第48話 絶華封じ
溢れ出る魔力。それはローベルトのそれをはるかに上回るものだったらしい。
それはローベルト自身も感じていたようで……
「ば、バカな!想定外にも程がある!ここまでやった吾輩の力でも朱雀には及ばんというのか!朱雀の力の解放といってもまだ二段階目であろうか!!」
たった二段階目。されど二段階。
最初の解放と違い確実に魔力の高まりを感じる。何も能力を得るだけではない。
聖獣の神・四聖獣……どれだけ偉大なものか身を持って感じざるおえないな。
魔獣を仮に一つに融合できたとしても無駄な事……
たかが魔獣と神たる四聖獣では格が違うってことなのかな?比べる事すらおこがましいほどの。
「み、認めん……認めんぞおおおおお!!」
また姿を消し音速で……
ザン!!
近づく前にカウンターで俺の斬撃を受けたローベルト。
……もうステルス音速も見切ってるんだよ。
ガードも間に合わない不意の一撃、かなり効いたはずだ。
このまま地に倒れ伏してもおかしくないほど。
だが俺はそのスキを逃さない。
斬撃の雨、
連撃に連撃をぶつけ、全身を切り裂いていく。
「ぐっ!がっ!がああ!!」
何もできない、抵抗もできない。
されるがまま切られ、ローベルトの全身から血が吹き出していく。
観客席のヒカリ先生はポツリとこぼす。
「……今の神くんはもしかすると、Sランク相当の魔力を宿しているのかも」
皆その発言に驚いていた。
「え、Sランク!?ま、まさかそんな……今の天界軍でもそこまでの魔力を持つ人なんて、片手で数えられる程度しかいないのでは!?」
関西弁を忘れるほど驚愕しているアゼル。
「そうね……四将軍でも私、西木、天海の3人だけで、後は莉皇くらいかしらね。司令のおっさんとかはもう衰えてるでしょうし」
遠い昔は最高ランクはAランクだったと聞いたことがある。
だが時が立つにつれ、過去の偉人達を上回る逸材が現れた。
Aランクを最高とするなら偉人達を下げねばならなくなる。
それを避けるため上のランクが作られた。
……それがSランク。
Sランクは幅広い。
SのGランク、FランクなどがありそれがまたSまである。
いわゆるSS(ツーエス)ランク
そしてさらにSSの……と上がまだあるのだが、Sランクに入るだけで過去の偉人超え……天界で名が語り継がれるであろう存在だとか。
「まあ私の目測だけどね。でもAランクの中位以上はありそうな、ローベルトがあのざまなわけだし考えられると思うの」
「……さ、さすがは四聖獣って事なんやろか」
「その一言で片付けていいレベルじゃないけどね。私は第3段階解放できてのSランク……対して神くんは第2段階解放をしたばかりなわけだしね」
四聖獣の解放にはまだ上があるとなると……まだまだ急成長の余地がある。それは嬉しい話。
今までは解放ろくにできてなかったために、四聖獣としての強みがなかったからな。
「……同世代じゃ天才っつったら南城と水無瀬に美波……って思ってはいたんやけど、美波は別枠に入ってたのかもしれませんな」
「……まああの子、
憂いに満ちた表情で俺を見ていたらしいヒカリ先生。
心配してくれてるのだろうか?
「神咲って♡の
「ええ。あの子の実の……」
――ドザアアア!!!!
地面に叩きつけられた音が鳴り響いた。ローベルトは俺の一撃でリングの外に落下。
血まみれ満身創痍といった姿。
もう奴に勝ち目はないと、誰もがそう思っていたろう。
「く、くふううう。だ、ダスト!貴様、吾輩をこのまま見捨てるつもりか!?」
息を切らしながら部下だったダストに呼びかけた。
何を今更言ってるんだこいつは……
先程は部下をただの駒としか見ていないと豪語したくせに。
「ふ、ふざけんな!あんた小生達を駒扱いし、ひいては死んでもらいたかったなんてほざいたくせに!」
激昂するダスト。
……その通りだ。
慕ってた気持ちを踏みにじる発言を、笑いながらしていたくせにどの口が……
「死んでもらいたかったと言ったのは、つ、強がりで言っただけだ。それに自分で殺すなどできなかったしな、た、多少の情はわいていたから……」
……嘘だな。
本気で死んでもらいたかったと思ってたはず。
それにこいつはもし七人衆が生き残ってたなら、普通に自分の手で始末したはずだ。
おそらく天界軍に任せたのは、下手に抵抗されてダメージを負い、俺との決戦に響くのを恐れただけだろう。
わかりきった発言……なのに当人のダストは、
「ほ、本当なんすか……?」
……おいおい。
こんな分かりやすい手に引っ掛かるな。
「ああそうだよ。それに理由はどうあれ、君たちを育てた恩に報いたいとは思わんのか?」
「じ、充分報いたくらい働いたろ」
「なら……恩人を見殺しにするのかい」
考え込むダスト。
どんなクソ野郎でも恩人にはかわりない……そう葛藤しているのだろうか?
「あんさんバカかい!あんなんでまかせにきまっとろうが!それに恩なんて感じる必要ないわ!」
アゼルはバカにするように叫んで止める。
「そうね……それにもしあいつを助けようなどとしたら、今ここで私があんた殺すからね。まあそれだとあいつの力になるからそれを望んでるのかもしれないけど」
……確かに先生の言う通りだ。
七人衆に死んでもらって力を得る事ができるのだから、邪魔して殺されたら奴の思い通りだ。
いやそもそも、仮に助けれたとしても間違いなくローベルトはダストを殺す。
力を得る事に必死な男だ。迷いなく命を奪おうとするだろう。
……ダストは座る。
理解したのだろうか?
「――ちぃ!」
舌打ちするローベルト。
「……見捨てられたな。まあ自業自得だが」
俺もリング外へ出る。
……トドメをさすために。
「まだだよ。まだ終わらんわ!!」
魔獣ヴァホメットを顕現。
全魔力を左腕一本に集中。
そして金属性魔力により手甲を精製。
「吾輩の秘技グラウンド・クラッシュ。手に入れた異能の力も、何もかも込めた最高の一撃だよ。その余裕ヅラした顔ごと粉砕してくれる」
……確かに凄まじい魔力を感じる。
部屋全体が揺れ動く。
だが今の俺なら体調不良だろうが関係ない。
「……なら俺も必殺技で相手しよう」
……周囲の大気が渦を巻き、剣に集中する。
俺を中心とした、とてつもない風圧のトルネードが発生する。
辺りのものは吸い寄せられると風に切り刻まれチリと化す。
対象の相手となるローベルトには風圧で身動きを封じ、逃さない。
……これは朱雀の力を取り戻した時と前回のローベルト戦で奴の右腕を消滅させた技……
奥義
※1話と13話参照。
……ローベルトの表情には笑みが見えた。
♢
――ローベルトside。
ローベルトは思う。
(かかったな……その技は対策済みよ!)
絶華を封じる手立てがあるようだ。
(その技、撃つのに時間がかかるリスクがあるが、それをカバーするために風圧で相手を身動き不能にして放つ。もし仮に動けたとしても、奴を覆う竜巻が壁となり、対象を切り刻むだろうからどうあがいてもそのスキをつけない。そう思われガチだが……)
ローベルトは地面に目をやる。
(奴の立つ僅かなスペースは竜巻の目、つまり無風だ。そこに入り込めれば完全無防備な奴に攻撃が可能!)
そうは言っても先程近寄れないと言っていた……
(地中、そこは完全無風だ。地中を潜り、奴の立ち位置に侵入してグラウンド・クラッシュをぶち込む。それで全て終わるのだ)
勝利を確信するローベルト。
よほど自信があるようだ。
……だかローベルトの言ったことは間違ってはいない。
絶華の唯一タメ時間のスキ……そこをつかれるのなら……
地中には爆手で発動する地雷がセットされている。
起爆すれば地中に穴があく。
それも連鎖的に設置済みなため一気に神邏の立ち位置までのルートができる。
動きが封じられても爆発で地に急速落下すれば風のロックから逃れられる。
後は道を辿って……
「終わりだ!!」
起爆!!
地面に大穴が空き落下!
ローベルトは勢いのまま全力で突き進む!
そして……
神邏の立ち位置、無風の場所へと侵入成功!
左腕を伸ばし渾身の一撃を神邏へ向ける!
「取った!!美波神邏破れたり!!」
神邏は表情をまるで変えていなかった……
――つづく。
「対策ですか。まあ再戦だったわけですしその可能性はありましたね。というか私の出番どこですか……」
「次回 決着 ついにその時が来ましたね~」
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