありえるようだから、そこは重要ではないでしょうかねえ」


基本属性が違う……

例えば本来朱雀は火属性を司る、そもそも火の鳥なわけだし。

だが俺は木属性。おまけに緑色の魔力で赤ですらない。

それ故に深緑の朱雀と魔族には言われてるとか。


ちなみに他二人も違う。


青龍は本来木属性、だが東は水属性。

白虎は本来金属性、一方ヒカリ先生は雷属性。


これは極めて珍しい事らしい。

今回の玄武もそうかはわからないが……


「…そしてまあ使い手次第なのが前提ではありますがねえ、玄武は四聖獣最強とうたわれているのですよ」


…四聖獣最強……

ただでさえ同じ四聖獣対決が初めてというのに……

その事実に息をのむ……



つづく。


「玄武……。恐ろしい相手となりそうですね~」


「次回 十秒 …何が十秒何でしょうか?」

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