第61話  炎対炎

第3試合、南城対ハーベル。


ハーベルの能力に翻弄されている南城の姿。

放たれた弾丸が炎人に変わる……弾丸の位置にワープさせているのだろうか?


弾丸の速度もかなりのもの。

その速度で炎人の移動が可能となると、厄介な事この上ない。


無論ワープするかしないかはハーベル側が選べるはず。


「面倒なら……本体を潰せばいいことなんだよ!!」


南城は聖獣の生成した魔力の斧を取り出し、ハーベルめがけて投擲。


斧はグルングルン回転しながら、ハーベルに直撃し、ハーベルの肩をえぐった。

…のだが、ハーベルの姿が炎に変わり、消え去った。


「あ!?偽物か?」

「さ~て……。オレはどこにいるでしょーか?」


ハーベルの姿はどこにもない。

リング上には南城と炎人のみ。


「どこにもいねえとなると、その炎人の中か……?」


普通に考えるとそうだが……

ダストが戦ってた時も、同じ状況で同じように、炎人に攻撃した。だがいつの間にかダストの背後にハーベルはいた。


…もしやハーベル自身もワープ可能なのか?


火種を残しておけば、どこからでも移動が自由自在となると、まともに捉える事も難しい。


「少なくとも中に隠れてるのは間違いねえとは思うんだがな」


背後を確認すると、先程の弾丸、もとい火種を確認。

火種のある所からワープするというのなら、それを処理してしまえばワープできないはず…


南城は火種の処理に向か……


「読めてるんだよねえ」


処理しようとした火種から、炎人がワープしてきた。


「ちぃ……」


ならばと他の火種処理に向かう素振りを見せるが……

辺り一面火種だらけ。

仮に全てを処理しようとしても、その時間にまた火種をばらまかれるだけ……


これではワープを防ぐ手立てがない。


ハーベルは憎たらしい笑顔を見せる。


「どうだい?諦めるか?」

「だれが……」


南城は斧を構える。

そしてなりふり構わず突撃。

斧の一撃で炎人を切り落とす策略か?

成功したとしても、無論本体はワープして回避し、そのスキをついてくるだけな気がする。


いや、その程度折り込み済みか。


「ねえ、どこ見てんの」


ハーベルがすでに背後に!

攻撃する前に後ろをつかれるのは、さすがに想定外か?


火炎機関銃ファイアマシンガン


ハーベルは炎の弾丸みたいな魔導弾を、ガトリングのように連射。

何発も何発も何発も、しつこいくらいうってうって、うちまくってきた。

 

南城はそれを全弾直撃してしまう。血しぶきが撒い、宙を舞う。貫通はしてないように見える。


そして、スローモーションかのようにゆっくりと、地面に倒れた。


「終わったな。呆気ない」


ハーベルは勝利宣言して、ツバを吐く。


「「お、おおっと呆気ない幕切れかあ!?一瞬の出来事でよくわかりませんでしたが、魔導弾の連射で蜂の巣にスプリング選手はされてしまったようだ!」」


ボー然としてたDJが状況を説明しだす。



「…あいつ、私に偉そうな事言っておいてこのザマなんて……」


水無瀬は拳を震わせ、怒り気味。

まああれだけ煽られればわからなくもないが……


「せめて少しくらい傷でもおわせてくれれば、後が楽だったのに」

「…いや、まだだ……」

「神邏……?どういう事……?」


俺はまだ南城が殺られたと判断していなかった。


「まだ魔力を感じる……。というより、あれくらいで殺られるような奴じゃないだろ」



南城side


予想通り南城は生きていた。

瞬時に魔力を全身に集中し、ガードが間に合っていたからだ。


だから蜂の巣になんてなっていない。さすがに血は出たし、ダメージはあるが。


南城は倒れたまま、考えこんでいた。


(どうしたものかね……。予想以上に厄介だぜこの能力)


「「死亡したのでしょうか!?」」


DJの声がドームに響く。

とりあえず10カウントくるまで、こうやって考える時間を作ろうとしている南城。


とはいえ、ハーベルに気づかれたらそれまでなのだが。


(…待てよ、確か似たような能力を持ってる人が天界軍にいたよな?空間転移能力の使い手が……)


南城はよく思い出す。

その人物の能力と特徴を。


(♤の十一ジャック鏡さん。確かあの人が前に言っていた……)


南城は笑う。

なにか対抗策を思いついたようだ。


勢いよく立ち上がる南城。


「「お?おお!!まだ生きていられます!これは試合再開だあ!」」


とDJが叫ぶと、口をあんぐり差せてから、頭をかいてめんどそうにするハーベル。


「なんだよ生きてたのかよ。しぶといゴミ虫だ」

「そのゴミ虫に殺られると思うと、滑稽だな」

「殺す」


炎人がハーベルの目の前に出現。

だが炎人を無視して、ハーベルに斧を投擲。


「バカが。当たるかよそんなもの」


ハーベルはまたも消える。

斧は空を裂いて空振りする。


「まだだ!」


なんと二本目の斧が南城の手元に。それを炎人に投擲。

炎人の体を切り裂く一撃。


…だが中にはハーベルはいない。

元々いなかったか、それともまたワープしたのか?


ハーベルは火種と居場所が入れ替わっていた。

どうやら後者だったようだ……


「わかりやすい野郎だな」


ハーベルがワープした目の前に、南城の姿が!


「なに!?」


すぐさまなにかしようとするが、南城がハーベルの両手を掴み阻む。


「つーかまえたってか?」

「こ、のゴミ虫が!離せ!」


力強く、ハーベルの手を掴み離さない。


「ワープして逃げればいいじゃねえかよ。出来ねえのか?」

「ぐ、ぐぐ…」

「やっぱな。こういう空間転移能力者は、相手に掴まれれば移動できねえと、聞いたことがあってな…」


先程考えでた時に浮かんだ、鏡なる人物から聞いたのだろうか?


「理屈はよく知らんがな。で、捉えるためにはまず、お前に近づかねえといけねえ。どうせ背後をつこうとしてくると思ってたからな。ワープか所は読めてたわけだ。後ろだとな」


斧の投擲は狙ってる地点にワープさせるための布石だったようだ。


「けっ、まんまと罠にかかったわけか。で?この後どうするつもりさ。このままずっとつかんだままで組体操でもする気?」


両手掴んだままで攻撃するとしたら、蹴りがあるがそれだけで倒すのは無理だろう。


「そうだな……。離したらまた逃げられるだろうし、組体操でもするか?」

「ノープランってわけ?馬鹿じゃねえの?」


…そんなわけはない。

南城の口元には笑みがみえる。

なにか狙いがあるのだろうか?


――ぶんぶんと鈍い音が近づいてくる。


「はっ!ま、まさか!?」


ハーベルはなにかに気づく。

逃げようとするが南城が許さない。


鈍い音の正体。

それはさっき南城が投げた斧だ。

斧がブーメランのように、南城の元へと戻ってくるのだ。


ドグシャッ!!

斧がハーベルの背中に直撃!

その瞬間、南城はハーベルを離し逃げる。


斧はハーベルを貫いて、南城の手元に戻る。


ハーベルの体が切り裂かれ、血が吹き出している。


「が、ガハッ…」


だが倒れない。

肩から心臓付近の胸が、吹き飛んでいるというのにだ。


「こ、のゴミ虫が…舐めた真似を……」

「へえまだ生きてんのかしぶといのはそっちのほうだな」

「て、手痛いダメージは負ったが……、手を離した以上、俺はまたワープ可能……な、わけだ。もう二度と攻撃は受けんぞ!」

「…もうその必要ねえんだよ」


南城は静かに笑った。

勝利を確信したかのような表情をしてる。


「どういう……意味だ」

「今の一撃、オレ様の炎の魔力を火種として練り込んでてな。それをお前に埋め込んだ」

「…は?」

「つまりもう、俺様から攻撃を仕掛ける必要はねえ。…何故なら」


南城が指を弾く。


するとハーベルの全身から埋め込んだ火種が大爆発!


「ぬがあああああああ!!」


爆炎がハーベルを焼き尽くしていく。


「バカな、バカなー!!」


ドガアアアン!

何回も爆発し、ハーベルの全てを……燃やし尽くした……


「俺様の勝ちだからだ」


南城は背を向けて親指を突き上げた。


「異能七人衆の技から閃いた技ってのは、気に入らねえがな……」


おそらく戦ったモルトレットの帯電磁ボンバーのことだろう。

※39話参照。


「おい審判、終わりだろこれで」


唖然としてるDJによびかけた。

DJは焼け焦げ、死亡してるハーベルを確認。


「「あ、は、はい!失礼しましたあ!またも!またも大番狂わせ!勝者はスプリング!また無名選手の勝ちだ!」」


勝利宣告。

天界メンバーは見事、全員初戦勝ち抜きに成功したのだ。


「…へ、賭けはやっぱオレ様の勝ちみてえだな」



つづく。


「…失礼ながら負けると思ってました」


「次回 ベスト4出揃う あれ?まだもう一試合ありますよね?すぐ終わるんでしょうか?」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る