第37話  別れ道

アジトに乗り込むメンバーは俺、ルミア、九竜、南城、アゼル、北山…そして東となる。


一応サポート要員の兵も連れて行くが僅かだけだ。


「最初に言っとくけど、僕は君たちと協力する気なんてさらさらないからね。僕はただ、なめたまねしたバンダナ野郎を始末したいだけだから」


…ツンデレキャラみたいな事言うなよな…

まあこいつの場合は照れ隠しとかではなく、本心で協力する気ないのだろうがな。


「…ああ構わない。敵の幹部がそれで減るならこちらとしても助かるしな…」


淡々と俺は返した。

それはそれで気に入らなそうな顔をされた。


「なんというか…君の助けになるならなんかやる気なくなるね。でもこっちとしても、やられたものはやり返さなきゃ気分悪いし。仕方ないか」


…いろいろ不服そうだが、構ってる暇はこちらにはない。


正さんが前にでてきて、


「理由はどうあれ、みんなが団結しないと勝てないかもしれん。だからチームワークを大切にするんじゃぞ」


良い事言うな…

確かに先程のオンガーツといい前以上に強くなった連中ばかりだろう。そんな時こそチームワークが大事になるはず。


「…肝に銘じます」

「うむ。朱雀よ、上司のワシがこのザマで悪いのう。隊長失格だ」

「いえそんな…」


確かにオンガーツには勝てなかった。だがだからといって情けないなんて思わない。

想定外の事も多かったわけだし。


「この中ではお前が一番上のランカーになる、皆を導いてやってくれ。そして無事に勝利することを願っておるぞ」

「はい…やれるだけやってみます」


俺達は戦地に…ローベルトのアジトに乗り込んだ。


アジトといっても大きな洞窟というか洞穴なのだが。

どれだけ長いのかはわからない。

人質はどこに?ローベルトはどこに?まずはそこからだろう…


辺りは暗い…奇襲の可能性も考えなくてはならない。

となると明かりがほしい…そう思い俺が動く…前に、南城が指先から火を灯し、明かりを作る。


「こういう所じゃまず明かりをつけるのが定石だぞ」

「…さすがだな。助かる」

「つっても何かしようとしたろ」

「ああ。さっきライト借りてな。だがそっちのが明るくていい」


俺は朱雀聖剣サウスブレイドを出す。


「薄暗いと…」


俺は振り向いて何かを切り捨てる。ザン!


「…こういう不意打ち受けやすいからな」


南城はすぐさま明かりを俺の周辺に照らす。

そこには今の一撃で両断された妖魔の姿。


「…お前、よく気づいたな」

「ああ…空気の流れでな」


この妖魔が動く事で、空気が乱れる。その差異で敵を察知した。


「…昔お前がそんな芸当してたと思い出したぜ。少しずつ昔を思い出してるのかもな」

「…そういえば違和感なく、わかったな。今の今までこんな事したことなかったんだが…」


木属性特有…というわけでもなさそうだが…風になれているというかなんというか…よくわからない。


…木…

ふと、思いつく。


魔力で小さな植物の種を精製し、辺りに投げ植え付ける。

…そうすると小さい樹木が生える


「南城、ここに火を灯してくれ」

「あん?」


言われた通りにすると火が灯り明かりのようになる。

木も木で燃え尽きたりしないのでこれで電灯代わりになりそうだ。


「…辺りに樹木を少しずつ生やしていくからこの要領で灯してくれ」

「なるほどね…これなら明かりだけでなく帰りの目印にもなるな」


これで暗さも、どんだけ入り組んでも、帰り道に迷う事はない。


それにルミアが感心する。


「完璧ですね。ただ神邏くんがこうも有能な事をすると、それはそれで寂しいですね。ちょっとぬけてるとこが魅力的できたし。あ、でも嫌ではないですけどね」

「…そうか。嫌じゃないならよかった」


ルミアの感想に素直に返した。

まあどう反応すればいいかわからなかったし。


…ただこれには欠点がある。

それは皆が離れ離れになるようなことでもあれば、目印を一部しかつけていけないからだ。


なぜならこの目印は俺と南城にしかできないわけだから…


そして離れ離れになる状況が…きてしまう。


ある地点にくると別れ道が複数。


「…どこに誰がいるかはわからないが、わざわざ別れる必要はない。虱潰しで…」

「「そうは問屋がおろさないよ朱雀!」」


洞窟内に響き渡るローベルトの声。どこからか放送してるのかと言いたいくらい響く。


「「君達はここで道を違えてもらう」」

「…なんだと」

「「拒否は許さないよ。こちらには人質がいることを忘れないように」」


…唇を噛みしめる。

腹が立つが人質の命が優先だ…ここは言う事を聞くしかない。


「ビビりやがって。デカい口叩こうが所詮俺様達全員を相手どる自信がねえだけじゃねえか」


鼻で笑う南城。


「…ま、僕としてはそれがいいけどね。団体行動あんま好きじゃないし」


そう言うと東は一人、勝手に適当な別れ道を選ぶ。


「僕はここ通るよ。あ、一人でいいからね、誰も来なくていいよ。バンダナと会えればいいけど…」

「おい待て東…」


俺の静止を無視し、勝手に一つの道を走って行った。


「…まあいいか。あいつの実力は折り紙つきだしな」


別れ道自体は4つ。

一つは東だからあと3つ。


…3チームに別れる必要がある。


ーールミアが近くによってくる。


「私、神邏くんと同じルートでいいですよね?」

「ああもちろん」


俺自身もルミアと同じ班にしようとしていたし当然OK。


「俺様は美波とは別ルート行く、で北山お前も来い」


南城は北山の袖引っ張る。


「え?いいけどなんで?」


南城は耳元でなにか言う。


「仇と会った時、美波だと戦わせてはくれるかもしれねえが、少しでも危なくなったら手だししてくる可能性ある。どうしても一対一さしでけりつけたいなら別れたほうがいい」

「…なるほどね。わかったお前のチームで行くぜ」


南城と北山は同じチームに決定。

構わないが何故だろうな…小声で何か話してたが。


「小生はまだ信用されてねえだろうし一人でいいぜ」


とダスト。

まあ元ローベルトの配下だし他のみんなは嫌がるかもな。

裏切る可能性を感じる者も多いだろうし、悪いが仕方ない。


後はアゼルと九竜。

俺の班か南城班…はたまたダスト班か…


「朱雀は切札やろ?なら戦闘はローベルトまで避けなあかん。となると他に戦う戦力が必要やろし、ワイが一緒に行こう。二人きりのお邪魔虫かもしれんがな」


ケラケラ笑うアゼル。


「…まあお邪魔虫ではありますね」


小声でルミアは言った。

まあ俺の所にきてくれるなら戦力的にはたすかる。


「じゃ、じゃああたし…は」

「九竜はそこのハゲと行けや」

「え!?」


驚愕する九竜。

まだ信用できるかもわからない奴と!?…と、いいたげな表情。


「なんや身の危険でも感じてるのか?まあ信用できんのもわかるが、あんさんの力なら抵抗できるやろ」

「そういう問題じゃ…そもそも一人で言いと言ってるし」

「アホ、こいつは人質知らんのやぞ。それに人質の方もこいつが「助けにきたぞ!」…なんて言っても素直についてかんやろ」


…確かにそうだな。

九竜の事は学園の人ならわかるし信用するだろう。

そして天界の人質は天界の者なら彼女を知ってるし信用するはず。


九竜はどちらも満たすからダストと行けば確かに都合がいい。


「状況が状況やしゃーないやろ」

「…わかり、ましたよ」


しぶしぶ承諾した。


仲間に引き入れたのは俺だ。

…少し責任を感じる。


「なんか…悪いな九竜。嫌ならいいんだぞ」

「いいよ。乗りかかった船というか戦力は必要だったのだろうし。それにあたし、今のところずっと役にたってないし」


班分けが決まった。

俺、ルミア、アゼルの班。

北山、南城の班。

ダスト、九竜の班だ。


「…皆の無事を祈る。後で全員で合流しよう…約束だ」

「へ、当然よ」

「俺様を舐めるなよ」

「小生もやれるだけやるさ」

「やってみるわ…」


南城班と九竜班と無事を約束。

そして2つの班はそれぞれの道へ走って行った。


「わいらも行くか」

「…そうだな」


…誰一人かけることなくこの戦いが終わることを切に願う。



つづく。


「当然の事ですが私は神邏くんと同じ班でしたね~まあメインヒロインですから常に隣はキープしませんとね!」


「次回 七人衆対七人衆 あ、これはつまり…」








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